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第8章 強者の元に集え
201.仲裁を終えれば仕掛けた策が動き出す
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「……そこどいて」
リリアーナの要求を、レーシーが拒否する。首を横に振ると、足元まで届く長い白髪が揺れた。両手を広げてリリアーナに抱き着いた形で、彼女はアナトに近づこうとするドラゴンを拘束する。簡単にほどけるが、無理をすればレーシーの手が千切れるため、リリアーナは溜め息をついた。
さすがにレーシーの腕を落としてまで近づくのは気が引ける。
「何をしている」
転移した部屋の中で、レーシーの後ろに現れた。アナトを背に庇う位置で、リリアーナを抱き締めるレーシーに首をかしげる。睨み合っていると報告されたのに、随分と状況が違った。
様々な意味を込めた問いかけに、リリアーナが反応した。
「レーシーが邪魔する!」
何を邪魔したのかで、どちらを咎めるかが変わる。リリアーナがアナトを害するつもりなら、止めたレーシーが正しい。しかしただ会いに来ただけなら、過剰反応したレーシーを引き離さなくてはならなかった。この状態を見るだけでは、どちらとも判断が出来ない。
「レーシー、リリアーナを離せ」
悲しそうな声で鳴いたレーシーは、おろおろと後ろを向いた。リリアーナから手を離したが、この場所を譲る気はないらしい。オレとアナトを交互に見て、ハーレムの雄の命令に従うか迷っている。なぜかアナトを守る気の彼女を放置して、溜め息をついたリリアーナに向き直った。
「アナトに用があったのか?」
「うん」
素直に頷くリリアーナは、ぼそぼそと小声で説明を始めた。
「あのね、ヴィラとローザに相談した。そしたら前の世界から来た子が、どうしたいか確認しようってなった。聞きに来たら、レーシーに抱き着かれたの。私が近づくのが嫌みたい」
他人のせいにするでもなく、淡々と語るリリアーナは肩を落とした。自分がアナトに危害を加えに来たと捉えられたのがショックだったらしい。オレを呼びに来たクリスティーヌがしょんぼりと項垂れる。彼女も同様に感じていたのだろう。申し訳なさそうに両手をもじもじと絡めた。
「そうか。元は誤解なのだから、遺恨は残すな」
言い聞かせて、飛びついてきたリリアーナの金髪を撫でてやる。ぐりぐりと頭を擦りつけるリリアーナは頷いた。クリスティーヌも「ごめんなさい、リリー」と謝って後ろから抱き着いた。羨ましくなったのか、レーシーも寄ってきてぴたりと左側に張りつく。
「陛下、こちらに……っ、失礼しました」
オレを探した様子のアガレスが、開いたままの扉から入ってきて慌てて踵を返した。見てはいけない物を見た反応だが、彼の行動の意味が理解できない。配下のケンカの仲裁なのだから。
「何か報告か?」
「は、はい。同盟国テッサリアへ、ユーダリルが侵攻を始めました」
「やっと動いたか」
待っていた報告に、オレの口元が緩む。ユーダリルが未だに軍事同盟を持ち掛けてこない時点で、他の同盟相手を見つけたと判断した。ならば欲望のままに略奪する相手は、穏やかな農耕民族であるテッサリアしかない。見え透いた策に手を拱くはずもなく、部屋を出た廊下で待つ宰相へ次の一手を指示した。
リリアーナの要求を、レーシーが拒否する。首を横に振ると、足元まで届く長い白髪が揺れた。両手を広げてリリアーナに抱き着いた形で、彼女はアナトに近づこうとするドラゴンを拘束する。簡単にほどけるが、無理をすればレーシーの手が千切れるため、リリアーナは溜め息をついた。
さすがにレーシーの腕を落としてまで近づくのは気が引ける。
「何をしている」
転移した部屋の中で、レーシーの後ろに現れた。アナトを背に庇う位置で、リリアーナを抱き締めるレーシーに首をかしげる。睨み合っていると報告されたのに、随分と状況が違った。
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「レーシーが邪魔する!」
何を邪魔したのかで、どちらを咎めるかが変わる。リリアーナがアナトを害するつもりなら、止めたレーシーが正しい。しかしただ会いに来ただけなら、過剰反応したレーシーを引き離さなくてはならなかった。この状態を見るだけでは、どちらとも判断が出来ない。
「レーシー、リリアーナを離せ」
悲しそうな声で鳴いたレーシーは、おろおろと後ろを向いた。リリアーナから手を離したが、この場所を譲る気はないらしい。オレとアナトを交互に見て、ハーレムの雄の命令に従うか迷っている。なぜかアナトを守る気の彼女を放置して、溜め息をついたリリアーナに向き直った。
「アナトに用があったのか?」
「うん」
素直に頷くリリアーナは、ぼそぼそと小声で説明を始めた。
「あのね、ヴィラとローザに相談した。そしたら前の世界から来た子が、どうしたいか確認しようってなった。聞きに来たら、レーシーに抱き着かれたの。私が近づくのが嫌みたい」
他人のせいにするでもなく、淡々と語るリリアーナは肩を落とした。自分がアナトに危害を加えに来たと捉えられたのがショックだったらしい。オレを呼びに来たクリスティーヌがしょんぼりと項垂れる。彼女も同様に感じていたのだろう。申し訳なさそうに両手をもじもじと絡めた。
「そうか。元は誤解なのだから、遺恨は残すな」
言い聞かせて、飛びついてきたリリアーナの金髪を撫でてやる。ぐりぐりと頭を擦りつけるリリアーナは頷いた。クリスティーヌも「ごめんなさい、リリー」と謝って後ろから抱き着いた。羨ましくなったのか、レーシーも寄ってきてぴたりと左側に張りつく。
「陛下、こちらに……っ、失礼しました」
オレを探した様子のアガレスが、開いたままの扉から入ってきて慌てて踵を返した。見てはいけない物を見た反応だが、彼の行動の意味が理解できない。配下のケンカの仲裁なのだから。
「何か報告か?」
「は、はい。同盟国テッサリアへ、ユーダリルが侵攻を始めました」
「やっと動いたか」
待っていた報告に、オレの口元が緩む。ユーダリルが未だに軍事同盟を持ち掛けてこない時点で、他の同盟相手を見つけたと判断した。ならば欲望のままに略奪する相手は、穏やかな農耕民族であるテッサリアしかない。見え透いた策に手を拱くはずもなく、部屋を出た廊下で待つ宰相へ次の一手を指示した。
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