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第二部-失意の先の楽園
39 追悼式典3
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「ブライアンっ!」
ファビアンが視線を向けた先では、ブライアンとその護衛達が緊急抑制剤を自身に打ち込む様子が映し出されていた。
運命の番同士だとしても、やはりあれ程までのフェロモンを嗅げばどうなるか分からない。
最悪の事態を免れることができて、ファビアンから安堵の息が漏れ聞こえた。
大統領や、その傍に侍る者達が携帯している緊急用の抑制剤は、一般には流通しない強い物なのだとレオから聞いている。
どれぐらいで通常通りの動きができるかは分からないが、これでブライアンは大丈夫だ。
そう誰もが思っていた瞬間、テレビからは劈くような男の叫び声が聞こえてきた。
『俺の運命!! 俺のッ、俺の番だ!!』
アップで写された男の目は血走っていて、とても正気とは思えなかった。
その様子を見て千尋の脳裏に浮かんだのは、レオが生まれた街で見た麻薬中毒者の姿だ。
周りが唖然とする中、口の端から泡を飛ばしながら男は周りなどお構いなしにブライアンめがけて突進していく。
「ブライアンを助けに行かないと!!」
慌ててドアノブに手をかけ必死に外へ出ようとするファビアンだが、しっかりと施錠されているので外に出ることはできない。
「ファビアン、落ち着いてください!!」
「でもっ、でも、ブライアンが!! あの男に取られてしまうかもしれないじゃないかっ!」
「しっかりしてください! 貴方とブライアンは正真正銘の運命の番でしょう!?」
取り乱すファビアンを叱咤しキツく抱きしめた千尋は、彼が落ち着くように抱きしめ背を撫でながら、早くこの事態が収まるように祈ることしかできなかった。
そんな中でも外では血を吐くような叫び声を上げながら、ブライアンに向かっていこうとする男をカメラがしっかりと捉え中継する。
ブライアンのことを運命の番と言う男は勿論Ωであるのだろうが、そのバース性に似合わない力を見せていた。
止めに入る人々を力で振り切り、押さえつけようとした人々を次々と殴り倒していく。
どれほど強い力で抵抗しているのか、カメラに映る男の拳には血が付いていた。
そんな男から距離を取ろうとするブライアンは未だ薬が回りきらないのか、ゆっくりとしか動きを進められていない。
ブライアンを心配するリポーターの悲痛な声と、狂ったように愛を叫ぶ男の声が車内に響いて頭の痛さが増していく。
『あ、あれは誰でしょうか!? 大統領の元へ走っていく男性が見えます!!』
緊迫する空気の中、画面に現れたのはレオだった。暴れる男の元へ走りこんでいくと、瞬く間に鳩尾に拳を叩き込み男が崩れ落ちた瞬間に取り押さえた。
呆気にとられ動けない周りに素早く支持を出し、男を拘束させる。
拘束されてもなお暴れる男に鎮静剤が打ち込まれ、暫くすれば男は糸が切れた人形のように動きが止まる。
『どうやら男を制圧したようです!!』
脅威が去ったのが分かったのか、カメラの前のリポーターからも、遠巻きに事件を眺めていた人々から歓声が沸き上がる。
その声は大きく、中継以外からも車内に居る千尋達の元へも届いた。
未だ中継は続いていて、拘束された男が頑丈な警察車両に押し込まれるのを見届けたレオが、ブライアンの元へ駆け寄る様子が映し出されていた。
ブライアンはレオと抱擁を交わしたあと、労うように背を叩いている。
その様子を見ていたファビアンが、もう外に出てもいいだろうかと同乗している護衛に聞けば、すぐにブライアン付きの護衛に無線で連絡を取り安全を確かめていた。
「大丈夫なようです、行きましょう」
厳重に周りを固めらながら車から降りれば、辺りには濃いフェロモンの匂いが消えずに漂っていた。
再び頭を激しく揺すられるような感覚に包まれながらも、千尋は今にも走ってブライアンの元へ行こうとするファビアンを窘めながら、ゆっくりと彼らの元へ向かう。
「ブライアンっ!!」
近くまで行けば堪え切れなかったファビアンが、千尋を振り切り走り出す。
そんな彼をブライアンは嬉しそうな笑顔で抱き留めていた。
感動の場面だとばかりに、彼らの周りにはカメラが集まりフラッシュが眩しいぐらいに焚かれる。
「レオ、大丈夫ですか」
少し離れた場所で未だに警戒を解いていないレオに近づき、話しかける。
服装の乱れは多少なりともあるが、怪我などはしていないようで千尋はほっとしてきつく閉じていた拳を開く。
「大統領の元へ急ごう。早くこの場を離れた方が良い」
レオに促されブライアンの元へ戻れば、すぐに話は付けられ、千尋は再び大統領専用車に乗り込むのだった。
ファビアンが視線を向けた先では、ブライアンとその護衛達が緊急抑制剤を自身に打ち込む様子が映し出されていた。
運命の番同士だとしても、やはりあれ程までのフェロモンを嗅げばどうなるか分からない。
最悪の事態を免れることができて、ファビアンから安堵の息が漏れ聞こえた。
大統領や、その傍に侍る者達が携帯している緊急用の抑制剤は、一般には流通しない強い物なのだとレオから聞いている。
どれぐらいで通常通りの動きができるかは分からないが、これでブライアンは大丈夫だ。
そう誰もが思っていた瞬間、テレビからは劈くような男の叫び声が聞こえてきた。
『俺の運命!! 俺のッ、俺の番だ!!』
アップで写された男の目は血走っていて、とても正気とは思えなかった。
その様子を見て千尋の脳裏に浮かんだのは、レオが生まれた街で見た麻薬中毒者の姿だ。
周りが唖然とする中、口の端から泡を飛ばしながら男は周りなどお構いなしにブライアンめがけて突進していく。
「ブライアンを助けに行かないと!!」
慌ててドアノブに手をかけ必死に外へ出ようとするファビアンだが、しっかりと施錠されているので外に出ることはできない。
「ファビアン、落ち着いてください!!」
「でもっ、でも、ブライアンが!! あの男に取られてしまうかもしれないじゃないかっ!」
「しっかりしてください! 貴方とブライアンは正真正銘の運命の番でしょう!?」
取り乱すファビアンを叱咤しキツく抱きしめた千尋は、彼が落ち着くように抱きしめ背を撫でながら、早くこの事態が収まるように祈ることしかできなかった。
そんな中でも外では血を吐くような叫び声を上げながら、ブライアンに向かっていこうとする男をカメラがしっかりと捉え中継する。
ブライアンのことを運命の番と言う男は勿論Ωであるのだろうが、そのバース性に似合わない力を見せていた。
止めに入る人々を力で振り切り、押さえつけようとした人々を次々と殴り倒していく。
どれほど強い力で抵抗しているのか、カメラに映る男の拳には血が付いていた。
そんな男から距離を取ろうとするブライアンは未だ薬が回りきらないのか、ゆっくりとしか動きを進められていない。
ブライアンを心配するリポーターの悲痛な声と、狂ったように愛を叫ぶ男の声が車内に響いて頭の痛さが増していく。
『あ、あれは誰でしょうか!? 大統領の元へ走っていく男性が見えます!!』
緊迫する空気の中、画面に現れたのはレオだった。暴れる男の元へ走りこんでいくと、瞬く間に鳩尾に拳を叩き込み男が崩れ落ちた瞬間に取り押さえた。
呆気にとられ動けない周りに素早く支持を出し、男を拘束させる。
拘束されてもなお暴れる男に鎮静剤が打ち込まれ、暫くすれば男は糸が切れた人形のように動きが止まる。
『どうやら男を制圧したようです!!』
脅威が去ったのが分かったのか、カメラの前のリポーターからも、遠巻きに事件を眺めていた人々から歓声が沸き上がる。
その声は大きく、中継以外からも車内に居る千尋達の元へも届いた。
未だ中継は続いていて、拘束された男が頑丈な警察車両に押し込まれるのを見届けたレオが、ブライアンの元へ駆け寄る様子が映し出されていた。
ブライアンはレオと抱擁を交わしたあと、労うように背を叩いている。
その様子を見ていたファビアンが、もう外に出てもいいだろうかと同乗している護衛に聞けば、すぐにブライアン付きの護衛に無線で連絡を取り安全を確かめていた。
「大丈夫なようです、行きましょう」
厳重に周りを固めらながら車から降りれば、辺りには濃いフェロモンの匂いが消えずに漂っていた。
再び頭を激しく揺すられるような感覚に包まれながらも、千尋は今にも走ってブライアンの元へ行こうとするファビアンを窘めながら、ゆっくりと彼らの元へ向かう。
「ブライアンっ!!」
近くまで行けば堪え切れなかったファビアンが、千尋を振り切り走り出す。
そんな彼をブライアンは嬉しそうな笑顔で抱き留めていた。
感動の場面だとばかりに、彼らの周りにはカメラが集まりフラッシュが眩しいぐらいに焚かれる。
「レオ、大丈夫ですか」
少し離れた場所で未だに警戒を解いていないレオに近づき、話しかける。
服装の乱れは多少なりともあるが、怪我などはしていないようで千尋はほっとしてきつく閉じていた拳を開く。
「大統領の元へ急ごう。早くこの場を離れた方が良い」
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