上 下
24 / 53
第1章

21.ミッションクリア?

しおりを挟む


さて、何を作ろうかなと思い手元にある材料を確認する。

冷蔵庫を開けると
じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、
トーンヴォーの肉、配合済みスパイス

これを見てあぁ、あの日のままなんだと思い出す。


あの日僕はカレーを作ろうと用意して他に何か入れられる野菜を探しに庭の畑で手のひらほどもある大きなトマトを収穫したことが嬉しくてトマトカレーにしようって思ってたんだ。

あの悪魔たちの事もありすっかり忘れていた。

あの日の気分はトマトカレーでそれは大きなトマトがあったから。
今だってカレーは食べたくないわけじゃないけど何か物足りないような気持ちがする。
きっとあのトマトたちがいないからだ。
トマトは踏み荒らされたっぽいからもう食べられないだろう。

でもこの材料だとカレーを作らないといけない気がするが気が進まない。


僕が台所で悩んでいると顔の横からそっと差し出されたものに驚いて後ろを振り向く。

そこには少し困ったような顔をしたベルがいて差し出された手のひらにはあの日僕が収穫したトマトが一つ乗っていた。


「悪い、無事なのは一つしかなかった。」


その言葉だけでやつがあの現場から僕のトマトを探してくれたことが伺えた。
無事なのを拾って保護してくれていたのだろう。あの日収穫してからかなり時間は経っているが特に傷みなどは見当たらない。収穫したてほやほやだ。


それはやつの聖魔法のおかげなのだろう。
悪魔である僕にはできない事だ。

悪魔は壊すことは得意だが治すのは苦手だ。
逆もまた然りなのだが。


「少なくはなったがこれで材料は揃ったか?」
「うん、ありがとう」
「礼を言われるまでもない。」


やつなんて事ない風にそういうが
うん、でもほんと僕は嬉しい。
ぶっきらぼうだがカマエルの優しさはちゃんと僕に伝わってきた。


「ふふ、ありがと…エル」
「?!」


少しくらいサービスしてあげてもいいかなと思ったから口にした愛称にやつが飛びついてきてうるさかったので台所からやつを追い出した。

料理の邪魔だし、それに食材と間違ってあいつを切ってもやだからな。




さて、気を取り直してカレーを作り始める。
たしかにトマト一つではトマトカレーは難しいけど隠し味に使ってトマトの酸味でカレーのスパイスの風味を整えることはできる。

むしろちょうどいいくらいかもしれない。


コトコト煮込む事数十分。
お米も炊けたし器によそってカレーをかける。とろっとしたカレーのスパイスの香りに紛れてわずかに香るトマトのみずみずしい香り。

他の人にはわからないと思うけど僕ははっきりわかる。まぁ、だって僕が育てたトマトだからな!


2人分器に用意してテーブルに持って行くと、カマエルが2人分のスプーンと飲み物を用意していてすぐ食べられるように席について待っていた。待ち遠しいのか少しそわそわしている姿がかわいいなと思った。

目の前に置くと、


「これが、ベルのカレーか!!」
「そんなすごいものじゃないけど、どうぞ召し上がれ」


無言で食べ始めたかと思うと、スパイスとトマトの調和がなんたらや具材の日の通り具合がうんたらかんたら食レポしている。
すごく喋っているのに凄い勢いでカレーが皿からなくなっていく。
どんな手品なんだ…。

まぁ、気に入ってもらえたみたいでよかった。

安心して一気に緊張が解けた。
どっと疲れた気がするが誰かと一緒の食卓はやっぱり楽しいと自作のカレーを味わった。







「もう、無くなってしまったのか…」

たくさん作っていたのにカマエルのお代わりで全てなくなってしまった。
もうおかわりできない、味わえないことに地味にショックを受けていた姿を見てまた作ってやらなくもないと思ったのはご愛嬌。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●トーンヴォーの肉
いわゆる魔物肉の一種。
淡紅色で肉質が柔らかく、脂肪が肉と層状になっている。
調理がしやすいためよく食用で出回っている。

●トーンヴォー
頭から鋭く生えているツノが特徴な魔物
交戦的で一度目が合うとどちらかが倒れるまで追いかけてくる。
前屈みになり突進してくるため鋭いツノにより命を落とす者は多い。
家畜化が難しいと言われている食材の一種。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

処理中です...