139 / 438
第6章 取捨選択は強者の権利だ
137.どうせ死ぬ獲物なら遊んでもいい?
しおりを挟む
せっかく流れ着いた豊かな国で、適当に女を見繕ったら捕まった。どうやら金持ちの娘が興味半分でうろついていたらしい。それだけこの国は平和だということか。グリュポスからの難民に紛れて入り込むことに成功したが、両手をしっかり拘束された状況は予定外だった。
「くそっ」
「大人しくしろ」
牢があるからと城へ連れていかれる。これは想像しなかった事態だが、幸運なのだと口元を緩めた。城内に入ってしまえば、金目の物があちこちにある。後宮へ入り込んで、側室の一人でも誑かせば一生苦労せずに暮らせるだろう。
真面目に働いて死んでいくなど、愚か者がすることだ。出来るだけ楽をして、うまい物を食べ、気に入った女を次々と交換で抱きながら生きるのがいい。引きずる衛兵が、城門の中から現れた別の兵士に男を引き渡した。罪状は書面で渡されたらしく、内容の引継ぎは聞こえない。
緩む表情を引き締め、綱を受け継いだ兵士に促されて歩き出した。
「それ、獲物?」
「いいえ、リリアーナ様。これは罪人ですので、牢に入れます」
幼い声が拙い言葉で尋ね、兵士は丁寧に応対した。つまり王族か貴族の娘だろう。しかし俯かされた視線の先に、ドレスの裾やレースが見えない。それどころか素足で歩いていた。褐色の肌を持つ少女は、しゃがみこんで下から男の顔を覗く。
「ふーん。牢に入れても、死ぬ。遊んでいい?」
「私の職分では許可を出せません。アガレス宰相閣下にお願いしてはいかがでしょうか」
「アガレス、聞いてくる」
綺麗な顔をした子供は金髪だった。褐色の肌に金髪は珍しく、あの外見だけでも高く売れる。あの年齢なら処女だろう。奴隷として売るなら、手をつけない方が高く売れるが……なに、味見してからでも構わない。多少の値下がりを覚悟すればいい話だった。
ぺたぺた足音をさせて走っていく白いワンピースの彼女を、耳から聞こえる音だけで想像した。しゃがんだ際に胸のふくらみは足りなかったが、そういう子供を好む輩は山ほどいる。差し当たって、ユーダリルの将軍の一人が幼女趣味だったはず。
売却先の当てを思い浮かべながら、男は頭を押さえつけらえていた。だから彼は見ていない。白いワンピース姿の金髪少女に、立派な鱗のある尻尾が生えていたことを……。
城内に駆けこんだリリアーナは急いでいた。遊べそうな獲物が来たのに、逃がしてしまったらもったいない。どうせだから、妹分のクリスティーヌも誘ってやらなくては。忙しく走る彼女の注意力は散漫だった。廊下の先を曲がったところで、反対から歩いてきた人物にぶつかってしまう。
「う、ごめん」
「リリアーナか。悪かったな」
歩きながら読んでいた書類を収納へ放り込み、咄嗟にリリアーナの腕を掴む。危うく尻もちをつくところだった少女は、ほっとした顔で腕に抱き着いた。
「サタン様、獲物、門にいた。欲しい。アガレスの許可、いる?」
端的な表現をくっつけて「城門にいた獲物が欲しいのだが、アガレスの許可が必要だ」と翻訳する。宰相の許可が必要となり、門まで連れてきたなら罪人だろう。リリアーナもそう理解したから、獲物と表現した。追いかけまわして遊ぶ猫のような習性をもつドラゴンは、金瞳を輝かせて待っている。
断られるなど、想像もしていないに違いない。彼女の期待に満ちた視線を受け止め、腕を絡めた彼女を連れて門へ足を向けた。彼女に与えたらボロボロになるまで遊ぶため、先に罪状を聞いておく必要がある。罰と罪は釣り合っていなくてはならないのだから――。
「くそっ」
「大人しくしろ」
牢があるからと城へ連れていかれる。これは想像しなかった事態だが、幸運なのだと口元を緩めた。城内に入ってしまえば、金目の物があちこちにある。後宮へ入り込んで、側室の一人でも誑かせば一生苦労せずに暮らせるだろう。
真面目に働いて死んでいくなど、愚か者がすることだ。出来るだけ楽をして、うまい物を食べ、気に入った女を次々と交換で抱きながら生きるのがいい。引きずる衛兵が、城門の中から現れた別の兵士に男を引き渡した。罪状は書面で渡されたらしく、内容の引継ぎは聞こえない。
緩む表情を引き締め、綱を受け継いだ兵士に促されて歩き出した。
「それ、獲物?」
「いいえ、リリアーナ様。これは罪人ですので、牢に入れます」
幼い声が拙い言葉で尋ね、兵士は丁寧に応対した。つまり王族か貴族の娘だろう。しかし俯かされた視線の先に、ドレスの裾やレースが見えない。それどころか素足で歩いていた。褐色の肌を持つ少女は、しゃがみこんで下から男の顔を覗く。
「ふーん。牢に入れても、死ぬ。遊んでいい?」
「私の職分では許可を出せません。アガレス宰相閣下にお願いしてはいかがでしょうか」
「アガレス、聞いてくる」
綺麗な顔をした子供は金髪だった。褐色の肌に金髪は珍しく、あの外見だけでも高く売れる。あの年齢なら処女だろう。奴隷として売るなら、手をつけない方が高く売れるが……なに、味見してからでも構わない。多少の値下がりを覚悟すればいい話だった。
ぺたぺた足音をさせて走っていく白いワンピースの彼女を、耳から聞こえる音だけで想像した。しゃがんだ際に胸のふくらみは足りなかったが、そういう子供を好む輩は山ほどいる。差し当たって、ユーダリルの将軍の一人が幼女趣味だったはず。
売却先の当てを思い浮かべながら、男は頭を押さえつけらえていた。だから彼は見ていない。白いワンピース姿の金髪少女に、立派な鱗のある尻尾が生えていたことを……。
城内に駆けこんだリリアーナは急いでいた。遊べそうな獲物が来たのに、逃がしてしまったらもったいない。どうせだから、妹分のクリスティーヌも誘ってやらなくては。忙しく走る彼女の注意力は散漫だった。廊下の先を曲がったところで、反対から歩いてきた人物にぶつかってしまう。
「う、ごめん」
「リリアーナか。悪かったな」
歩きながら読んでいた書類を収納へ放り込み、咄嗟にリリアーナの腕を掴む。危うく尻もちをつくところだった少女は、ほっとした顔で腕に抱き着いた。
「サタン様、獲物、門にいた。欲しい。アガレスの許可、いる?」
端的な表現をくっつけて「城門にいた獲物が欲しいのだが、アガレスの許可が必要だ」と翻訳する。宰相の許可が必要となり、門まで連れてきたなら罪人だろう。リリアーナもそう理解したから、獲物と表現した。追いかけまわして遊ぶ猫のような習性をもつドラゴンは、金瞳を輝かせて待っている。
断られるなど、想像もしていないに違いない。彼女の期待に満ちた視線を受け止め、腕を絡めた彼女を連れて門へ足を向けた。彼女に与えたらボロボロになるまで遊ぶため、先に罪状を聞いておく必要がある。罰と罪は釣り合っていなくてはならないのだから――。
0
お気に入りに追加
1,032
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる