【完結】絶対神の愛し子 ~色違いで生まれた幼子は愛を知る~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
73 / 105

73.お前のせいだぞ!

しおりを挟む
 メリクと一緒にいると、重いのが消えていく。僕に見えるメリクは何かがくっついてる。それが消えて軽くなった感じだ。メリクが痛くなさそうで良かった。

 たくさん近くにいたら、きっと全部消えるよね。そう思うから、抱っこも手を繋いで歩くのも楽しかった。

「お前のせいだぞ!」

 花を眺めていた僕に、突然話しかける人が来るまで。僕は何も知らなかった。その人は赤い髪だけど、目の色は緑色だ。こないだの夢の人とは違う。でも似ているな、と思った。

「お前が現れたから、だから……リザベル様がっ!」

 僕に向かって光る何かを振り翳した。精霊が大騒ぎして集まってくる。それを振り払うように乱暴に手を動かした男の人は、僕に光を突き立てた。ちくっとする。でも叩かれた時より痛くないや。

 にゃーが突進して、男の人を引き離す。刺さった光はそのままだけど、僕は迷いながら手を触れた。これは抜いた方がいいと思う。メリクが見たら、きっと泣いちゃうから。

「もう泣きそうだ。痛いか、イル」

 僕より痛そうな顔をするメリクが、そっと抱き上げた。刺さった光を自分で引っ張る。ぽんと抜けた。先が刺さる形だけど、棒みたい。

「っ! イル? 本当に、痛くないのか?」

 僕の気持ちが通じたみたいで、メリクは不思議そうな顔をする。僕が知ってるのは、綺麗な花を摘んだら手に何か刺さった時だけ。にゃーが舐めて取ってくれた。取れるまで痛かったけど、この棒は平気だよ。

 最初だけちくっとして、後は全然痛くなかった。だから平気と頷く。メリクは僕が握った棒を受け取る。そうしたら、メリクの手がじゅっ! と痛そうな音を出した。

「メリク、やっ!」

 痛いのやだ! 痛いと感じたメリクの気持ちが僕に伝わる。すぐに棒を捨てたけど、手は赤くなっていた。ぽたりと赤い血が垂れる。

「う、わぁああん」

 泣いても仕方ないのに、メリクの手が赤いのが怖くて。痛そうで、涙と声が溢れた。鼻を啜りながら目を擦り、メリクの手に顔を寄せる。

「イル?」

 呼ぶ声に返事をせず、ぺろりと舐めた。慌てて手を引っ込めるメリクの腕を掴んで、もう一度舐める。だって、僕の手にチクチクが刺さった時、にゃーが舐めたら取れた。きっとこの痛いのも、舐めたら消えると思う。

「イル、大丈夫。少ししたら消えるから」

 話すメリクの声は優しい。でも心配だった。顔を上げた僕の目に、にゃーが飛ばされるのが見える。転がるにゃーが立ち上がり、睨みつけると男の人が燃えた。

「侵入者ですって? よくも私のメンツを潰してくれたじゃない」

 ルミエルが空に浮いていて、でも背中に羽がない。そのまま男の人を指差して何かしたら、消えてしまった。目を見開く僕に、メリクが「何もなかった」と言いながら手で隠す。その手にあった傷は、もう残ってなかった。

「おてて、なおった?」

「ああ、痛いのもイルのおかげで消えた」

 安心して大きく息を吐いたら、体が動かない。変なの。

「ルミエルやにゃーが助けてくれたから、後でお礼を言おうな」

「うん」

 頷いて、家の中に入る。もうここは安全じゃないとか、もっと頑丈にしようとか。メリクは呟きながら、僕の黒髪を撫でてくれた。

 僕、あの人に何かしたのかな。僕のせいだって叫んでいた。それが気になって、僕は自分の親指を咥えて唇を尖らせる。泣きたくなった僕に、メリクがたくさんのキスをくれた。
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

処理中です...