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15 慣れてるふり
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テオドールに手を引かれたまま王宮内を抜けだし外へ出ると、辺りには暖かな日差しが降り注ぎ、柔らかく風がそよいでいた。
見上げた空の眩しさに足を止めれば、テオドールが不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「眩しさに目が眩んだだけですよ」
「そうか? でもフェリチアーノは細いから心配だな、室内に戻った方が良いか?」
「これでも私は男ですよ? そこまで軟ではありません。それにゆっくりと朝の散歩をするなんて久々ですから、どうかこのままで」
表情を和らげたテオドールは、自然にフェリチアーノの腰を抱き寄せ歩き出す。テオドールは恋人が居なかったと言うが、その行動一つ一つが慣れている者のそれだった。
恋人が居ないのに慣れた態度が出ると言う事は、もしかしたら相当遊んできたのかもしれないと思い至り、チラリとテオドールの顔を窺った。
程よく逞しい体と、短く整えられた髪に、垂れ目がちな目、それに加えて笑うとフェリチアーノより年が上の筈だが、少しばかりの幼さが垣間見え男らしさの中にも可愛らしさがあった。これは嘸かし男女問わず選びたい放題だったのだろうとフェリチアーのは思うのだ。
「テオドール様は随分と慣れていらっしゃいますね?」
「そんな事は無いと思うが……何故そう思う?」
「行動が全てスマートで手馴れていらっしゃるからですよ、随分と遊ばれて来たのですね?」
「は!? 俺がか!?」
予想外のフェリチアーノの発言に驚き、テオドールは慌てふためいた。その様子に思っていた反応と違うと、フェリチアーノは小首を傾げる。
「違うのですか?」
「遊ぶわけがないだろ!! 確かに恋人は欲しかったが、それは誰でもいいわけじゃなくてだなっ」
顔を赤らめ慌てふためくテオドールに、フェリチアーノはまたもや首を傾げる。
それをみたテオドールは肩を落とし、羞恥に染めた顔で言いにくそうに言葉を紡いだ。
「俺の肩書や、外見に群がって来るような人達じゃなくて、本当に心から愛せる者と……その、恋人になりたかったんだよ」
「それはなんとまぁ……随分と、乙女思考と言いますか……」
フェリチアーノより高い背を縮こませ、手で顔を覆い隠してしまったテオドールは乙女思考と言う事に自覚があるのだろう、耳まで真っ赤に染め上げてしまっていた。
その様子が余りにも見た目から想像した物とかけ離れており、面白くなってしまったフェリチアーノは、くすくすと笑い声を上げてしまう。
「笑う事ないだろう」
「すみません、あまりにも可愛らしかったものですから」
「はぁ!? 可愛らしいだって!? 冗談だろう!」
羞恥から一転、怪訝な顔をフェリチアーノに向けたテオドールに、更にフェリチアーノは笑ってしまう。
あまりの笑われ様に、溜息をついたテオドールに、フェリチアーノは流石に笑い過ぎてしまったかと心配になる。
「すみません、不敬ですよね」
「あぁもういいよ、顔に似合わず乙女思考な自覚はあるからな」
不貞腐れた様に歩き出したテオドールの後を追いかけながら、またもや口端が上がりそうになるのを咳ばらいをして押し込んだフェリチアーノは、テオドールの隣に並び歩いた。
「疑問なのですが、遊んでいたわけでもなく恋人も全くいなかったのなら、何故さらりと動けるのでしょう? 陛下にも予行演習として私は最適だと先程言われましたしたが、その必要はなさそうに見えますよ?」
「父上は何をフェリチアーノに話しているんだか……俺の行動は、そうだな。全部が全部、物心ついた時から見慣れて来た事をそのままやってるだけだからな、別に慣れている訳じゃない」
政略結婚であった王と王妃はそうは思わせない程仲が良いのは有名な話だ。恋愛結婚だった他の王子や王女は言わずもがなである。
そんな中で育って来たテオドールは、彼等がどういう動きをし、どういう態度で相手に接していて言葉を紡いでいるかと言う物を嫌になる程見て来たし、自身の恋人が出来た時には……と想像をしたのも数えきれない程で、年が一番近い姉とは恋愛小説も沢山読んだ程だった。
実践をしなくとも培われて来た知識が、フェリチアーノと言う仮の恋人が出来た事によってここぞとばかりに発揮されている訳だが、やはり実践を積んでいない分細かな所の配慮が今朝の様に抜け落ちてしまうのだ。
木漏れ日が落ちる並木道を歩きながら、成る程とテオドールの話に耳を傾ける。
愛が溢れた家族の下で育って来たテオドールが、自身もその愛を掴もうとするのは当然の事に思えた。
見上げた空の眩しさに足を止めれば、テオドールが不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「眩しさに目が眩んだだけですよ」
「そうか? でもフェリチアーノは細いから心配だな、室内に戻った方が良いか?」
「これでも私は男ですよ? そこまで軟ではありません。それにゆっくりと朝の散歩をするなんて久々ですから、どうかこのままで」
表情を和らげたテオドールは、自然にフェリチアーノの腰を抱き寄せ歩き出す。テオドールは恋人が居なかったと言うが、その行動一つ一つが慣れている者のそれだった。
恋人が居ないのに慣れた態度が出ると言う事は、もしかしたら相当遊んできたのかもしれないと思い至り、チラリとテオドールの顔を窺った。
程よく逞しい体と、短く整えられた髪に、垂れ目がちな目、それに加えて笑うとフェリチアーノより年が上の筈だが、少しばかりの幼さが垣間見え男らしさの中にも可愛らしさがあった。これは嘸かし男女問わず選びたい放題だったのだろうとフェリチアーのは思うのだ。
「テオドール様は随分と慣れていらっしゃいますね?」
「そんな事は無いと思うが……何故そう思う?」
「行動が全てスマートで手馴れていらっしゃるからですよ、随分と遊ばれて来たのですね?」
「は!? 俺がか!?」
予想外のフェリチアーノの発言に驚き、テオドールは慌てふためいた。その様子に思っていた反応と違うと、フェリチアーノは小首を傾げる。
「違うのですか?」
「遊ぶわけがないだろ!! 確かに恋人は欲しかったが、それは誰でもいいわけじゃなくてだなっ」
顔を赤らめ慌てふためくテオドールに、フェリチアーノはまたもや首を傾げる。
それをみたテオドールは肩を落とし、羞恥に染めた顔で言いにくそうに言葉を紡いだ。
「俺の肩書や、外見に群がって来るような人達じゃなくて、本当に心から愛せる者と……その、恋人になりたかったんだよ」
「それはなんとまぁ……随分と、乙女思考と言いますか……」
フェリチアーノより高い背を縮こませ、手で顔を覆い隠してしまったテオドールは乙女思考と言う事に自覚があるのだろう、耳まで真っ赤に染め上げてしまっていた。
その様子が余りにも見た目から想像した物とかけ離れており、面白くなってしまったフェリチアーノは、くすくすと笑い声を上げてしまう。
「笑う事ないだろう」
「すみません、あまりにも可愛らしかったものですから」
「はぁ!? 可愛らしいだって!? 冗談だろう!」
羞恥から一転、怪訝な顔をフェリチアーノに向けたテオドールに、更にフェリチアーノは笑ってしまう。
あまりの笑われ様に、溜息をついたテオドールに、フェリチアーノは流石に笑い過ぎてしまったかと心配になる。
「すみません、不敬ですよね」
「あぁもういいよ、顔に似合わず乙女思考な自覚はあるからな」
不貞腐れた様に歩き出したテオドールの後を追いかけながら、またもや口端が上がりそうになるのを咳ばらいをして押し込んだフェリチアーノは、テオドールの隣に並び歩いた。
「疑問なのですが、遊んでいたわけでもなく恋人も全くいなかったのなら、何故さらりと動けるのでしょう? 陛下にも予行演習として私は最適だと先程言われましたしたが、その必要はなさそうに見えますよ?」
「父上は何をフェリチアーノに話しているんだか……俺の行動は、そうだな。全部が全部、物心ついた時から見慣れて来た事をそのままやってるだけだからな、別に慣れている訳じゃない」
政略結婚であった王と王妃はそうは思わせない程仲が良いのは有名な話だ。恋愛結婚だった他の王子や王女は言わずもがなである。
そんな中で育って来たテオドールは、彼等がどういう動きをし、どういう態度で相手に接していて言葉を紡いでいるかと言う物を嫌になる程見て来たし、自身の恋人が出来た時には……と想像をしたのも数えきれない程で、年が一番近い姉とは恋愛小説も沢山読んだ程だった。
実践をしなくとも培われて来た知識が、フェリチアーノと言う仮の恋人が出来た事によってここぞとばかりに発揮されている訳だが、やはり実践を積んでいない分細かな所の配慮が今朝の様に抜け落ちてしまうのだ。
木漏れ日が落ちる並木道を歩きながら、成る程とテオドールの話に耳を傾ける。
愛が溢れた家族の下で育って来たテオドールが、自身もその愛を掴もうとするのは当然の事に思えた。
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