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第2章
3.すれ違い、思い込み
しおりを挟む「ふふふ、あははは!」
部屋に響くはカマエルの笑い声。
そんなに笑わなくてもいいじゃないか!
「なんでそんなに笑うんだ!」
「いや、1人で出来もしない魔法を練習していたのだろう?ずっと?」
そうだよ、悪いか?!
どうしても魔法を使うことを諦めきれなかった僕は恥を忍んでカマエルに聞いてみた。
そしたらこのザマだ。
聞かなきゃよかった…。
「そんなにすねるな」
「もうお前なんか知らない…」
「ベル、悪かった。お前なんて言わずエルと呼んでくれ」
「嫌だ、お前はできない僕を笑った…」
できない…
そう、僕はいままでだってこれからだって出来損ないのままなんだ。
魔力が増えたことを知って僕でも魔法が使えるかもって1人で浮かれて練習して…でも、できなくて。このままじゃ、いつかまた捨てられるかも…
「…ル、ベル!」
はっと気づくと心配そうに僕の顔を覗き込むカマエルがいた。
カマエルと僕とでは身長がだいぶ違うから僕の顔は覗き込まないとわからない。
でも付き合ってからのカマエルは僕に合わせて行動してくれるようになった。
僕の顔を覗き込んで表情を確認するのもそのひとつ。
あの、横暴で自分勝手だったカマエルからは想像がつかない変化だ。中身が変わったかと言われるとそれは違うけど…
だからこそ、僕は何もできない自分に、何もしてやれない自分に嫌気がさしてしょうがない。
こんなんじゃほんとにいつ愛想をつかされるかわからない。
でも、心配をかけるわけにはいかないから
僕は大丈夫って言う。
「なんだよ」
「また、変なこと考えてただろう」
「そんなことない。僕は大丈夫だ」
「そんなわけあるか、馬鹿。そんな酷い顔をしておいて…。でもそんな顔させたのも俺のせいでもあるから…悪かった」
カマエルに馬鹿って言われたのも衝撃だったけど、あのカマエルが謝った…?!
「えっ、いや、お前が謝るなんて…」
「俺はベルを失うかもと思ったあの日から、もうベルに誠実でいようと決めた。さっきお前の行動に笑ったのは…滑稽に思ったとか馬鹿にしていたわけじゃない。俺を送り出した後いそいそと1人で練習して、できなくて、でも諦めずに挑戦していたベルを想像して…何というか、いじらしくなってしまってな。つい笑ってしまった。」
カマエルの言葉の端々から僕に誠実に向き合おうとする気持ちが伝わってくる。前みたいに自分の価値観のみで話そうとせず僕にわかるように複雑な気持ちも噛み砕いて正直に話してくれる。
そんな姿を見て僕はますますエルのことが好きになったと同時にこの関係に終わりが来ることが怖くなった。
でもそうか、
僕がカマエルを想うと同時にカマエルも僕を想ってくれていることを僕は忘れていた。
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