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第10章 覇王を追撃する闇
347.すべて飲み込み叩き潰してやろう
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命令に真っ先に反応したのが、アスタルテだった。唸るような声を上げたリリアーナが続く。アスタルテは剣ではなく、魔力を魔法に変えて叩きつけた。
固まり始めたアペプの身体が、何度も爆発する。粉々に砕いて処分する意図を察したのか、リリアーナは飛び散った破片を踏み潰し、叩いた。爪で一閃した拳大の欠片が、ぺちゃりと床のシミになる。
「逃がすな!」
ヴィネの言葉に、マヤが炎でシミを蒸発させる。身を捩る悍ましい悲鳴が響いて、ヴィネは方針を固めた。
「あの2人が砕いた破片はすべて蒸発させる。残すと生き返るぞ」
「「わかった」」
殲滅戦だ。叫んだヴィネにティカルとマヤが頷く。役割分担の様子から、子供達に先を越されたウラノスが慌てて参戦した。
「ぐぉおおおお!」
出遅れたアルシエルが雄叫びをあげ、砕く側に飛び込む。その間にオレは緻密な魔法陣を組み上げた。砕いて焼く繰り返しで、殆どを潰した頃……突然大地が揺らぐ。
この世界にきて何度か地震を経験した。そのほとんどが、この黒い神アペプの仕業だろう。人の信仰心や感情を活力とする神ゆえに、足りない力を恐怖という感情から吸い上げようとした。揺らされ怯える者らを餌とみなした行為により、キララウスの大地も崩れたのであろう。
ならば、同盟国の仇か。あまりぴたりとこない報復理由だ。ずっと編み上げていた魔法陣に微力を流して確認した。オレ自身を魔法陣に組み込んだ模様が、足の下から広がる。この場を覆い尽くし、それでも足りぬと網は増幅しながら大地を覆い続けた。
「これはっ」
読み取ったウラノスが顔色を変える。それからアルシエルとリリーアナに叫んだ。
「陛下の身を命に変えてお守りしろ」
しばらく動けないと察した彼の機転で、物理的な強さで上位の2人が左右に展開する。背合わせの親子に挟まる形で、オレは細かい作業を事務的に淡々と続けた。
突然温かな魔力が触れ、増幅する。到達した魔法陣に気づいた双子だ。アナトがバアルの魔力を変換して流した。続いて彼女自身の魔力も追加される。城の守りを命じたためか、すべてを使い切ることはなかった。
きちんと計算している辺り、アナトもだいぶ成長した。かつて感情の赴くままに魔力を放出して死にかけた少女を思い出し、口元が緩む。ククルが途中で加わり、申し訳なさそうに途切れた。
無理をすれば叱られることを理解したようだ。だが一矢報いなくては納得できまい。子供達の感情が滲んだ助力を受け取り、さらに魔法陣を拡大した。
同盟国の仇、配下の不満、かつての魔王を弄んだ罪やアスタルテの因縁も――すべて飲み込んで叩き潰してやろう。それでこそ魔王――世界を統べる者の称号に相応しい。
我が身の魔力を高め、大地の地脈から吸い上げ、それでも……足りぬか。
最後の決戦になるであろう場で、誰もが満身創痍で魔力不足とはなんとも締まらぬ。
固まり始めたアペプの身体が、何度も爆発する。粉々に砕いて処分する意図を察したのか、リリアーナは飛び散った破片を踏み潰し、叩いた。爪で一閃した拳大の欠片が、ぺちゃりと床のシミになる。
「逃がすな!」
ヴィネの言葉に、マヤが炎でシミを蒸発させる。身を捩る悍ましい悲鳴が響いて、ヴィネは方針を固めた。
「あの2人が砕いた破片はすべて蒸発させる。残すと生き返るぞ」
「「わかった」」
殲滅戦だ。叫んだヴィネにティカルとマヤが頷く。役割分担の様子から、子供達に先を越されたウラノスが慌てて参戦した。
「ぐぉおおおお!」
出遅れたアルシエルが雄叫びをあげ、砕く側に飛び込む。その間にオレは緻密な魔法陣を組み上げた。砕いて焼く繰り返しで、殆どを潰した頃……突然大地が揺らぐ。
この世界にきて何度か地震を経験した。そのほとんどが、この黒い神アペプの仕業だろう。人の信仰心や感情を活力とする神ゆえに、足りない力を恐怖という感情から吸い上げようとした。揺らされ怯える者らを餌とみなした行為により、キララウスの大地も崩れたのであろう。
ならば、同盟国の仇か。あまりぴたりとこない報復理由だ。ずっと編み上げていた魔法陣に微力を流して確認した。オレ自身を魔法陣に組み込んだ模様が、足の下から広がる。この場を覆い尽くし、それでも足りぬと網は増幅しながら大地を覆い続けた。
「これはっ」
読み取ったウラノスが顔色を変える。それからアルシエルとリリーアナに叫んだ。
「陛下の身を命に変えてお守りしろ」
しばらく動けないと察した彼の機転で、物理的な強さで上位の2人が左右に展開する。背合わせの親子に挟まる形で、オレは細かい作業を事務的に淡々と続けた。
突然温かな魔力が触れ、増幅する。到達した魔法陣に気づいた双子だ。アナトがバアルの魔力を変換して流した。続いて彼女自身の魔力も追加される。城の守りを命じたためか、すべてを使い切ることはなかった。
きちんと計算している辺り、アナトもだいぶ成長した。かつて感情の赴くままに魔力を放出して死にかけた少女を思い出し、口元が緩む。ククルが途中で加わり、申し訳なさそうに途切れた。
無理をすれば叱られることを理解したようだ。だが一矢報いなくては納得できまい。子供達の感情が滲んだ助力を受け取り、さらに魔法陣を拡大した。
同盟国の仇、配下の不満、かつての魔王を弄んだ罪やアスタルテの因縁も――すべて飲み込んで叩き潰してやろう。それでこそ魔王――世界を統べる者の称号に相応しい。
我が身の魔力を高め、大地の地脈から吸い上げ、それでも……足りぬか。
最後の決戦になるであろう場で、誰もが満身創痍で魔力不足とはなんとも締まらぬ。
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