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第二部-失意の先の楽園
15 続く休暇
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基地での訓練を終え、数日。レオと千尋はゆっくりと二人の時間を堪能した。
ニコールからアーヴィングのことを聞き動揺を見せた千尋だったが、レオと共にのんびりと過ごすことでその揺らぎは収まったようだった。
朝、いつもより早く起きたレオが千尋を起こし、朝食の準備をする前に軽く体を動かす。レオは普段から行なっているトレーニングだが、そこに千尋も加わった形だ。
Ωはその性質から、もとより筋力がつきづらい。だが千尋はΩにしては上背もあり筋力もある方で、身体能力的にはβに近かった。
しかし銃を難なく扱えるだけの筋力はない。普段の生活ではそこまでの運動量が無いので、必要な筋肉量を一から作り上げるしかなかった。
レオがランニングマシーンで走る横で、軽いダンベルを持ち筋トレをする千尋をちらりと見る。
軽い物から始めたが、案の定すぐに筋肉痛となり手が震えていた。それでも千尋はレオと共に毎朝のトレーニングをする。
時間にして僅か一時間。先にトレーニングを終えた千尋が風呂場へと向かうと、レオは本格的なトレーニングを始めた。
体は訛っていないが、いつ何が起きるか分からない。ブライアンからの連絡以降、Ωの失踪は無くなったが、未だに失踪した者達は見つかっていなかった。
休暇の終わりはすぐそこで、既に次の仕事が待ち構えている。
軍人としての勘であるのだろうか。安全なこの国を出ることにレオは少なからず不安を覚えていた。
「何もないと良いが……」
「レオ? お風呂空きましたよ」
声に反応し顔を上げれば、扉の開いた先で濡れた髪をタオルで拭きながら千尋の姿が見える。
湯上りの肌は上気し、白い肌に薄く赤みがさしていた。着ている服も仕事をしている時のようなかっちりしたものではなく、緩めのシャツにパンツスタイルというラフなものだ。
千尋の無防備なその姿に、心の奥底から温かいものがジワリと込み上げる。
何気ない日常の、ほんのちょっとした場面だ。しかし普段から気を張り詰めてばかりいるレオと千尋にとっては、その何気なさと気の緩みがとても心に響くものであった。
この何てことない穏やかな日常を壊したくはない。
ニコールがあの場に居たのは完全にレオにとって想定外で、自然と出た過去の話は必然といえた。
過去の話を、ましてやかつての仲間の話をレオは千尋にする気はなかった。深い関係性を更に知れば、気に病むことが分かっていたからだ。
シャワーを手早く終わらせたレオがリビングへと戻れば、それに気が付いた千尋が微笑みかける。
開けたカーテンから差し込む春の温かい日差しが、千尋を背後から柔らかく照らしていた。
誰もが求める女神が今この瞬間、自分だけに仮面を着けづに微笑みを向けている。それがどれだけ幸福感と充足感を与えることか。
思わず腕を伸ばし千尋を抱き込めば、驚きながらもくすくすと笑いながら千尋もレオの背に腕を回して抱擁を交わしてくれる。
「朝食にしましょうレオ?」
「そうだな、今日は何が良い」
「そうですね、シリアルが食べたい気分です」
「準備しよう」
二人でキッチンへ向かい、お互いに食器を出したりと準備に取り掛かる。
レオがプロテイン入りの飲み物を準備していれば、ガラス張りのテーブルに敷かれたランチョンマットの上に千尋が手早く皿とカトラリー、シリアルの袋を綺麗に並べる。
こうした役割分担も、いつの間にかできていてそれが馴染むように日常となっていた。
席について食べ始めて少し。テレビからは今日の天気が春の陽気で温かく、心地が良い風が吹くと流れてきた。
散歩に出掛けるのもいいかもしれないなとレオが考えていれば、かちゃりと微かに音が鳴る。見れば千尋が手にしたスプーンを皿に置いていた。
その表情はどこか考えているようで、レオも手にしたスプーンを置き千尋が言葉を紡ぐのを待った。
*4月7日より、各配信サイトにて【運命に抗え】の電子書籍が順次発売開始してます!
電子派の皆様お待たせしましたー!
こちらも手に取っていただけたら嬉しいです✨
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朝、いつもより早く起きたレオが千尋を起こし、朝食の準備をする前に軽く体を動かす。レオは普段から行なっているトレーニングだが、そこに千尋も加わった形だ。
Ωはその性質から、もとより筋力がつきづらい。だが千尋はΩにしては上背もあり筋力もある方で、身体能力的にはβに近かった。
しかし銃を難なく扱えるだけの筋力はない。普段の生活ではそこまでの運動量が無いので、必要な筋肉量を一から作り上げるしかなかった。
レオがランニングマシーンで走る横で、軽いダンベルを持ち筋トレをする千尋をちらりと見る。
軽い物から始めたが、案の定すぐに筋肉痛となり手が震えていた。それでも千尋はレオと共に毎朝のトレーニングをする。
時間にして僅か一時間。先にトレーニングを終えた千尋が風呂場へと向かうと、レオは本格的なトレーニングを始めた。
体は訛っていないが、いつ何が起きるか分からない。ブライアンからの連絡以降、Ωの失踪は無くなったが、未だに失踪した者達は見つかっていなかった。
休暇の終わりはすぐそこで、既に次の仕事が待ち構えている。
軍人としての勘であるのだろうか。安全なこの国を出ることにレオは少なからず不安を覚えていた。
「何もないと良いが……」
「レオ? お風呂空きましたよ」
声に反応し顔を上げれば、扉の開いた先で濡れた髪をタオルで拭きながら千尋の姿が見える。
湯上りの肌は上気し、白い肌に薄く赤みがさしていた。着ている服も仕事をしている時のようなかっちりしたものではなく、緩めのシャツにパンツスタイルというラフなものだ。
千尋の無防備なその姿に、心の奥底から温かいものがジワリと込み上げる。
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シャワーを手早く終わらせたレオがリビングへと戻れば、それに気が付いた千尋が微笑みかける。
開けたカーテンから差し込む春の温かい日差しが、千尋を背後から柔らかく照らしていた。
誰もが求める女神が今この瞬間、自分だけに仮面を着けづに微笑みを向けている。それがどれだけ幸福感と充足感を与えることか。
思わず腕を伸ばし千尋を抱き込めば、驚きながらもくすくすと笑いながら千尋もレオの背に腕を回して抱擁を交わしてくれる。
「朝食にしましょうレオ?」
「そうだな、今日は何が良い」
「そうですね、シリアルが食べたい気分です」
「準備しよう」
二人でキッチンへ向かい、お互いに食器を出したりと準備に取り掛かる。
レオがプロテイン入りの飲み物を準備していれば、ガラス張りのテーブルに敷かれたランチョンマットの上に千尋が手早く皿とカトラリー、シリアルの袋を綺麗に並べる。
こうした役割分担も、いつの間にかできていてそれが馴染むように日常となっていた。
席について食べ始めて少し。テレビからは今日の天気が春の陽気で温かく、心地が良い風が吹くと流れてきた。
散歩に出掛けるのもいいかもしれないなとレオが考えていれば、かちゃりと微かに音が鳴る。見れば千尋が手にしたスプーンを皿に置いていた。
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