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外の世界は思ったよりも静かだ。
そして寒い。
世の中の女子高生は、生足でよく風邪ひかないな、なんて思いながらチャリのタイヤに空気を入れる。
運動不足な私は、それだけで疲れてしまった。
空気を入れたばかりの自転車にまたがり、転ばないように慎重に坂を下る。
肌に突き刺すような寒さが心地いい。
三十分ほどあてもなくチャリを漕がせ、お腹が空いたのでコンビニでおでんを買った。
大分遅めの朝ご飯兼大分早めのお昼ご飯だ。
大好物の大根とちくわが入っていてテンションが少しだけ上がった。
ほくほくさせながら、
(これからどうしよう)
と考えていると、
「となり、いいかしら?」
と声をかけられた。
見上げると。六十歳くらいのおばあさんがにこにこしながら立っていた。
「ど、どうぞ。」
声を出すのが久しぶりだったので、少し掠れてしまったがおばあさんは気にせず
「じゃあ、失礼するわね。」
と、言って腰を下ろし、おでんとメロンパンをにこにこしながら食べ始めた。
……何とも言えない。
よく見ると、服装もなかなかだ。
カラフルなミニミニのニットワンピースにレザージャケットを羽織り、カーキのニーハイブーツをはいてカンカン帽をかぶっている。
……突っ込みどころ満載だ。
なんでさっき見たとき気が付かなかったのだろう。
おばあさんはやっぱりにこにこしながらメロンパンを頬張っている。
関わりたくない……。
そう思いそそくさと残りのおでんを口に詰め込みその場を去ろうとしたそのとき、
「ねえ待って」
呼び止められてしまった。
「すみません。急いでるので。」
断ろうとしたが、
「あら、いいじゃない。貴方学校に行ってるわけじゃなさそうだし。」
エスパーか。
仕方ないので座りなおす。
「どうして分かったんですか。私が学校行ってないって。」
にこにこしながらおばあさんは言った。
「なんでわかるんでしょうねえ。年の功というやつかしら? なんだか、張り詰めたような顔をしてる気がしてねえ、ほっとけないのよ。そういう子。」
はあ、訳が分からない。
おばあさんは続ける。
「私達の子供のころは、今みたいに便利だったわけでもなくて、生きることに必死だった時代だったからいろいろ考える余裕なんてなかったのよ。でも、今は違うじゃない? 生きるということが当たり前になってしまったから、生きることが辛くなってしまったのよね。きっと。」
難しいことをいうおばあさんだな。
「でもね、不登校ちゃん。」
なんで、不登校ちゃんと呼ばれているんだ。
「自分の好きなものがあるって、大事なことなのよ?それが他人に笑われようがいいじゃない。迷惑かけているわけじゃないんだもの。」
その格好で言われると、説得力あるな。
「時間取らせてごめんなさいね。またね不登校ちゃん。」
いつの間に食べ終わったのか、メロンパンとおでんのごみを備え付けのごみ箱に捨ててにこにこした変なおばあさんは去ってしまった。
『生きることが当たり前になったから、生きることが辛くなってしまったのよね。』
その言葉が頭から離れなかった。
けれど、私の足取りはコンビニへ入る前よリ軽くなった気がした。
そして寒い。
世の中の女子高生は、生足でよく風邪ひかないな、なんて思いながらチャリのタイヤに空気を入れる。
運動不足な私は、それだけで疲れてしまった。
空気を入れたばかりの自転車にまたがり、転ばないように慎重に坂を下る。
肌に突き刺すような寒さが心地いい。
三十分ほどあてもなくチャリを漕がせ、お腹が空いたのでコンビニでおでんを買った。
大分遅めの朝ご飯兼大分早めのお昼ご飯だ。
大好物の大根とちくわが入っていてテンションが少しだけ上がった。
ほくほくさせながら、
(これからどうしよう)
と考えていると、
「となり、いいかしら?」
と声をかけられた。
見上げると。六十歳くらいのおばあさんがにこにこしながら立っていた。
「ど、どうぞ。」
声を出すのが久しぶりだったので、少し掠れてしまったがおばあさんは気にせず
「じゃあ、失礼するわね。」
と、言って腰を下ろし、おでんとメロンパンをにこにこしながら食べ始めた。
……何とも言えない。
よく見ると、服装もなかなかだ。
カラフルなミニミニのニットワンピースにレザージャケットを羽織り、カーキのニーハイブーツをはいてカンカン帽をかぶっている。
……突っ込みどころ満載だ。
なんでさっき見たとき気が付かなかったのだろう。
おばあさんはやっぱりにこにこしながらメロンパンを頬張っている。
関わりたくない……。
そう思いそそくさと残りのおでんを口に詰め込みその場を去ろうとしたそのとき、
「ねえ待って」
呼び止められてしまった。
「すみません。急いでるので。」
断ろうとしたが、
「あら、いいじゃない。貴方学校に行ってるわけじゃなさそうだし。」
エスパーか。
仕方ないので座りなおす。
「どうして分かったんですか。私が学校行ってないって。」
にこにこしながらおばあさんは言った。
「なんでわかるんでしょうねえ。年の功というやつかしら? なんだか、張り詰めたような顔をしてる気がしてねえ、ほっとけないのよ。そういう子。」
はあ、訳が分からない。
おばあさんは続ける。
「私達の子供のころは、今みたいに便利だったわけでもなくて、生きることに必死だった時代だったからいろいろ考える余裕なんてなかったのよ。でも、今は違うじゃない? 生きるということが当たり前になってしまったから、生きることが辛くなってしまったのよね。きっと。」
難しいことをいうおばあさんだな。
「でもね、不登校ちゃん。」
なんで、不登校ちゃんと呼ばれているんだ。
「自分の好きなものがあるって、大事なことなのよ?それが他人に笑われようがいいじゃない。迷惑かけているわけじゃないんだもの。」
その格好で言われると、説得力あるな。
「時間取らせてごめんなさいね。またね不登校ちゃん。」
いつの間に食べ終わったのか、メロンパンとおでんのごみを備え付けのごみ箱に捨ててにこにこした変なおばあさんは去ってしまった。
『生きることが当たり前になったから、生きることが辛くなってしまったのよね。』
その言葉が頭から離れなかった。
けれど、私の足取りはコンビニへ入る前よリ軽くなった気がした。
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