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城の秘密Ⅰ➁
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息を殺して、ドアノブに手をかけた。腰に腕を回す。
シャツの上から、厨房でくすねた銀ナイフの感触を確かめた。
―――――…キィ…――――――
扉の開くわずかな音に、ピクリと耳が動く。
この階に上がって来る者がいることには気づいていた。
執事ではない。足音が違う。
気配を消して、探るようにこの部屋の前までやって来た。
そして今、私の部屋の戸を開く者がいる。明かりも持たずに。
暗い部屋の中を一通り見て回る。
目は徐々に薄暗さに慣れてきていた。
そうすると、ある程度、物の位置がわかってくる。
入って正面に、どっしりとした執務机。左は…本棚か?
窓は、カーテンで遮られていて、外の様子はわからない。
でも、月明かり…というより、雪明りだろう――。
うっすらとした夜光が、窓際の床を薄く染めている。カーテンの裾が膨らむ。
窓が開いている。
城の外観からすると、あそこは、バルコニーになっているはずだ。ということは——。
「眠れないのか…?」
低く落ち着いた声。まるで、寝付けない子供に問うように。
「……っ」
おれは、身を固くした。
カーテンの向こう。
冬の寒さが流れてくる向こう側に、そいつは一人で立っていた。
「……」
一歩…一歩、と近づいてくる。まだ幼く、華奢な身体。
少年は、私の姿を目にし、はじめ、目を見開いた。無理もない。
「ここへの立ち入りは、禁じていたはずだ…。ベル」
シャツの上から、厨房でくすねた銀ナイフの感触を確かめた。
―――――…キィ…――――――
扉の開くわずかな音に、ピクリと耳が動く。
この階に上がって来る者がいることには気づいていた。
執事ではない。足音が違う。
気配を消して、探るようにこの部屋の前までやって来た。
そして今、私の部屋の戸を開く者がいる。明かりも持たずに。
暗い部屋の中を一通り見て回る。
目は徐々に薄暗さに慣れてきていた。
そうすると、ある程度、物の位置がわかってくる。
入って正面に、どっしりとした執務机。左は…本棚か?
窓は、カーテンで遮られていて、外の様子はわからない。
でも、月明かり…というより、雪明りだろう――。
うっすらとした夜光が、窓際の床を薄く染めている。カーテンの裾が膨らむ。
窓が開いている。
城の外観からすると、あそこは、バルコニーになっているはずだ。ということは——。
「眠れないのか…?」
低く落ち着いた声。まるで、寝付けない子供に問うように。
「……っ」
おれは、身を固くした。
カーテンの向こう。
冬の寒さが流れてくる向こう側に、そいつは一人で立っていた。
「……」
一歩…一歩、と近づいてくる。まだ幼く、華奢な身体。
少年は、私の姿を目にし、はじめ、目を見開いた。無理もない。
「ここへの立ち入りは、禁じていたはずだ…。ベル」
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