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30 目覚める2
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音もたてずに僅かに開いた扉から、様子を窺ったロイズはフェリチアーノが目を覚ましている事に気が付き、テオドールを起こさない様に反対側へと周ると、フェリチアーノの状態を確かめた。
「漸くお目覚めになり安心しました」
「僕はそんなに眠ってしまっていたんですか?」
「今日で四日目になります」
「そんなに……」
思いもよらない日数に、フェリチアーノは呆然としてしまう。
「あの日すぐにこちらにお連れして、王宮医に見せました。夜には高熱になってしまわれて、なかなか目覚めない物ですから、殿下が大層心配してしまいまして。ずっとフェリチアーノ様の横で碌に眠らずに目覚めるのを待っていらしたのですよ」
「大変なご迷惑をかけてしまい、申し訳ないです……あの一ついいでしょうか」
「はい、何でございましょう」
「殿下は……僕の体の事をお聞きになりましたか?」
どうか知られていませんようにと願いを込めながら、視線をロイズに合わせる。すると小さな笑みを浮かべたロイズがいいえと口にし、フェリチアーノは安堵した。
これでまだ楽しい時間は終わらない。誓約魔法があるからサライアスに体がもたないからと切り捨てられる事も無い。
あぁ良かったと、口元を緩め小さく洩らしたフェリチアーノにロイズは複雑そうな顔をした。
ロイズに何かあれば呼ぶように言われ、部屋にはテオドールと二人きりになった。
開けられた窓からは心地よい風が部屋に入り込んできて、フェリチアーノはその気持ち良さに再び眠りに落ちていった。
暫くして、自身の手を握る温かさにふと目を開けると、テオドールの瞳とかち合う。
「おはようございます、テオ」
フェリチアーノが掠れながらも声を出せば、テオドールの垂れた目が見開かれ、次の瞬間にはポタポタと涙を流し始めてしまう。
それを見たフェリチアーノは心がキシリと痛んだ。たかが倒れただけでここまでの反応をされるとは。
やはりテオドールには自身の体の事を気づかれてはいけないのだ。
「どうしたんですかテオ? 何故泣くんですか」
「フェリ……フェリが、目覚めなかったらどうしようかと……!」
「大袈裟ですよ、倒れた私も悪いんですが……」
「俺がもっと気を使っていれば……体調が悪くて言い辛かったのか?」
「体調は良かったんですよ? 何故倒れたのか僕にもわからなくて……」
フェリチアーノの手を両手で包み込み、放そうとしないテオドールの好きなようにさせながら、フェリチアーノは心底わからないと言う風に返す。
「折角のデートを……ダメにしてしまってすみません、楽しみにしてたのに」
「そう思うならしっかり食べて体力をつけてくれ。……それで、良くなったらリベンジしよう」
「はい、必ず」
微笑んだフェリチアーノに、テオドールは涙をやっと止めて、笑みを返した。
それからは張り切ったテオドールがディッシャーを呼び、彼からフェリチアーノの扱いをそれは熱心に聞き、その姿にロイズは感心していた。
ベタつく肌をテオドールが自ら拭くと言い出し、流石に拒否したフェリチアーノとロイズに部屋を追い出されたり、食事の際は全てを手ずから食べさせようとしたりと、甲斐甲斐しく過保護ぶりを増していった。
余程心配させてしまったのだろうと思いながらも、普段風邪をひこうがセザール以外に心配等されてこなかったフェリチアーノはくすぐったさを覚えながらも、ある程度まではテオドールの好きにさせていた。
寝ていた部屋がテオドールの部屋だと言うのを聞き、流石にこのままでは不味いと部屋を移ろうとしたが、それをテオドールに断固拒否された。
流石に同衾はどうなのかと思いテオドールと攻防戦を繰り広げたは良いが、結局呆れかえったロイズに倒れた相手に無体を働く程馬鹿ではないと言われ許可が出てしまい、そのままテオドールの部屋で過ごす事が決まってしまった。
広いベッドは二人が寝ても余裕があり、テオドールはにこにこと始終嬉しそうだった。この状況は如何な物かと思いながらも、隣にある温もりが心地よかった。
帰宅しなければと思う一方で、フェリチアーノは図々しいとは思いながらも、テオドールに言われるままに一週間ゆっくりと王宮で過ごし夢心地を楽しんだ。
「漸くお目覚めになり安心しました」
「僕はそんなに眠ってしまっていたんですか?」
「今日で四日目になります」
「そんなに……」
思いもよらない日数に、フェリチアーノは呆然としてしまう。
「あの日すぐにこちらにお連れして、王宮医に見せました。夜には高熱になってしまわれて、なかなか目覚めない物ですから、殿下が大層心配してしまいまして。ずっとフェリチアーノ様の横で碌に眠らずに目覚めるのを待っていらしたのですよ」
「大変なご迷惑をかけてしまい、申し訳ないです……あの一ついいでしょうか」
「はい、何でございましょう」
「殿下は……僕の体の事をお聞きになりましたか?」
どうか知られていませんようにと願いを込めながら、視線をロイズに合わせる。すると小さな笑みを浮かべたロイズがいいえと口にし、フェリチアーノは安堵した。
これでまだ楽しい時間は終わらない。誓約魔法があるからサライアスに体がもたないからと切り捨てられる事も無い。
あぁ良かったと、口元を緩め小さく洩らしたフェリチアーノにロイズは複雑そうな顔をした。
ロイズに何かあれば呼ぶように言われ、部屋にはテオドールと二人きりになった。
開けられた窓からは心地よい風が部屋に入り込んできて、フェリチアーノはその気持ち良さに再び眠りに落ちていった。
暫くして、自身の手を握る温かさにふと目を開けると、テオドールの瞳とかち合う。
「おはようございます、テオ」
フェリチアーノが掠れながらも声を出せば、テオドールの垂れた目が見開かれ、次の瞬間にはポタポタと涙を流し始めてしまう。
それを見たフェリチアーノは心がキシリと痛んだ。たかが倒れただけでここまでの反応をされるとは。
やはりテオドールには自身の体の事を気づかれてはいけないのだ。
「どうしたんですかテオ? 何故泣くんですか」
「フェリ……フェリが、目覚めなかったらどうしようかと……!」
「大袈裟ですよ、倒れた私も悪いんですが……」
「俺がもっと気を使っていれば……体調が悪くて言い辛かったのか?」
「体調は良かったんですよ? 何故倒れたのか僕にもわからなくて……」
フェリチアーノの手を両手で包み込み、放そうとしないテオドールの好きなようにさせながら、フェリチアーノは心底わからないと言う風に返す。
「折角のデートを……ダメにしてしまってすみません、楽しみにしてたのに」
「そう思うならしっかり食べて体力をつけてくれ。……それで、良くなったらリベンジしよう」
「はい、必ず」
微笑んだフェリチアーノに、テオドールは涙をやっと止めて、笑みを返した。
それからは張り切ったテオドールがディッシャーを呼び、彼からフェリチアーノの扱いをそれは熱心に聞き、その姿にロイズは感心していた。
ベタつく肌をテオドールが自ら拭くと言い出し、流石に拒否したフェリチアーノとロイズに部屋を追い出されたり、食事の際は全てを手ずから食べさせようとしたりと、甲斐甲斐しく過保護ぶりを増していった。
余程心配させてしまったのだろうと思いながらも、普段風邪をひこうがセザール以外に心配等されてこなかったフェリチアーノはくすぐったさを覚えながらも、ある程度まではテオドールの好きにさせていた。
寝ていた部屋がテオドールの部屋だと言うのを聞き、流石にこのままでは不味いと部屋を移ろうとしたが、それをテオドールに断固拒否された。
流石に同衾はどうなのかと思いテオドールと攻防戦を繰り広げたは良いが、結局呆れかえったロイズに倒れた相手に無体を働く程馬鹿ではないと言われ許可が出てしまい、そのままテオドールの部屋で過ごす事が決まってしまった。
広いベッドは二人が寝ても余裕があり、テオドールはにこにこと始終嬉しそうだった。この状況は如何な物かと思いながらも、隣にある温もりが心地よかった。
帰宅しなければと思う一方で、フェリチアーノは図々しいとは思いながらも、テオドールに言われるままに一週間ゆっくりと王宮で過ごし夢心地を楽しんだ。
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