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第二部-失意の先の楽園
46. 慌ただしい出発
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これから向かうパーティーは、数カ月前にあったデビュタントの時に千尋に話しかけてきたΩの娘を持つアロン・マローニが創設した慈善団体のものだった。
薄いグレーに模様が淡く浮き出ているジャケットを身につけた千尋に、レオは千尋の首に手慣れたようにネックガードを付ける。
細い首を彩るように飾るそのネットガードは、一見すればただの首飾りにしか見えないものだった。
付け終われば千尋が全身を鏡で確認する。しかし僅かに首元を悩むように傾げた千尋が、別のケースを手渡してきた。
「これだと華美すぎる気がするのでこっちに変えてもらってもいいですか?」
手渡された箱に入っていたのは至ってシンプルなネットガード。
だが千尋に見合うように細やかで美しい彫刻がなされているもので、確かに最初に付けたものよりも今の装いに合っている気がした。
「確かにこちらの方がいいな、それにしても千尋、体調は悪くないか?」
「えぇ、少し寝れたのでだいぶ違いますよ」
「もしパーティーの途中で具合が悪くなったらすぐに教えてくれ。薬の予備も持っているか?」
「ふふ、そんなに心配しなくても本当に大丈夫ですよレオ」
「しかし昨日の影響がどう響くか分からないだろう」
「心配症ですね」
レオは真剣に心配していると言うのに、千尋はそれを軽く受け流す。
仕事をするために既に切り替えているのだろうが、それすらもレオにとっては不安材料でしかない。
「無理だけはしないでくれ」
そっと抱きしめれば、千尋もレオの背に手を回し了解の意味を込めて軽く叩かれる。その時ーー
「お時間過ぎてますが大丈夫ですか? 何かトラブルでも?」
扉が叩かれ、声をかけてきたのは外を警備していた護衛だった。
怪訝な表情で自身のスマホを取り出した千尋に、レオも画面を覗き込む。
表示されている時間は、明らかに出発予定時刻を過ぎていた。
慌てて今まで確認に使っていた壁掛けの時計を見れば、どうやら電池切れを起こしているようで針はレオが見てから進んでいなかった。
「ギリギリですね、急ぎましょう」
手にしていたままの外したネックガードをポケットにしまいながら、千尋がレオを促した。
すぐに出れる状態であったことを感謝しつつ、レオは千尋と共にパーティー会場へ大急ぎで向かうのだった。
会場であるホールには既に人々が集まり、そこかしこで会話に花を咲かせている。
途中、渋滞に遭いながらも何とか辿り着けば、既に開催時間から一時間ほどが経過していた。
だが誰も千尋を咎めることはできはしない。
「やぁやぁ、渋滞に会うとは運が悪かったね千尋君」
人混みを掻き分け一目散にやってきたアロンは、出っ張った腹を揺らしながら千尋を労っていた。
アロンと言う存在をレオはよく思ってはいない。そもそもレオが真に認める存在は千尋を除けば成瀬くらいのもの。
あとは千尋に深く感謝を感じ、女神と崇拝する者達だけだ。
しかしその存在は決して多いとは言えない。
主催のアロンと共に他のα達に挨拶して回る千尋の背を見ながら、レオは周りに鋭い目を向け続けるのだった。
薄いグレーに模様が淡く浮き出ているジャケットを身につけた千尋に、レオは千尋の首に手慣れたようにネックガードを付ける。
細い首を彩るように飾るそのネットガードは、一見すればただの首飾りにしか見えないものだった。
付け終われば千尋が全身を鏡で確認する。しかし僅かに首元を悩むように傾げた千尋が、別のケースを手渡してきた。
「これだと華美すぎる気がするのでこっちに変えてもらってもいいですか?」
手渡された箱に入っていたのは至ってシンプルなネットガード。
だが千尋に見合うように細やかで美しい彫刻がなされているもので、確かに最初に付けたものよりも今の装いに合っている気がした。
「確かにこちらの方がいいな、それにしても千尋、体調は悪くないか?」
「えぇ、少し寝れたのでだいぶ違いますよ」
「もしパーティーの途中で具合が悪くなったらすぐに教えてくれ。薬の予備も持っているか?」
「ふふ、そんなに心配しなくても本当に大丈夫ですよレオ」
「しかし昨日の影響がどう響くか分からないだろう」
「心配症ですね」
レオは真剣に心配していると言うのに、千尋はそれを軽く受け流す。
仕事をするために既に切り替えているのだろうが、それすらもレオにとっては不安材料でしかない。
「無理だけはしないでくれ」
そっと抱きしめれば、千尋もレオの背に手を回し了解の意味を込めて軽く叩かれる。その時ーー
「お時間過ぎてますが大丈夫ですか? 何かトラブルでも?」
扉が叩かれ、声をかけてきたのは外を警備していた護衛だった。
怪訝な表情で自身のスマホを取り出した千尋に、レオも画面を覗き込む。
表示されている時間は、明らかに出発予定時刻を過ぎていた。
慌てて今まで確認に使っていた壁掛けの時計を見れば、どうやら電池切れを起こしているようで針はレオが見てから進んでいなかった。
「ギリギリですね、急ぎましょう」
手にしていたままの外したネックガードをポケットにしまいながら、千尋がレオを促した。
すぐに出れる状態であったことを感謝しつつ、レオは千尋と共にパーティー会場へ大急ぎで向かうのだった。
会場であるホールには既に人々が集まり、そこかしこで会話に花を咲かせている。
途中、渋滞に遭いながらも何とか辿り着けば、既に開催時間から一時間ほどが経過していた。
だが誰も千尋を咎めることはできはしない。
「やぁやぁ、渋滞に会うとは運が悪かったね千尋君」
人混みを掻き分け一目散にやってきたアロンは、出っ張った腹を揺らしながら千尋を労っていた。
アロンと言う存在をレオはよく思ってはいない。そもそもレオが真に認める存在は千尋を除けば成瀬くらいのもの。
あとは千尋に深く感謝を感じ、女神と崇拝する者達だけだ。
しかしその存在は決して多いとは言えない。
主催のアロンと共に他のα達に挨拶して回る千尋の背を見ながら、レオは周りに鋭い目を向け続けるのだった。
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