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第1章

14.あれ…?

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「どこか痛いところはないか?」

ぶっきらぼうだが本当は僕のことを心配そうに聞くこいつの態度が懐かしく思える。
少し離れていただけなのにどんだけこいつの存在は尊大なのだろうと考えると苦い笑いが込み上げる。

今まで僕が出会った誰よりも自信家で、でもこんな僕のことを気にかけてる。
僕みたいなパッとしない悪魔を…
ほんとはプライド激高天使のくせに。
それはまぁ…僕の偏見なんだけど。

いつもならこいつの存在ごと鬱陶しいと思うんだろうけど、あの悪魔どもに会った後だとこいつの方がまだましだったなと思う。

それにしても目が覚めてから感じていた違和感はあの全身が軋むような痛みが無くなって身体が軽くなったような気がするからだ。

どうしてだろう…
あの時すっごく痛くてでもどうしようもなくて僕の治癒力じゃあ到底回復は出来なかった。
悪魔は頑丈にできているといえど、痛いものは痛い。

もしかしてあれは夢だった?
あの痛みも苦しみも全部?

そう思えたら楽だけど、あれは夢なんかじゃない。現実だ。

多分カマエルが治癒してくれたんだろう。
どうやってかは知らないけど。
そもそも天使の治癒が悪魔に効くのか?
別の意味で効きそうな気はするけど。
想像するとこわいな….

天使の治癒でドロドロと溶けていく悪魔を想像してホラーだからやめた。
まぁ、あの悪魔に痛めつけられて生きているだけで奇跡だ。

それでいいやと無理矢理思考をやめた。

それにしても…
あれ?
どうしてあの悪魔は"昔から嫌いなんだ"なんてそんなこと思うんだろう…
あの悪魔に会ったのは初めてだったのに

どこかで会ったことが…

ズキン

「うぅ…」

考えようとすると頭が割れるように痛む。

「どうした?どこかまだ痛むのか?」
「あのさ…」

心配をしてくるカマエルに思い切って聞いてみた

「僕、あいつと会ったのは初めてなはずなのにどうしてかあいつは僕を知ってた…僕もあいつを知ってるような…気がする。
どうしてなんだろう。
どこかで会ったことがあるのかな…」
「ベル…」

考えれば考えるほどわからない。
でも考えることを辞めちゃいけない気がする。
もう少しでわかりそうなんだ、ずっと抱えて来た違和感に。
僕は何か大切なことをーーー

「そんなに思い詰めると体調に障る。あんな奴のことは忘れろ…
俺がそばについてやるから…」

僕の身体を支えゆっくり横たえながら
やつは言葉を紡ぐ。

その言葉が僕の思考を包むようにカマエルの声が頭の中に響く。
さっきまで必死に考えていたことがそんな大したことのないことのように感じてくる。

「さぁ、まだ体調は万全じゃないんだ。
ゆっくり休め…」

カマエルの声を子守唄に段々と眠気が襲ってくる。
優しく頭を撫でてくることの心地よさが眠気に拍車をかけ意識はするすると深層へと落ちていく。
もうまともな思考や判断はできないくらいにとろとろになって、
そうして僕の意識は途切れた。

不思議といい夢見られるかもなんて頓珍漢なこと思ってしまった。



「何も、何も思い出すな…
おやすみ、可愛い俺のベル」


やつが最後につぶやいた不穏な言葉は、すでに眠りの世界にいざなわれた俺には届かなかった。

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