49 / 105
49.にゃーとお風呂はいけない
しおりを挟む
作ったお家のお風呂は大きくて、メリクと僕とにゃーが一緒に入れる。でも、メリクが一緒はダメだって。にゃーは濡れるのが嫌いだから、お風呂は入らない。そうだな? って怖い声のメリクがにゃーに言うと頷いた。
そっか、にゃーの毛皮は濡らしたらダメなんだね。僕とメリクは毛皮がないから、お風呂は平気だよ。赤い服を脱いで、髪のリボンも外してもらった。これは後で服の部屋にしまうの。
「うわぁ!」
今まで見たどのお風呂より広い。両手を広げても壁にぶつからないの。きょろきょろしながら、メリクと手を繋いで歩いた。お風呂は滑るんだって。滑るとお尻が痛いと聞いた。気をつけるね。
お湯がたっぷり入った風呂桶は、ここまで大きいと名前が変わる。湯船……大きさだけしか違わないのかな。覗いた僕の顔がお湯に映った。
「僕、可愛い?」
リボンがなくても可愛い? 尋ねた途端、メリクはすごく優しい顔になった。僕を抱っこして、座ったお膝の上に乗せる。
「ああ、すごく可愛い。それにいい子だ。俺の大切なお姫様だぞ」
「おひめさま」
「寝る前にお姫様が出てくるお話を読もうか」
「ありがとう」
嬉しいな。僕はあまり字を知らないし、言葉も知らない。だから本を読んでもらうと、いっぱい覚えられるんだ。分からない時は聞く。メリクはすぐ教えてくれる。だから本を読んでもらうのは大好き。
「よし、まずは髪を洗おう」
いつもメリクは髪から洗う。泡をいっぱい作って、僕の頭に掛けた。濡れた髪を丁寧に混ぜて、最後にお湯で流すの。最初はお湯が怖くて目を閉じてたけど、不思議なんだよ。お湯はね、顔に来ないの。全部後ろに行っちゃうんだ。
お腹の反対側は背中、そこを流れていくお湯に泡が入ってる。今日も同じように洗ってもらい、背中やお腹も泡で綺麗にした。体や髪が綺麗になれば、お湯に入っていいんだよ。
「さあ、いくぞ」
抱っこしたメリクが、僕をお湯に入れる。じわじわと温かい。体の全部がぽかぽかした。
「お風呂は好きか?」
「うん、好き」
メリクも好き。どうしてにゃーは嫌いなんだろう? お屋敷にいた頃の僕は入ったことなくて、きっと怖がったと思う。にゃーも同じなのかも。一度入ったら好きになるよ。
「猫は自分で毛皮を綺麗にするから、風呂は要らないんだ」
メリクは僕にきちんと説明する。嫌がるから誘ったらダメなんだね。わかった。頷いた僕に、ほっとした顔のメリクが呟いた。
「うっかり裸を見られるところだった」
うん? よく知らない言葉が入ってる。意味を聞こうと思ったけど、ぼうっとしてきた。ふらふらする。
「おっと、悪かった。一緒に出よう。冷たい水とジュースを飲もうな」
「……うん」
大急ぎでお風呂を出たメリクが、僕をタオルで包む。にゃーが何か鳴いて、メリクは「わかってる!」と返した。すぐに冷たいお水をもらって、少ししたらふらふらが消えたの。だからジュースも貰ったよ。
さっきの黄色いジュースじゃなくて、今度は緑色だった。どれも甘くて美味しいね。
そっか、にゃーの毛皮は濡らしたらダメなんだね。僕とメリクは毛皮がないから、お風呂は平気だよ。赤い服を脱いで、髪のリボンも外してもらった。これは後で服の部屋にしまうの。
「うわぁ!」
今まで見たどのお風呂より広い。両手を広げても壁にぶつからないの。きょろきょろしながら、メリクと手を繋いで歩いた。お風呂は滑るんだって。滑るとお尻が痛いと聞いた。気をつけるね。
お湯がたっぷり入った風呂桶は、ここまで大きいと名前が変わる。湯船……大きさだけしか違わないのかな。覗いた僕の顔がお湯に映った。
「僕、可愛い?」
リボンがなくても可愛い? 尋ねた途端、メリクはすごく優しい顔になった。僕を抱っこして、座ったお膝の上に乗せる。
「ああ、すごく可愛い。それにいい子だ。俺の大切なお姫様だぞ」
「おひめさま」
「寝る前にお姫様が出てくるお話を読もうか」
「ありがとう」
嬉しいな。僕はあまり字を知らないし、言葉も知らない。だから本を読んでもらうと、いっぱい覚えられるんだ。分からない時は聞く。メリクはすぐ教えてくれる。だから本を読んでもらうのは大好き。
「よし、まずは髪を洗おう」
いつもメリクは髪から洗う。泡をいっぱい作って、僕の頭に掛けた。濡れた髪を丁寧に混ぜて、最後にお湯で流すの。最初はお湯が怖くて目を閉じてたけど、不思議なんだよ。お湯はね、顔に来ないの。全部後ろに行っちゃうんだ。
お腹の反対側は背中、そこを流れていくお湯に泡が入ってる。今日も同じように洗ってもらい、背中やお腹も泡で綺麗にした。体や髪が綺麗になれば、お湯に入っていいんだよ。
「さあ、いくぞ」
抱っこしたメリクが、僕をお湯に入れる。じわじわと温かい。体の全部がぽかぽかした。
「お風呂は好きか?」
「うん、好き」
メリクも好き。どうしてにゃーは嫌いなんだろう? お屋敷にいた頃の僕は入ったことなくて、きっと怖がったと思う。にゃーも同じなのかも。一度入ったら好きになるよ。
「猫は自分で毛皮を綺麗にするから、風呂は要らないんだ」
メリクは僕にきちんと説明する。嫌がるから誘ったらダメなんだね。わかった。頷いた僕に、ほっとした顔のメリクが呟いた。
「うっかり裸を見られるところだった」
うん? よく知らない言葉が入ってる。意味を聞こうと思ったけど、ぼうっとしてきた。ふらふらする。
「おっと、悪かった。一緒に出よう。冷たい水とジュースを飲もうな」
「……うん」
大急ぎでお風呂を出たメリクが、僕をタオルで包む。にゃーが何か鳴いて、メリクは「わかってる!」と返した。すぐに冷たいお水をもらって、少ししたらふらふらが消えたの。だからジュースも貰ったよ。
さっきの黄色いジュースじゃなくて、今度は緑色だった。どれも甘くて美味しいね。
48
お気に入りに追加
1,368
あなたにおすすめの小説
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜
Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・
神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する?
月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc...
新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・
とにかくやりたい放題の転生者。
何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」
「俺は静かに暮らしたいのに・・・」
「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」
「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」
そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。
そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。
もういい加減にしてくれ!!!
小説家になろうでも掲載しております
【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!
――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。
「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」
すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。
最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2022/02/14 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2022/02/13 小説家になろう ハイファンタジー日間59位
※2022/02/12 完結
※2021/10/18 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2021/10/19 アルファポリス、HOT 4位
※2021/10/21 小説家になろう ハイファンタジー日間 17位
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる