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第二部-失意の先の楽園
23 侵入者
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一階にある部屋を一通り見て回った二人は、レオの先導で二階へと足を向けた。一階も酷い有様であったが、二階もその様子は変わらない。
廊下に落ちる酒瓶はなくならないし、壁にはスプレーで書かれた文字。呆れかえるほどの光景を目にしながら、千尋はレオと共に二階の部屋を一つずつ確認する。
その間も千尋の胸騒ぎは止まることはなかった。
そんな中で千尋とレオが踏み入れた一番奥の部屋は寝室で、中は言わずもがなと言った光景だった。使用済みのゴムやオイル、ローションと言ったボトルが転がり、ベッドにもカーペットにも染みができている。
鼻につく臭いを我慢しながらレオのあとについていけば、彼はベッドの横にあるサイドチェストの引き出しを開けた。
今までになかったレオの行動に、何かあるのかと千尋は好奇心をくすぐられる。しかし引き出しを開ければ中身は既に出され空になっていた。
首を傾げた千尋だったが、その様子を見ていたレオが目を細めてニヤリと笑みを作る。
レオに手を取をひかれ、引き出し中に入れられれば、そのまま奥にある小さなボタンを千尋の指が捉えた。
「これは……」
「それを押してみてくれ」
千尋がそのボタンをカチリと押せば、ロックが解除されたことを確認したレオが引き出しの底板を外す。
中から出てきたのは護身用に置いてあったらしいハンドガンだった。
「これを隠してあったことを忘れていた」
「ふふ、すごくワクワクしました」
「それならなによりだ。子供達に見つからなくてよかったよ」
ハンドガンを腰の辺りに隠すようにしまったレオの様子を眺めていれば、ガタンっと何かが倒れるような大きな音が天井から聞こえてきた。
レオが素早く銃を天井へ向け警戒態勢を取る。言葉を発しないように指示を出された千尋は、レオの背に庇われながら緊張感を高まらせた。
そのまま警戒を怠らずにいれば、くぐもった音が聞こえだす。何かを思い出したようなそぶりを見せたレオは、ゆっくりとした足取りで廊下へ進んでいった。
廊下の天井へと手を伸ばしたレオが小さな取っ手に指をひっかけ、屋根裏に続く梯子を下ろすと、千尋の方を振り返り耳元で囁く。
「千尋、様子を見てくるからここで待っていてくれ。何かあればこれを」
渡されたのはハンドガンだった。その重さに千尋はごくりと息を呑み頷く。
ぎしぎしと小さく音を立てながら梯子を登るレオの姿を見送った千尋は、レオに手渡されたハンドガンをいつでも撃てるように両手で持つ。
できれば使いたくない代物だが、何があるか分からない。それに胸騒ぎの正体はきっとレオが向かう先に居る人物だ。
射撃の訓練はまだ一度しか受けていないし、それだって命中させるのにレオの補助が必要だった。
ズシリと重たい塊と、緊張感に鼓動が早くなる。できれば人を撃つことなど無い方が良いに決まっているのだ。
レオを待っている時間はとても長く感じた。緊張からか、次第に銃を持つ手は汗をかき湿っていく。
滑って落としそうになりそうで銃を握る手に更に力を込めていれば、頭上からレオの声が降ってくる。
「千尋、悪いが使えそうなタオルを持ってきてくれ」
「どうしたんですか」
ハッとしながら降りてきたレオの元へと駆けよれば、レオの腕には青年が抱きかかえられていた。
その表情は苦悶にゆがみ、呼吸も荒い。顔色も悪くガタガタと震えていて、腹部の辺りは血が滲んでいる。
どう見ても尋常ではない様子に、千尋はすぐに使えそうなタオルを探しに走った。
バスルームに向かったはいいが、そこも荒らされていて使えそうなものはない。千尋はすぐに別の部屋へ行き、ウォークインクローゼットの中から使えそうなものを探した。
幸い奥まった場所にあった大きなタオルケットを見つけ千尋がレオの元に戻れば、どうやらレオはどこかに電話を掛けていたようだ。
「外の連中と救急に連絡した。もう暫くすれば来ると思うが」
寒いのか、ガタガタと震える青年の体をタオルケットで包もうとすれば、がしりとその手を掴まれた。
「助けて……僕は死にたくない……」
千尋が驚愕に目を見開いていれば、青年はボロボロと涙を流し始める。どう見てもこのままでいいはずがない。
「大丈夫、大丈夫ですよ。もうすぐ救急車が来ますから」
聞こえているかわからないが、千尋はそう青年の頭を撫でながら声を掛ける。
その間、千尋の頭は混乱を極め手先が冷えていくのを感じていた。
暫くすれば遠くからサイレンの音が聞こえてくる。
「千尋、誘導してくるから見ていてくれ」
レオに頷き返しながら青年の方を見れば、痛みに気を失ったらしかった。
握られた手はしかし外れることはない。徐々に体温が低くなる青年の手に、何もできない千尋は焦燥感に駆られるしかなかった。
廊下に落ちる酒瓶はなくならないし、壁にはスプレーで書かれた文字。呆れかえるほどの光景を目にしながら、千尋はレオと共に二階の部屋を一つずつ確認する。
その間も千尋の胸騒ぎは止まることはなかった。
そんな中で千尋とレオが踏み入れた一番奥の部屋は寝室で、中は言わずもがなと言った光景だった。使用済みのゴムやオイル、ローションと言ったボトルが転がり、ベッドにもカーペットにも染みができている。
鼻につく臭いを我慢しながらレオのあとについていけば、彼はベッドの横にあるサイドチェストの引き出しを開けた。
今までになかったレオの行動に、何かあるのかと千尋は好奇心をくすぐられる。しかし引き出しを開ければ中身は既に出され空になっていた。
首を傾げた千尋だったが、その様子を見ていたレオが目を細めてニヤリと笑みを作る。
レオに手を取をひかれ、引き出し中に入れられれば、そのまま奥にある小さなボタンを千尋の指が捉えた。
「これは……」
「それを押してみてくれ」
千尋がそのボタンをカチリと押せば、ロックが解除されたことを確認したレオが引き出しの底板を外す。
中から出てきたのは護身用に置いてあったらしいハンドガンだった。
「これを隠してあったことを忘れていた」
「ふふ、すごくワクワクしました」
「それならなによりだ。子供達に見つからなくてよかったよ」
ハンドガンを腰の辺りに隠すようにしまったレオの様子を眺めていれば、ガタンっと何かが倒れるような大きな音が天井から聞こえてきた。
レオが素早く銃を天井へ向け警戒態勢を取る。言葉を発しないように指示を出された千尋は、レオの背に庇われながら緊張感を高まらせた。
そのまま警戒を怠らずにいれば、くぐもった音が聞こえだす。何かを思い出したようなそぶりを見せたレオは、ゆっくりとした足取りで廊下へ進んでいった。
廊下の天井へと手を伸ばしたレオが小さな取っ手に指をひっかけ、屋根裏に続く梯子を下ろすと、千尋の方を振り返り耳元で囁く。
「千尋、様子を見てくるからここで待っていてくれ。何かあればこれを」
渡されたのはハンドガンだった。その重さに千尋はごくりと息を呑み頷く。
ぎしぎしと小さく音を立てながら梯子を登るレオの姿を見送った千尋は、レオに手渡されたハンドガンをいつでも撃てるように両手で持つ。
できれば使いたくない代物だが、何があるか分からない。それに胸騒ぎの正体はきっとレオが向かう先に居る人物だ。
射撃の訓練はまだ一度しか受けていないし、それだって命中させるのにレオの補助が必要だった。
ズシリと重たい塊と、緊張感に鼓動が早くなる。できれば人を撃つことなど無い方が良いに決まっているのだ。
レオを待っている時間はとても長く感じた。緊張からか、次第に銃を持つ手は汗をかき湿っていく。
滑って落としそうになりそうで銃を握る手に更に力を込めていれば、頭上からレオの声が降ってくる。
「千尋、悪いが使えそうなタオルを持ってきてくれ」
「どうしたんですか」
ハッとしながら降りてきたレオの元へと駆けよれば、レオの腕には青年が抱きかかえられていた。
その表情は苦悶にゆがみ、呼吸も荒い。顔色も悪くガタガタと震えていて、腹部の辺りは血が滲んでいる。
どう見ても尋常ではない様子に、千尋はすぐに使えそうなタオルを探しに走った。
バスルームに向かったはいいが、そこも荒らされていて使えそうなものはない。千尋はすぐに別の部屋へ行き、ウォークインクローゼットの中から使えそうなものを探した。
幸い奥まった場所にあった大きなタオルケットを見つけ千尋がレオの元に戻れば、どうやらレオはどこかに電話を掛けていたようだ。
「外の連中と救急に連絡した。もう暫くすれば来ると思うが」
寒いのか、ガタガタと震える青年の体をタオルケットで包もうとすれば、がしりとその手を掴まれた。
「助けて……僕は死にたくない……」
千尋が驚愕に目を見開いていれば、青年はボロボロと涙を流し始める。どう見てもこのままでいいはずがない。
「大丈夫、大丈夫ですよ。もうすぐ救急車が来ますから」
聞こえているかわからないが、千尋はそう青年の頭を撫でながら声を掛ける。
その間、千尋の頭は混乱を極め手先が冷えていくのを感じていた。
暫くすれば遠くからサイレンの音が聞こえてくる。
「千尋、誘導してくるから見ていてくれ」
レオに頷き返しながら青年の方を見れば、痛みに気を失ったらしかった。
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