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第6章 取捨選択は強者の権利だ
137.どうせ死ぬ獲物なら遊んでもいい?
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せっかく流れ着いた豊かな国で、適当に女を見繕ったら捕まった。どうやら金持ちの娘が興味半分でうろついていたらしい。それだけこの国は平和だということか。グリュポスからの難民に紛れて入り込むことに成功したが、両手をしっかり拘束された状況は予定外だった。
「くそっ」
「大人しくしろ」
牢があるからと城へ連れていかれる。これは想像しなかった事態だが、幸運なのだと口元を緩めた。城内に入ってしまえば、金目の物があちこちにある。後宮へ入り込んで、側室の一人でも誑かせば一生苦労せずに暮らせるだろう。
真面目に働いて死んでいくなど、愚か者がすることだ。出来るだけ楽をして、うまい物を食べ、気に入った女を次々と交換で抱きながら生きるのがいい。引きずる衛兵が、城門の中から現れた別の兵士に男を引き渡した。罪状は書面で渡されたらしく、内容の引継ぎは聞こえない。
緩む表情を引き締め、綱を受け継いだ兵士に促されて歩き出した。
「それ、獲物?」
「いいえ、リリアーナ様。これは罪人ですので、牢に入れます」
幼い声が拙い言葉で尋ね、兵士は丁寧に応対した。つまり王族か貴族の娘だろう。しかし俯かされた視線の先に、ドレスの裾やレースが見えない。それどころか素足で歩いていた。褐色の肌を持つ少女は、しゃがみこんで下から男の顔を覗く。
「ふーん。牢に入れても、死ぬ。遊んでいい?」
「私の職分では許可を出せません。アガレス宰相閣下にお願いしてはいかがでしょうか」
「アガレス、聞いてくる」
綺麗な顔をした子供は金髪だった。褐色の肌に金髪は珍しく、あの外見だけでも高く売れる。あの年齢なら処女だろう。奴隷として売るなら、手をつけない方が高く売れるが……なに、味見してからでも構わない。多少の値下がりを覚悟すればいい話だった。
ぺたぺた足音をさせて走っていく白いワンピースの彼女を、耳から聞こえる音だけで想像した。しゃがんだ際に胸のふくらみは足りなかったが、そういう子供を好む輩は山ほどいる。差し当たって、ユーダリルの将軍の一人が幼女趣味だったはず。
売却先の当てを思い浮かべながら、男は頭を押さえつけらえていた。だから彼は見ていない。白いワンピース姿の金髪少女に、立派な鱗のある尻尾が生えていたことを……。
城内に駆けこんだリリアーナは急いでいた。遊べそうな獲物が来たのに、逃がしてしまったらもったいない。どうせだから、妹分のクリスティーヌも誘ってやらなくては。忙しく走る彼女の注意力は散漫だった。廊下の先を曲がったところで、反対から歩いてきた人物にぶつかってしまう。
「う、ごめん」
「リリアーナか。悪かったな」
歩きながら読んでいた書類を収納へ放り込み、咄嗟にリリアーナの腕を掴む。危うく尻もちをつくところだった少女は、ほっとした顔で腕に抱き着いた。
「サタン様、獲物、門にいた。欲しい。アガレスの許可、いる?」
端的な表現をくっつけて「城門にいた獲物が欲しいのだが、アガレスの許可が必要だ」と翻訳する。宰相の許可が必要となり、門まで連れてきたなら罪人だろう。リリアーナもそう理解したから、獲物と表現した。追いかけまわして遊ぶ猫のような習性をもつドラゴンは、金瞳を輝かせて待っている。
断られるなど、想像もしていないに違いない。彼女の期待に満ちた視線を受け止め、腕を絡めた彼女を連れて門へ足を向けた。彼女に与えたらボロボロになるまで遊ぶため、先に罪状を聞いておく必要がある。罰と罪は釣り合っていなくてはならないのだから――。
「くそっ」
「大人しくしろ」
牢があるからと城へ連れていかれる。これは想像しなかった事態だが、幸運なのだと口元を緩めた。城内に入ってしまえば、金目の物があちこちにある。後宮へ入り込んで、側室の一人でも誑かせば一生苦労せずに暮らせるだろう。
真面目に働いて死んでいくなど、愚か者がすることだ。出来るだけ楽をして、うまい物を食べ、気に入った女を次々と交換で抱きながら生きるのがいい。引きずる衛兵が、城門の中から現れた別の兵士に男を引き渡した。罪状は書面で渡されたらしく、内容の引継ぎは聞こえない。
緩む表情を引き締め、綱を受け継いだ兵士に促されて歩き出した。
「それ、獲物?」
「いいえ、リリアーナ様。これは罪人ですので、牢に入れます」
幼い声が拙い言葉で尋ね、兵士は丁寧に応対した。つまり王族か貴族の娘だろう。しかし俯かされた視線の先に、ドレスの裾やレースが見えない。それどころか素足で歩いていた。褐色の肌を持つ少女は、しゃがみこんで下から男の顔を覗く。
「ふーん。牢に入れても、死ぬ。遊んでいい?」
「私の職分では許可を出せません。アガレス宰相閣下にお願いしてはいかがでしょうか」
「アガレス、聞いてくる」
綺麗な顔をした子供は金髪だった。褐色の肌に金髪は珍しく、あの外見だけでも高く売れる。あの年齢なら処女だろう。奴隷として売るなら、手をつけない方が高く売れるが……なに、味見してからでも構わない。多少の値下がりを覚悟すればいい話だった。
ぺたぺた足音をさせて走っていく白いワンピースの彼女を、耳から聞こえる音だけで想像した。しゃがんだ際に胸のふくらみは足りなかったが、そういう子供を好む輩は山ほどいる。差し当たって、ユーダリルの将軍の一人が幼女趣味だったはず。
売却先の当てを思い浮かべながら、男は頭を押さえつけらえていた。だから彼は見ていない。白いワンピース姿の金髪少女に、立派な鱗のある尻尾が生えていたことを……。
城内に駆けこんだリリアーナは急いでいた。遊べそうな獲物が来たのに、逃がしてしまったらもったいない。どうせだから、妹分のクリスティーヌも誘ってやらなくては。忙しく走る彼女の注意力は散漫だった。廊下の先を曲がったところで、反対から歩いてきた人物にぶつかってしまう。
「う、ごめん」
「リリアーナか。悪かったな」
歩きながら読んでいた書類を収納へ放り込み、咄嗟にリリアーナの腕を掴む。危うく尻もちをつくところだった少女は、ほっとした顔で腕に抱き着いた。
「サタン様、獲物、門にいた。欲しい。アガレスの許可、いる?」
端的な表現をくっつけて「城門にいた獲物が欲しいのだが、アガレスの許可が必要だ」と翻訳する。宰相の許可が必要となり、門まで連れてきたなら罪人だろう。リリアーナもそう理解したから、獲物と表現した。追いかけまわして遊ぶ猫のような習性をもつドラゴンは、金瞳を輝かせて待っている。
断られるなど、想像もしていないに違いない。彼女の期待に満ちた視線を受け止め、腕を絡めた彼女を連れて門へ足を向けた。彼女に与えたらボロボロになるまで遊ぶため、先に罪状を聞いておく必要がある。罰と罪は釣り合っていなくてはならないのだから――。
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