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第1章
21.ミッションクリア?
しおりを挟むさて、何を作ろうかなと思い手元にある材料を確認する。
冷蔵庫を開けると
じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、
トーンヴォーの肉、配合済みスパイス
これを見てあぁ、あの日のままなんだと思い出す。
あの日僕はカレーを作ろうと用意して他に何か入れられる野菜を探しに庭の畑で手のひらほどもある大きなトマトを収穫したことが嬉しくてトマトカレーにしようって思ってたんだ。
あの悪魔たちの事もありすっかり忘れていた。
あの日の気分はトマトカレーでそれは大きなトマトがあったから。
今だってカレーは食べたくないわけじゃないけど何か物足りないような気持ちがする。
きっとあのトマトたちがいないからだ。
トマトは踏み荒らされたっぽいからもう食べられないだろう。
でもこの材料だとカレーを作らないといけない気がするが気が進まない。
僕が台所で悩んでいると顔の横からそっと差し出されたものに驚いて後ろを振り向く。
そこには少し困ったような顔をしたベルがいて差し出された手のひらにはあの日僕が収穫したトマトが一つ乗っていた。
「悪い、無事なのは一つしかなかった。」
その言葉だけでやつがあの現場から僕のトマトを探してくれたことが伺えた。
無事なのを拾って保護してくれていたのだろう。あの日収穫してからかなり時間は経っているが特に傷みなどは見当たらない。収穫したてほやほやだ。
それはやつの聖魔法のおかげなのだろう。
悪魔である僕にはできない事だ。
悪魔は壊すことは得意だが治すのは苦手だ。
逆もまた然りなのだが。
「少なくはなったがこれで材料は揃ったか?」
「うん、ありがとう」
「礼を言われるまでもない。」
やつなんて事ない風にそういうが
うん、でもほんと僕は嬉しい。
ぶっきらぼうだがカマエルの優しさはちゃんと僕に伝わってきた。
「ふふ、ありがと…エル」
「?!」
少しくらいサービスしてあげてもいいかなと思ったから口にした愛称にやつが飛びついてきてうるさかったので台所からやつを追い出した。
料理の邪魔だし、それに食材と間違ってあいつを切ってもやだからな。
さて、気を取り直してカレーを作り始める。
たしかにトマト一つではトマトカレーは難しいけど隠し味に使ってトマトの酸味でカレーのスパイスの風味を整えることはできる。
むしろちょうどいいくらいかもしれない。
コトコト煮込む事数十分。
お米も炊けたし器によそってカレーをかける。とろっとしたカレーのスパイスの香りに紛れてわずかに香るトマトのみずみずしい香り。
他の人にはわからないと思うけど僕ははっきりわかる。まぁ、だって僕が育てたトマトだからな!
2人分器に用意してテーブルに持って行くと、カマエルが2人分のスプーンと飲み物を用意していてすぐ食べられるように席について待っていた。待ち遠しいのか少しそわそわしている姿がかわいいなと思った。
目の前に置くと、
「これが、ベルのカレーか!!」
「そんなすごいものじゃないけど、どうぞ召し上がれ」
無言で食べ始めたかと思うと、スパイスとトマトの調和がなんたらや具材の日の通り具合がうんたらかんたら食レポしている。
すごく喋っているのに凄い勢いでカレーが皿からなくなっていく。
どんな手品なんだ…。
まぁ、気に入ってもらえたみたいでよかった。
安心して一気に緊張が解けた。
どっと疲れた気がするが誰かと一緒の食卓はやっぱり楽しいと自作のカレーを味わった。
「もう、無くなってしまったのか…」
たくさん作っていたのにカマエルのお代わりで全てなくなってしまった。
もうおかわりできない、味わえないことに地味にショックを受けていた姿を見てまた作ってやらなくもないと思ったのはご愛嬌。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●トーンヴォーの肉
いわゆる魔物肉の一種。
淡紅色で肉質が柔らかく、脂肪が肉と層状になっている。
調理がしやすいためよく食用で出回っている。
●トーンヴォー
頭から鋭く生えているツノが特徴な魔物
交戦的で一度目が合うとどちらかが倒れるまで追いかけてくる。
前屈みになり突進してくるため鋭いツノにより命を落とす者は多い。
家畜化が難しいと言われている食材の一種。
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