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第1章
38.何がなんだか(sideカマエル)
しおりを挟む「俺はベルの生みの親だ。まぁ、ベルに直接会ったことはない。やむを得ない事情ってやつだ、そこは察しろ」
ベルの身体を乗っ取り偉そうに喋る自称母親。何様だこいつは。あぁ、母親様だったな。
でも口調とか纏う雰囲気から多分男だと思う
しかしこの世界男が子を産むことはない。
それは女にしかできない自然の理というものだからだ。
その理は天界も魔界も人間界も変わらない。
しかもベルには育てた親がいた。
あの日までだが…
どういうことだ…
「なぁ、お前は男だろう?万が一、ベルと血のつながりがあるとして男は母体となれない。だからお前の話はにわかに信じがたい。」
一瞬呆けた顔をして、あーっと目をそらす自称母親。そこに何か知られて不都合なことがあるのだろう。
「モゴモゴ言ってないでハッキリ言ったらどうだ?」
「ん"ん……やむを得ない事情に触るので詳細は省くが、ベルは俺が産んだ子で間違いない。生まれてすぐのベルを俺はこの手で抱いだ。ほんの短い間だったが…」
今まで偉そうにしていたのに、語尾につれて言葉も表情も萎れていく。
寂しそうな顔を覗かせるこいつの表情が、いつも俺を見送るベルが僅かに見せる表情と重なる。
ちっ、俺はこの顔には弱い。
ベル本人ではないと分かっていても纏う雰囲気はとても似ている。だからか他人事とは思えなくなる。
これが俺を油断させるための作戦ならどれほどいいか。
でも天使族からすれば真実を見抜くことは容易い。天使族同士だとなんとなくだが、多種族となればほぼ外さない。カンみたいなものだ。
だからこいつの言ってることが真実だとわかってしまった。
でも分かったことと、受け入れることは全くの別問題だ。
「それじゃあ、お前が母親だとして父親はどこにいる?ベルにはこれまで育てた両親がいたはずだが…」
「あいつらは違う!!あれはベルの親なんかじゃない。ベルは正真正銘俺たちの子だ……」
俺の言葉を聞くや否や怒りをあらわにする。
「じゃあなぜお前はそばにいなかった?そばにいたらあんな奴らがベルを育てることもなかったのではないか?」
「違う…違うんだ……」
きつく結ばれた唇の端から血が滴る。
「………………まずは俺のことから話さないといけないな…」
重い口を開いて語った話は俺にとって予想を遥かに超えるものだった。
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