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第1章
番外編1. 新年だって
しおりを挟む年始に書いていたのですが投稿の機会がなくするつもりもなかったのですが、やっぱりせっかく書いたので投稿してみました。
1話完結です。
時系列は6話あたりですが本編にあまり関係ないいつかの日のお話です。
気にせずお読みください( ⁎ᴗ ᴗ⁎ )
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あけましておめでとう」
???
いい天気だったので洗濯物を干そうと外に出たとき、
突然現れたカマエルに言われた謎の言葉。
理解しようと頑張ったが、よくわからない。
「何があけて、おめでたいんだ?」
「年があけたんだよ、おめでたいそうだ」
「年なんて毎年あけるものだろう??」
やばい、こいつが何言ってるか全然わからない。
頭の中をひっくり返してみても、年があけておめでたいと思ったことはないし、そもそも悪魔は年の感覚が鈍い。
年を数え忘れて自分が何歳かわからなくなる悪魔は多い。
なので、この年越しを祝うのは悪魔族以外の文化なのだろう。
天使族の文化っぽくはないので人族の文化なのだろうと僕は当たりをつけた。
「それは、人族の文化か?」
「よくわかったな。そうだ、人間が新年によくやる挨拶だそうだ」
やっぱり人族の文化であってたみたいだ。
だからといってなんなんだという話。
「で、どうしたんだ?」
「つれないな。あけましておめでとうと言われたら、あけましておめでとうと返すものだぞ」
そんなこと言われても僕知らないし…
突然の異界文化を押し付けないで欲しい。
なんで僕が知ってる設定なんだ。
こいつの中での僕はどうなってる。
もしかして…さっきの説明で全部説明した気になっているのでは?
ふと気付いたこいつの癖。
カマエルは1説明して相手が10わかっていると思い込む。
された側は溜まったもんじゃない。
ちゃんと1から10まで説明しろ。
今回もよく聞かないと、後出しで情報が出てくるからな。
とりあえず、あけましておめでとうと返すと聞いたから
「あけましておめでとう」と言ってみた。
それを聞いたカマエルはいつもはキリッとした目元をふっと緩め
「あぁ、今年もよろしくなベル」
「~~っ#&/○*< ?!」
「どうした?ベル?」
「あっ、いや、その…」
びっくりした!
ほんと心臓に悪い。
美青年のこいつが笑うと破壊力がとてつもないんだ。
僕にその笑顔を向けてくるのは何故だかわからないけど、きらきらに目が潰れそうになる。
慌ててあいつと距離を取ったけど、ドキドキとしてなかなか落ち着かない感情はなんだろう。
いや…ではない。
でもやだ、わからないことは怖い。
心配してくるやつをよそにうるさく鳴る心臓を抑える。
大丈夫、大丈夫。
「今年もよろしくって勝手にお前がよろしくしてくるんだろう」
「そうだな、それでも…」
途中で言葉を切ったカマエルが近づいてきてあいつの手が僕の頬に触れた。
いつもの不遜な態度からは想像もつかないほど優しい触れ方で、親指のはらが頬を滑る。
「俺は、お前・・・ベルに今年もよろしくと言われたい。
いや、毎年、これからずっとだな」
「………そ、れは」
恥ずかしい言葉をサラッと紡ぐから理解するのに時間がかかってしまった。
僕とカマエルの間に静かな時間が流れた。
でもそれは苦痛ではなくて、どのくらいかわからないけど体感では長い時間がたって
やっと絞り出した言葉はさっきまでの勢いが全くなかった。
「…勝手にしろ」
「そうか、じゃあ・・・言ってくれるな?」
さっきとは一転、目に強い光を宿したカマエルからは逃げられそうにない。
やっぱりすんなり逃してはくれないみたいだ。
しょうがない、
「今年もよろしく」
「あぁ、よくできました」
僕の頭を撫でながら、ふわっと笑うこいつの笑顔の破壊力は悪魔が裸足で逃げ出すほどだ。
「撫でるな!僕は子供じゃない!」
「つい、撫でやすい位置に頭があったからな」
「なんだと?!身長自慢か!もうお前帰れ!」
「ベルが俺のことエルって呼んでくれたら帰る」
「呼ぶ日は来ないから帰って」
カマエルは笑いながらベルをからかい、
ベルはそんなカマエルにほっぺを膨らませてぷんぷん怒っている。
それがいじらしくてカマエルがわざと怒らせていることにベルは気づかない。
カマエル本人もベルも気付いていないがカマエルの瞳がとても穏やかで、優しくベルを映していることに。
「もう、用は済んだだろ?か・え・れ!」
なかなかやつが帰らない。
ほんとこいつがいるだけで日常が騒がしくなる。
こいつのおかげで僕の心は疲労困憊だ。
でも、
こいつといる毎日がなんだかんだ僕は楽しいんだ。
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