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第2章
4.和解と理解
しおりを挟むカマエルは別に僕を馬鹿にしていたわけじゃない。それは僕が彼に押し付けた偏見だ。
「僕こそごめん。勝手に勘違いして。お前が、………エルが僕を馬鹿にしたんだと思ったんだ。でも、お前はお前なりに僕に寄り添ってくれてるんだよな」
僕の言葉に、ぽかんとしたカマエルの顔。
ちょっと間抜けで笑える。
「あぁ、そうだ。でも笑わずにちゃんと説明すればよかったな…」
申し訳なさそうに眉を下げ微笑み反省の色を見せるカマエルを僕は可愛いとか思ってしまった。
「いいよ、じゃあどうすれば僕が魔法を使えるかちゃんと教えろよ」
「あぁ!任せてくれ」
カマエルに詳しく聞くと今まで僕が魔法を使えなかったのは魔法を使えるほどの魔力がなかったから。
でも、魔法とは魔力が有れば使えるものでもない。体内で魔力を練ること、魔力栓と呼ばれる体から練った魔力を放出するための栓をきちんと解放することこの二つが重要だそう。
天使族も魔法を使えるため、僕はカマエルに感覚を掴む練習をお願いした。
「じゃあ、まず身体の中の魔力を感じて」
「うん」
ひとつ深呼吸をして集中する
身体の中に意識を向ければ心臓を中心に湧き出るエネルギーを感じるこれが「魔力」
「感じられたようだな、じゃあ次はそれを身体の中で練ってみろ」
「う…ん?どうすればいい?わからない…」
集中を切らさないようカマエルに聞いてみる。魔力は感じることができた。でもこれを練るとなると全然わからない。
四苦八苦する僕にカマエルが根気強く教えてくれる。
「全身を流れる魔力をお腹のあたりに集めて、それをパンをこねるように練ってみるんだ」
なるほど、そう言うことかと一度理解してしまえば話は早い。
カマエルの教え方はめちゃくちゃわかりやすかった。わからなければ僕がわかるものに例えて、教えてくれた。
そんなこんなで1時間ほどで魔法を使うための第一関門「魔力を練る」までできるようになった。
魔力を練ると言う感覚が初めてな僕は早々に疲れてしまって練ることに集中できなくなってしまった。でもムキになって続けていたが、
「ベル、今日はここまでにしよう。
初めててほぼ完璧に近い練り上がりだ。
これから練習を重ねれば、もっと早く、練度を上げたものができるようになるだろう。
だから焦ることはない」
そういったカマエルが僕の唇を親指でそっと撫でた。
その指には真っ赤な血。
いつのまにか下唇を噛んでいたようで血がでている。
僕が気負いすぎないようにカマエルは声をかけてくれたんだろう。
いつまでも意地を張っても仕方ない。
「わかった。今日はここまでにする、今日はありがとう。……だが、できるまでお前は僕をサポートしろよ」
あぁ、なんて素直に言えない僕。
ありがとうで終わらせとけばいいものを。
あぁぁぁぁと心の中でうめく。
カマエルは気分を害してはないだろうか?
恐る恐るカマエルの顔を見ると、
仕方ないなと苦笑している。でも僕と目が合うと「あぁ、いつまでも付き合う」と優しく頭を撫でるものだから胸がきゅんとした。
好きだ。
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