運命に抗え【第二部完結】

関鷹親

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第二部-失意の先の楽園

74. 求める者は2★

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*背後注意です






 早急に脱がされた千尋の衣服は、ベッドの下へばさりと乱雑に床に落とされた。
 常であればこんな場所で体を繋げたりはしない。
 しかし今は早急に欲を解放して、レオを求めてしまいたかった。

「んっ、はぁ……れおっ、んんっ」

 口内をレオの分厚い舌で隅々まで暴かれながら、レオの手はゆっくりと千尋の体を撫でまわしていく。
 薬で燻る熱とは違う熱が体を滑るレオの手によって広ろげられ、くすぐったさとじれったさが綯交ぜになり、直接的な快楽を求めようと体が勝手に動いてしまう。

 自分の意志ではないその反応に、心が拒否して千尋は嫌悪で体を震わせる。
 だがそんな千尋をレオは殊更優しく唇を啄みながら、あやすように千尋の頭を何度も撫でてくれた。
 その手からじんわりと温かさが伝わる。
 今求めているのは自身の理性からだ。けして薬の影響ではないのだと自身に言い聞かせた。
 不安になっても嫌悪感を抱いても、レオが必ず引き戻してくれるのを千尋は知っている。
 だから安心して、レオにだけはこの身を預けられるのだ。

 ゆっくりと体の強張りが解かれたのが分かったのか、レオのもう片方の手はするすると胸元から下へ降りていく。
 薬を飲まされてから強制的に勃ち上がり続けていた高ぶりにレオの手が行き着けば、そのまま柔らかく撫でられ扱かれる。
 ゆるゆるとした刺激がもどかしく感じていれば、胸の飾りへ近づけられたレオの口がそれを含ませ、べろりと舐めたあとに痛くない程度の力で噛まれた。
 その両方の刺激で千尋はあっけなく吐精してしまう。

「はっ、あぁっ!」

 ずっと解放されなかった欲を吐き出せたことで、吐き出す感覚すら快感となって体に襲い掛かる。
 ぶるぶると余韻で震える体に、レオが満足そうに口端を上げた。

「まだ足りないだろう?」

 レオの言葉に、千尋は僅かに息を荒げながら小さく頷く。
 ずっとくすぶり続けたせいで一度達したぐらいで欲は収まりそうにない。
 まるでヒートの時のようだが、アレとは似て非なる感覚だ。

 レオは取り出したローションを指に纏わせ千尋の後孔に塗り込めると、丁寧に中を解し始めた。
 優しく内部を撫でるような動きは指が増えるごとに激しくなっていき、それだけでも千尋はいとも簡単に達してしまう。
 それでも足りず縋るようにレオを見れば、レオが乱雑に自身の服を全て脱いだ。
 現れた逞しい肉体と、既に勃ち上がっているものに目がいけば、気が付けば千尋はごくりと喉を鳴らしていた。

「れお……れおっ」

 質量があるレオのものがあてがわれれば、それに呼応するかのように体が歓喜に震えていた。
 求めるように両手を伸ばし、レオを引き寄せ顔を頭に擦り付ける。
 今千尋は本能でもなく、薬の影響でもなく、確実に理性でレオを求めていると確信を持っていた。
 どれにも呑まれることはなく、自らの意思で。
 それが嬉しくて堪らないと、目から涙が溢れてきた。

 その間もレオは千尋の中へ進んでいき、そのすべてを体内に収めゆっくりと動き始めた。
 静かな室内にベッドが軋む音と、段々と激しくなっていく肌同士がぶつかる音が響く。
 始めは千尋を労う様子を見せていたレオだったが、何度か千尋が吐精し本能や薬に飲まれていないことが分かると、注挿が激しくなっていった。

「あっ、んんっ、はげし……ぃっ」

 何度も抉るように中を突かれて、千尋は嬌声を上げる。
 甘ったるい自身の声が耳につくが、それと同時に聞こえてくるレオの荒い息遣いが気分を高揚させた。

「一回抜くぞ千尋」
「やだ、抜かないでくださいっ」

 だが千尋の願いも虚しく、レオのものは引き抜かれてしまった。
 何故だと問う前にぐるりと体は反転させられ、うつ伏せの体勢を取らせられれば覆いかぶさるようにして再びレオのものが侵入してくる。

 角度が変わりびりびりするような快楽が襲いくれば、レオが千尋の項に唇を落としまるで消毒でもするかのように丹念に舐め始めたのだ。

「アイツに舐められたんだったか? 噛まれそうな千尋を見た時は怒りでどうにかなりそうだった」

 ゆっくりと腰を動かされながらも執拗に項に舌を這わせ唇で吸われれば、レオが今どういう状況下分かってしまう。

「あのマークスもだ。まさか千尋の運命の番があんな場所にいるとは思わなかった」

 低くなったレオの声音に、嫉妬しているのがよくわかる。それと同時にあの状況での恐ろしさも思い出しているのだろう。
 ちらちらと時折項に当たるレオの歯が、今この場で千尋を番にして安全に囲ってしまいたい衝動と戦っていることを示していた。
 だが項を噛む、噛まれると言う選択肢は、千尋の中にもレオの中にも存在しない。
 その代わりにと別の場所に痕を残そうと、肩に歯を立てようとしたレオを千尋が止めた。

「今はダメですよレオ……暫くは検査がある、そうでしょう?」

 後ろを振り向きそう問えば、そのことを思い出したのかレオが盛大に舌打ちをする。
 普段であれば、服で隠れる場所に痕を残してもらうのだが、新たな薬物を飲まされ入院している今、どんな検査をされるか分からない。
 その時に痕を見られでもしたらどうなることか。

 冷静にそのことを考えるが、がっかりしているレオと同じように、千尋とて痕を残せないことにがっかりしているのだ。
 どこかいい場所はないものかと思案した千尋は自らレオとの繋がりを絶つと、仰向けになってゆっくりと足を開く。

「レオ、ここなら……下着をはいてるから見えないと思うんですけど」

 羞恥に顔を熱くさせながら、千尋は自身の足の付け根と性器の間を指さした。
 驚くように目を見開いたレオだったが、それも一瞬のことで、次の瞬間には嬉しそうにギラつく目を千尋に向ける。

「痛くしないようにしよう」

 千尋の下半身に顔を埋めたレオが、何の躊躇いもなくカプリとその場所に歯を立てる。
 何度か甘噛みしては舐め、最終的に歯をある程度深く立てた。
 レオの歯が肌を貫くその時痛みが襲ってきたが、レオが千尋の昂りの先端を刺激したことで飛んで行ってしまう。
 二つの衝撃で白濁が溢れればレオが満足そうに顔を上げ、ぺろりと自分の唇を舐めた。

 それから二人はお互いが満足するまで、それこそ貪るように求め合うのだった。
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