25 / 53
第1章
22.季節はそろそろ冬。
しおりを挟む気づけば季節は冬に近づいていたみたいだ。
外に出ると少し肌寒さを感じ、心なしか花たちは元気がなくなってきた。
もう少ししたら外を出歩くことすら難しくなってしまうだろう。
冬が来たらあいつはどうするのかなと、ふと金髪キラキラ天使のことが浮かんだ。
天使にとっても魔界の冬は段違いに寒いだろう。普段穏やかな気候の中生活している天使に魔界の冬は厳しいのではと思う。
そうなるとしばらく会えなくなるのか。
寂しいだなんて決して思ってない。
騒がしいのがいなくなるだけだと少し下を向きかけた心に言い聞かせた。
しばらくの間花たちともお別れだしな。
ほんとどうしよ。
前の自分はどうしてたっけ?
普通に生活してたとは思うけどその普通が思い出せない。
一年前まではたまにふらっと現れる金髪キラキラうるさい天使をたまに相手してあとは…どうしてた?
うーんと考えるけどわからない。
ほんとあいつのせいで今年はうるさかったんだなとしみじみやつの存在感にびっくりする。
「ベル、帰るぞ。そろそろ戻らないと風邪をひく。」
後ろには顰めっ面をしたカマエルがいて、
寒い中外に出て考え込んでいたからかすっかり僕の身体は冷えて少し震えている。
カマエルは自分の来ていた白いローブを脱ぎそっと肩にかけてくる。
決して乱暴にはしない。無意識のうちに行動に本来の優しさが滲み出るんだ。口調は荒っぽく乱暴だけど。
こういうとこほんとお母さんだななんて思ったりもするが本人に言うとうるさいので口にはしない。
帰り道はお互い無言だった。
僕がカマエルから帰るって言葉を聞きたくなくて話しかけてほしくない雰囲気出してたからかな。やつは僕に何か言おうとしてたみたいだけど。
もう少しだけ、誰かがそばにいることの暖かさを僕に感じさせてて欲しい。
家に着くとすぐにカマエルがホットココアを出してくれた。
温かいココアは冷えた身体に染み渡る。
ホッと一息ついたところでカマエルが机を挟んで正面に座る。
「ベル、言わないといけないことがある。」
突然切り出された台詞。
やっぱりきた…
ドキドキと鼓動が音を立てる。
「な、なんだ」
「しばらくここに来れない。」
「そうか…」
ほらやっぱりと思う気持ちとショックを受けている自分がいる。
わかってたことじゃないか、こいつは別に帰る場所がある。ずっとここにはいられない。
それに魔界の冬は天使にとっては決して過ごしやすいとは言えない。
そうなるのも時間の問題だった。
なんとか自分を納得させようとするが寂しいという気持ちは溢れて止まらない。
「そんな顔をするな、期待してしまうぞ」
気づけばカマエルがすぐそばまで来ていて僕の顔を覗き込んでいる。
綺麗なエメラルドの瞳に見つめられて目が離せなくなってしまう。
今僕はどんな顔をしているのだろうか。
だんだんと近づいてくるカマエルの顔。
そして熱いものが僕の唇に触れた。
どうしてか僕は拒否することもせずただその熱を受け止めていた。
お触り禁止令を出す原因となったあの件以来、カマエルからは一切そういった類の接触はなかった。だから僕はあれはいっときの気の迷いだったんだって思っていたが今のこの状況はなんだろう。
どうしてか僕は拒否することもせずただその熱を受け止めていた。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる