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2店目

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さらに二時間ほど漕ぎ、県境まで来た。
少し喉も乾いたし目についたコンビニで休憩しようと思い、チャリをとめると路上生活者らしき男性がごみ箱の横に座っていた。
この人は年齢不詳だ。
二十代にもみえるし五十代にもみえる。
こんなに痩せている人を、わたしは見たことがなかった。
おせっかいとは思いつつ、ATMで一万円をおろし、コーヒーとパン三つ、下着や靴下など日用品を買ってその袋を男性に差し出した。
びっくりした顔をしていた。
正直、私自身もびっくりしていた。
さっきの変なおばあさんの影響だろうか。
男性はパンに食いつき、夢中で食べ始めた。
その姿は、なぜだかとても美しくみえた。
あっという間にパンを食べ終えてしまったので、
「まだいりますか?」
と、尋ねたら
「いや、もういい。」
と言われた。
私は美しい男性の隣に腰を下ろした。
……どれくらい時間がたっただろうか。
美しい男性がボソッとつぶやいた。
「お前は、からかわないな。」
ああ、なるほど。
確かに路上生活者は、笑いものにされやすい。
「どうしてコンビニの前にいるんですか?もっと人気のないところへいけば、笑いものにならないかもしれないのに。」
男性は鼻で笑った。
「確かに笑いものにはされないだろう。でもそうしたらどうなる? 俺はなあ、食べ物を恵んでもらわないと、生きてけねえんだ。笑いながら握り飯やパンを投げつけてくれるやつがいなきゃあ、野垂れ死になっちまうんだよ。」
路上生活者も楽じゃない。
明日が見えない中で、毎日“生”と戦っているんだ。
私はもう一度コンビニに入り、自分用のお茶のほかに、棚に並んであったおにぎりと惣菜パンを全部買い占め、美しい男性に渡していった。
「貴方は、私がこれまで会ったどんな人よりも人間らしいです。」
男性は声をあげて笑った。
気にせず続ける。
「私、両親の通帳を盗んできたんです。そのお金が終わったら貴方のような生活になるかもしれないので、よかったらアドバイスもらえませんか?」
男性は腹を抱えて笑いながら教えてくれた。
「こっちの世界では大変なことだらけだが、一番大切なのは無理に生きようとしねえことだ。生きようとしながら生きるのは、ここではちと辛すぎるからな。おれは、自分は一回死んだ人間なんだと思うようにしたな。」
無理に生きようとしないこと、か。
やっぱり当事者の言葉は身に染みる。
肝に銘じておこう。
美しい男性にお礼を言って立ち上がり、チャリを漕ぎ始めた。
後ろから
「こんなに笑ったのは久しぶりだよ。」
と声が聞こえた。
私は振り向かなかった。
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