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第1章

42.バカはお前だ

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「ただいま、カマエル」

ただいまなんて久しぶりでなんだか照れ臭くて。でも、あいつの顔見たらなんだか安心して自分でも気付かないうちに笑みが浮かんでいた。


「ベル…よかった。もう戻ってこないのかもしれないと…」


確かめるように僕の顔を見て、声を聴いて。
安堵あんどの表情を浮かべるカマエルにこんなにも心配をかけていたんだと改めて気付かされた。


「もう勝手にいなくなったりするな」
「うん、…ごめん」
「あぁ、よかった…」
「んっ」

そっと壊物を扱うようにでも力強く抱きしめるカマエルの腕の中はさっきまでいた空間なんてチンケだと思うほどに暖かくて心地よかった。


『伝えられる時に想いはちゃんと伝えるんだよ』


頭に響く声はそう言い残し、気配を消した。


「帰ったのか」
「?何が」
「お前の母だ。お前の中にいて、さっきまで俺と話していた。……話は聴いた。」


気配にさといカマエルはすぐ気づいたみたいだ。
言われるともう僕の中に母はいない。
寂しいと思いながらもいつも僕を見てくれていたと言っていたから、僕をどこからか見てくれているんだろう。


「そうだったんだ…まぁ、お前になら話してもいいとお母さんは思ったんだろ。僕もお前なら、いい…と思ってるし」


無意識に口に出したセリフがだんだん恥ずかしくなって尻すぼみになってしまった。
恥ずかしい、何言ってんだろ。


「あーもう、お前は本当に可愛いな。」
「えっ!な、ちょ…」
「好きだ」


突然の可愛い攻撃にどうしていいか分からず、戸惑う僕にカマエルからの特大の爆弾は見事に僕に被弾した。


「好き…?誰が、誰を?」
「バカ、俺がお前をだ。」
「なっ、バカは余計だ!」


言葉をうまく処理できない僕。
本当にどうして、えっ、カマエルが?


これって


「告白?」


あっ、思わず口に出してた。


「そーだな、求愛とも言う。」
「それはそうだけど…」


求愛って、なんだかな。
でも嬉しい…じわじわと湧き起こるポカポカした気持ちは僕の冷えた身体を内側から溶かしていく。


「好きだ、ベル。ベルゼビュート、俺はお前の全てが欲しい。花が好きなところ、少し臆病なところ、笑った顔が可愛いところ、実は悪魔と人間のハーフなところ、他にも色々もっとある。その全部が好きだ。」
「ふぁ!」
「俺と付き合ってくれるな?」
「えっ、ちょ、」
「返事は、はいかイエスのどっちかだ」


やっぱり、こいつはこいつだ。
自分のペースを取り戻したカマエルは不遜で、自分勝手。


でもそんなカマエルのことが僕は好きみたいだ。


でも、返事がはいかイエスだなんて、僕に拒否権はないのだろうか。せめて、返事くらいしっかりさせてくれ。


「仕方ないな、付き合ってやる」


物理的にも、精神的にもこいつに捕まってて、逃げられないんだろうなと悟った。


「僕も好きだぞ、……エル」
「!!!!!」


愛称に気づいたカマエルがさらに僕を抱きしめてきたんだが、感極かんきわまりすぎてどんどん締め付けが強くなる腕の中で僕はあの世を見たことは少し根に持っておく。




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