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第1章

7.迂闊さ

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痛い…

全身がギシギシ言って、思うように体が動かない。

これは、やばいかもしれない…

必死に身体を起こそうとするが、地面に横たえたままピクリとも動かない。

せめて指先でもと思うが全くと言って良いほど身体が言うことを聞かない。

痛みでだんだん意識を保っているのも難しくなってきた。

瞼が下がってきて、薄れていく意識の中
先程の出来事が脳裏をよぎった。



***


今日のご飯は何にしようかな?
いいトマトが手に入ったからトマトカレーとかどうだろ。
ちょっと贅沢だけどたまにはいいよね。

魔界で珍しく清々しい天気だったうえ、
今日は庭で育てていたトマトが大きくて赤く色鮮やかな身をつけていたので、丁寧に収穫したあと家に帰りながらいいものが収穫できたと僕は浮き足立っていた。


だから見落としてしまっていた。
それが間違いだった。

僕の平穏に影を落とす
いつもと違う非日常の予感を。


浮き足立った僕は収穫したトマトをカゴに入れ抱えたまま、花達に報告したいなと思い花畑に向かった。
花達は僕の話をじっと聞いてくれてる気がする。だから僕もお話しすることが好きだ。


でも、今日はいつもと様子が違った。


花畑に着くと、僕は花達に今日のトマトの出来を聞いてもらってたんだ。
楽しくなっちゃって、僕に近づいてくる複数の人影に気づかなかった。

おかしいと気づいた時には周りを取り囲まれていて、怖くて、でも逃げようにも逃げられない。

そんな僕の前に立ち塞がったのは悪魔の中でも相当タチが悪いやつだった。

ここ最近は何事もなく平和だったから迂闊だった。
ここは魔界。
安息の地など本当は存在しないのだ。


「ベルくぅ~ん、こんなところで何やってるの?
まさか、悪魔とあろうものが花と遊んでた~…なぁんて、言わないよねぇ?」
「お前に関係ない。僕の名前を気安く呼ぶな」

不気味な笑みを顔に浮かべ
真ん中のリーダー格の男が近づいてくる。

悦に浸りながらねちっこくジリジリと獲物を追い詰めるようなこの悪魔の喋り方が僕は昔から嫌いだ。
それに、こんな悪魔に僕の名前を呼んでもらいたかったわけじゃない、

もっと、
ありのままの僕を認めてくれる
そう、あのバカ天使のようなーー

ハッっ!!

いけない、何故かこのままこの先を考えてはダメなような気がした。


それよりまずは、この状況からどう抜け出すかが問題だ。







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