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第8章 強者の元に集え
219.口を割らぬなら引き裂くまで
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術など知らぬ――白を切るウラノスの言い分に、口元が歪んだ。笑みを作るオレに、興味深そうな表情でウラノスが首をかしげる。何も知らぬと嘯く吸血種へ、魔力が絡み付いた。拘束する魔力が反発する激痛に、ウラノスの額に汗が滲む。
「口を割らぬなら、それも良い。わかっているであろう」
裏切り者の末路は悲惨だ。
ウラノスは忠誠を口にしながら知識を隠した。オレが必要とする知識であると知りながら、クリスティーヌにしか扱えぬような口振りで誤魔化す。そこに滲む違和感を見逃してきたが、もう目を瞑ってやれる期間は過ぎた。
吸血種特有の秘儀ならば、無理に掘り起こすことはしない。だがこの魔術は他種族でも使える。根拠は、アースティルティトだった。吸血鬼の始祖である彼女が仮死状態を作り出したが、術の解除に特殊な種族や能力が必要ならば彼女は告げる。
有能な彼女が何も指示せずアナトを送った行為は、こちら側で解除する方法はさほど複雑ではなく、準備が不要だと判断したためだ。多少先走ったため、説明書より先にアナトが届いた可能性はある。空間と時間軸が狂った異世界への転送で、手順が逆になった可能性もあった。
それでも、ウラノスは隠したのだ。吸血種であるクリスティーヌしか扱えぬような口振りだが、そもそも当人が吸血種だった。自ら術の解除を施せばいい。それをハーフであるクリスティーヌに行わせたのは、失敗する可能性を考慮したため。
己が断罪される失敗を恐れたとも、失敗することを望んだとも取れた。どちらでも構わぬ。じわりと黒い魔力が少年を包んだ。首を絞め、手足の自由を奪い、魔力を搾り取る。
歯を食いしばるウラノスは、言葉を発しようとしない。誰かの命令であったのか、そんな裏話に興味はなかった。
アナトが今も動けないのは、仮死からの復元が中途半端だったから。そう仮定するなら、神族ではないククルが転送されたら死んだだろう。解除が不完全な理由を突き詰めれば、ウラノスの存在に行き着く。
魔術を使うために必要な魔力量を保有し、知識も技術も持ち得る存在が、複雑な魔術に手をこまねく理由――復活されては困るのだ。たどり着いてしまえば、後は当事者次第だった。
大人しくミスを認めて謝るなら、生かしてもいい。手元で飼い殺す程度の度量は持ち合わせているつもりだ。しかし逆らうなら……気遣う必要はあるまい?
「我が君、魔王陛下にお願いがございます」
無言で視線を向ける。指先を動かすこともなく思念だけで操る魔力は、ウラノスの指を1本ずつ潰しているところだった。末端から少しずつ、すり潰すように……痛みと苦しみに泣き叫び、許しを懇願するまで。それが魔族の拷問だ。
邪魔をするなら、獲物が1匹から2匹に増えるだけの話と笑った。銀の小蝿1匹始末するも、黒銀の蜥蜴が増えるも大した手間ではない。
「申してみよ」
くつりと喉を鳴らして促す先で、ウラノスの潰れた指が引き千切られた。激痛に身を捩るも、拘束により引き戻されたウラノスの呼吸音だけが地下牢に響き渡る。
顔を歪めた黒竜王アルシエルは、賭けに近い提案を口にした。それが招く誤解を恐れることなく……。
「口を割らぬなら、それも良い。わかっているであろう」
裏切り者の末路は悲惨だ。
ウラノスは忠誠を口にしながら知識を隠した。オレが必要とする知識であると知りながら、クリスティーヌにしか扱えぬような口振りで誤魔化す。そこに滲む違和感を見逃してきたが、もう目を瞑ってやれる期間は過ぎた。
吸血種特有の秘儀ならば、無理に掘り起こすことはしない。だがこの魔術は他種族でも使える。根拠は、アースティルティトだった。吸血鬼の始祖である彼女が仮死状態を作り出したが、術の解除に特殊な種族や能力が必要ならば彼女は告げる。
有能な彼女が何も指示せずアナトを送った行為は、こちら側で解除する方法はさほど複雑ではなく、準備が不要だと判断したためだ。多少先走ったため、説明書より先にアナトが届いた可能性はある。空間と時間軸が狂った異世界への転送で、手順が逆になった可能性もあった。
それでも、ウラノスは隠したのだ。吸血種であるクリスティーヌしか扱えぬような口振りだが、そもそも当人が吸血種だった。自ら術の解除を施せばいい。それをハーフであるクリスティーヌに行わせたのは、失敗する可能性を考慮したため。
己が断罪される失敗を恐れたとも、失敗することを望んだとも取れた。どちらでも構わぬ。じわりと黒い魔力が少年を包んだ。首を絞め、手足の自由を奪い、魔力を搾り取る。
歯を食いしばるウラノスは、言葉を発しようとしない。誰かの命令であったのか、そんな裏話に興味はなかった。
アナトが今も動けないのは、仮死からの復元が中途半端だったから。そう仮定するなら、神族ではないククルが転送されたら死んだだろう。解除が不完全な理由を突き詰めれば、ウラノスの存在に行き着く。
魔術を使うために必要な魔力量を保有し、知識も技術も持ち得る存在が、複雑な魔術に手をこまねく理由――復活されては困るのだ。たどり着いてしまえば、後は当事者次第だった。
大人しくミスを認めて謝るなら、生かしてもいい。手元で飼い殺す程度の度量は持ち合わせているつもりだ。しかし逆らうなら……気遣う必要はあるまい?
「我が君、魔王陛下にお願いがございます」
無言で視線を向ける。指先を動かすこともなく思念だけで操る魔力は、ウラノスの指を1本ずつ潰しているところだった。末端から少しずつ、すり潰すように……痛みと苦しみに泣き叫び、許しを懇願するまで。それが魔族の拷問だ。
邪魔をするなら、獲物が1匹から2匹に増えるだけの話と笑った。銀の小蝿1匹始末するも、黒銀の蜥蜴が増えるも大した手間ではない。
「申してみよ」
くつりと喉を鳴らして促す先で、ウラノスの潰れた指が引き千切られた。激痛に身を捩るも、拘束により引き戻されたウラノスの呼吸音だけが地下牢に響き渡る。
顔を歪めた黒竜王アルシエルは、賭けに近い提案を口にした。それが招く誤解を恐れることなく……。
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