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67.僕のお仕事は大きくなること
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綺麗な世界を見て、たくさんお土産も選んだ。拾ったり採ったり、とても楽しかったの。木の中にあるお部屋も素敵だけど、僕はお家が気になっていた。にゃーは一人でご飯を食べてるのかな。寂しいと思う。しばらく来られないと言ったけど、ルミエルが訪ねてきたらどうしよう。
「気になるのか?」
「……うん」
メリクは少し考えてから、にっこり笑った。
「じゃあ、こうしよう。ルミエルは連絡をしておくよ。帰る日がわかれば、彼女も予定を合わせやすいだろう?」
僕がお家に帰る日を、ルミエルが知ってれば平気だね。頷いた僕の頭を撫でながら、メリクがにゃーの話を続けた。
「にゃーは仕事をしているんだ。コテツと同じだな」
「しごと」
立派なんだね。にゃーもコテツもお仕事をしているんだ。僕は何のお仕事が出来るだろう。
「前にも言っただろ。俺の側でいろいろ覚えて、大きく成長するのがイルの仕事だ」
「分かった」
メリクが指を鳴らすと、昨日乗った小舟が現れる。すごいんだ、僕も出来るように早く大きくならなくちゃ。大人になったら、してみたいことがいっぱいだ。
「ずっと子どもでもいいけどな」
ぼそっとメリクが変なことを言った。僕がずっと子どもだと、お仕事出来てないことになるよ? メリクも大変だと思うの。でもいいんだよって笑う。それが何だか擽ったい感じで嬉しかった。僕はこのままでいいんだね。
「ああ、イルは今のままでも凄く可愛いよ」
「ありがとう、メリク」
小さな舟に乗って、近くの枝から果物をもらう。ちゃんと「ちょうだい」と「ありがとう」をしたよ。枝が寄ってきて、僕のお膝に果物をくれたんだ。持って振り返った僕に、メリクが皮を剥いてくれる。とんとんとノックしたら、皮がいなくなった。中身はピンク色で、黄色い粒が入ってる。
「黄色いのは種だから、下に落とすとまた生えて来るぞ」
「そうなの?」
じゃあ、僕も誰かが黒い種を落としたのかもしれない。それで地面から生えてきたんだ! くすくす笑うメリクが「そうだな」と頬を撫でる。黄色い種を舟から投げて、僕はピンクを齧った。凄く甘くて美味しい。メリクと半分にしたけど、いいのかな。体が小さい僕より、メリクの方がお腹空くと思う。
「平気だよ、それに大きくなる途中のイルはたくさん食べないと」
もうひとつ果物を受け取って、そっちも開けてもらう。今度は黄色くて種がなかった。
「種は真ん中にあるから、気を付けろ」
真ん中を齧らないように食べてみたら、本当に大きいのが一つだけ入ってた。黒い種だよ。
「これ、僕が入ってるのかな」
「イルはもう入ってないと思うぞ」
首をかしげた僕を膝に乗せたメリクの舟は、空を飛んでいく。空は青いのに、突然変な音がした。ごろごろって大きな音で、メリクが僕を上から隠す。ドンッと大きな音で、メリクがチッと口の中で音を立てた。
「ったく! あぶねぇだろうが!!」
いつもと違う怒鳴り声で、メリクが空へ叫んだ。僕を抱っこして舟の上に立っている。メリクが睨む先、空の上の方に誰かがいるみたい。ゼルクくらいの大きさの人……。
僕はにっこり笑って手を振った。ルミエルに教えてもらったんだ、可愛い女の子はそうやって周りの人を幸せにするんだって。僕にも出来るといいな。
「気になるのか?」
「……うん」
メリクは少し考えてから、にっこり笑った。
「じゃあ、こうしよう。ルミエルは連絡をしておくよ。帰る日がわかれば、彼女も予定を合わせやすいだろう?」
僕がお家に帰る日を、ルミエルが知ってれば平気だね。頷いた僕の頭を撫でながら、メリクがにゃーの話を続けた。
「にゃーは仕事をしているんだ。コテツと同じだな」
「しごと」
立派なんだね。にゃーもコテツもお仕事をしているんだ。僕は何のお仕事が出来るだろう。
「前にも言っただろ。俺の側でいろいろ覚えて、大きく成長するのがイルの仕事だ」
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「ああ、イルは今のままでも凄く可愛いよ」
「ありがとう、メリク」
小さな舟に乗って、近くの枝から果物をもらう。ちゃんと「ちょうだい」と「ありがとう」をしたよ。枝が寄ってきて、僕のお膝に果物をくれたんだ。持って振り返った僕に、メリクが皮を剥いてくれる。とんとんとノックしたら、皮がいなくなった。中身はピンク色で、黄色い粒が入ってる。
「黄色いのは種だから、下に落とすとまた生えて来るぞ」
「そうなの?」
じゃあ、僕も誰かが黒い種を落としたのかもしれない。それで地面から生えてきたんだ! くすくす笑うメリクが「そうだな」と頬を撫でる。黄色い種を舟から投げて、僕はピンクを齧った。凄く甘くて美味しい。メリクと半分にしたけど、いいのかな。体が小さい僕より、メリクの方がお腹空くと思う。
「平気だよ、それに大きくなる途中のイルはたくさん食べないと」
もうひとつ果物を受け取って、そっちも開けてもらう。今度は黄色くて種がなかった。
「種は真ん中にあるから、気を付けろ」
真ん中を齧らないように食べてみたら、本当に大きいのが一つだけ入ってた。黒い種だよ。
「これ、僕が入ってるのかな」
「イルはもう入ってないと思うぞ」
首をかしげた僕を膝に乗せたメリクの舟は、空を飛んでいく。空は青いのに、突然変な音がした。ごろごろって大きな音で、メリクが僕を上から隠す。ドンッと大きな音で、メリクがチッと口の中で音を立てた。
「ったく! あぶねぇだろうが!!」
いつもと違う怒鳴り声で、メリクが空へ叫んだ。僕を抱っこして舟の上に立っている。メリクが睨む先、空の上の方に誰かがいるみたい。ゼルクくらいの大きさの人……。
僕はにっこり笑って手を振った。ルミエルに教えてもらったんだ、可愛い女の子はそうやって周りの人を幸せにするんだって。僕にも出来るといいな。
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