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第7章 踊る道化の足元は
185.望む未来への布石を、まず一手
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「あの子は違う、正妻じゃない」
もし正妻に据える女性が来たなら、魔王サタンはそう告げるはず。リリアーナの指摘に、オリヴィエラは頷いた。
「ええ、あの方は違うでしょう。養い子だったと仰いました。養女扱いだと思いますけれど……」
濁した後半部分に「残る3人の中に妻がいないとは限らない」そう滲ませたオリヴィエラに、リリアーナはぎゅっと拳を握った。強い雄の子を宿すのは、竜の雌にとって最高の栄誉だ。まだ実力が足りないけれど、必ず隣に立つ力を手にする覚悟はあった。そのための努力も惜しむ気はない。
ウラノスの授業をおとなしく受けているのは、魔王サタンの正妻に相応しい知識と力を身につけるため。ロゼマリアの淑女教育を受けるのは、彼の隣で微笑む未来を手にするため。
「絶対に譲らない」
たとえ、戦うことになろうと。それでサタンが口出しするとは思えなかった。あれだけ強い雄なら、ふさわしい雌が妻になるべきだ。もし異世界の妻より強ければ、私が選んでもらえるはず。
「ローザも私も側妃で満足だけれど、それは正妻がリリアーナ様だった場合の話でしょう?」
自らと友人の地位や未来を、リリアーナの強さに賭けると告げたグリフォンへ、黒竜の少女は大きく頷いた。
「わかった。話は終わり?」
「ええ、向こうから来る方々には気をつけましょう」
大きく頷いたリリアーナが、隣でうとうとしていたクリスティーヌの肩を叩く。慌てて起きたクリスティーヌと手を繋ぎ、尻尾を振りながらリリアーナが廊下へ向かう。
「あの子はどうするの?」
思い出したように尋ねる。正妻ならば、他の妃に気を使うものだと習ったのを思い出したのだ。帝王学のような勉強は苦手だが、リリアーナなりに必死にこなしていた。少しずつ努力が身についてきた少女は、褐色の肌にかかる金髪をかき上げながら首をかしげる。
自らの髪に使っていたリボンを解いたロゼマリアが、そのリボンでリリアーナの髪を高い位置で結えた。嬉しそうに礼をいうリリアーナへ、ロゼマリアは言葉を選んで伝える。
「アナト様は私とヴィラが見ておりますわ。もし目覚めたらお伝えしますわね」
「お願いね」
機嫌よく尻尾を振り、友人の吸血鬼の手を引くドラゴンが居なくなると、ロゼマリアは眉根を寄せた。
「ヴィラ、なぜあのように煽ることを言うのですか。リリー様が不安になるでしょう」
「不安で済めばいいけれど、もし現実になったら? 今のうちに覚悟をしておくほうがいいわ。そうしたら対処方法も考えられるもの」
肩を竦めて悪びれた様子なく呟くオリヴィエラにとって、これは死活問題なのだ。異世界からサタンの正妻がくれば、リリアーナは地位が下がる。彼女だけの問題ではなかった。
こちらで最強種とされる黒竜のリリアーナが下に位置づけられれば、グリフォンのオリヴィエラや人間のロゼマリアはさらに下だ。魔族にとって、上位の者に逆らう下位は排除されても仕方ない。これは後宮の権力争いそのものだった。
主君の寵愛を求め、誰もが上位を目指す――リリアーナを頂点に押し上げなければ……私はともかく、人間であるロゼマリアの安全が確保できない。大切な親友に位置付ける金髪の少女に近づき、オリヴィエラはそっと抱きしめた。
「あなたを失う未来が来るなら、私は足掻いてみせるわ」
*************************************************************
本日より新作ラブコメ公開です。
『聖女なんて破廉恥な役目、全力でお断りします!』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/470462601/994381955
誤解が誤解を呼んで混乱する展開、ハッピーエンド確定です。
もし正妻に据える女性が来たなら、魔王サタンはそう告げるはず。リリアーナの指摘に、オリヴィエラは頷いた。
「ええ、あの方は違うでしょう。養い子だったと仰いました。養女扱いだと思いますけれど……」
濁した後半部分に「残る3人の中に妻がいないとは限らない」そう滲ませたオリヴィエラに、リリアーナはぎゅっと拳を握った。強い雄の子を宿すのは、竜の雌にとって最高の栄誉だ。まだ実力が足りないけれど、必ず隣に立つ力を手にする覚悟はあった。そのための努力も惜しむ気はない。
ウラノスの授業をおとなしく受けているのは、魔王サタンの正妻に相応しい知識と力を身につけるため。ロゼマリアの淑女教育を受けるのは、彼の隣で微笑む未来を手にするため。
「絶対に譲らない」
たとえ、戦うことになろうと。それでサタンが口出しするとは思えなかった。あれだけ強い雄なら、ふさわしい雌が妻になるべきだ。もし異世界の妻より強ければ、私が選んでもらえるはず。
「ローザも私も側妃で満足だけれど、それは正妻がリリアーナ様だった場合の話でしょう?」
自らと友人の地位や未来を、リリアーナの強さに賭けると告げたグリフォンへ、黒竜の少女は大きく頷いた。
「わかった。話は終わり?」
「ええ、向こうから来る方々には気をつけましょう」
大きく頷いたリリアーナが、隣でうとうとしていたクリスティーヌの肩を叩く。慌てて起きたクリスティーヌと手を繋ぎ、尻尾を振りながらリリアーナが廊下へ向かう。
「あの子はどうするの?」
思い出したように尋ねる。正妻ならば、他の妃に気を使うものだと習ったのを思い出したのだ。帝王学のような勉強は苦手だが、リリアーナなりに必死にこなしていた。少しずつ努力が身についてきた少女は、褐色の肌にかかる金髪をかき上げながら首をかしげる。
自らの髪に使っていたリボンを解いたロゼマリアが、そのリボンでリリアーナの髪を高い位置で結えた。嬉しそうに礼をいうリリアーナへ、ロゼマリアは言葉を選んで伝える。
「アナト様は私とヴィラが見ておりますわ。もし目覚めたらお伝えしますわね」
「お願いね」
機嫌よく尻尾を振り、友人の吸血鬼の手を引くドラゴンが居なくなると、ロゼマリアは眉根を寄せた。
「ヴィラ、なぜあのように煽ることを言うのですか。リリー様が不安になるでしょう」
「不安で済めばいいけれど、もし現実になったら? 今のうちに覚悟をしておくほうがいいわ。そうしたら対処方法も考えられるもの」
肩を竦めて悪びれた様子なく呟くオリヴィエラにとって、これは死活問題なのだ。異世界からサタンの正妻がくれば、リリアーナは地位が下がる。彼女だけの問題ではなかった。
こちらで最強種とされる黒竜のリリアーナが下に位置づけられれば、グリフォンのオリヴィエラや人間のロゼマリアはさらに下だ。魔族にとって、上位の者に逆らう下位は排除されても仕方ない。これは後宮の権力争いそのものだった。
主君の寵愛を求め、誰もが上位を目指す――リリアーナを頂点に押し上げなければ……私はともかく、人間であるロゼマリアの安全が確保できない。大切な親友に位置付ける金髪の少女に近づき、オリヴィエラはそっと抱きしめた。
「あなたを失う未来が来るなら、私は足掻いてみせるわ」
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本日より新作ラブコメ公開です。
『聖女なんて破廉恥な役目、全力でお断りします!』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/470462601/994381955
誤解が誤解を呼んで混乱する展開、ハッピーエンド確定です。
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