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49.にゃーとお風呂はいけない

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 作ったお家のお風呂は大きくて、メリクと僕とにゃーが一緒に入れる。でも、メリクが一緒はダメだって。にゃーは濡れるのが嫌いだから、お風呂は入らない。そうだな? って怖い声のメリクがにゃーに言うと頷いた。

 そっか、にゃーの毛皮は濡らしたらダメなんだね。僕とメリクは毛皮がないから、お風呂は平気だよ。赤い服を脱いで、髪のリボンも外してもらった。これは後で服の部屋にしまうの。

「うわぁ!」

 今まで見たどのお風呂より広い。両手を広げても壁にぶつからないの。きょろきょろしながら、メリクと手を繋いで歩いた。お風呂は滑るんだって。滑るとお尻が痛いと聞いた。気をつけるね。

 お湯がたっぷり入った風呂桶は、ここまで大きいと名前が変わる。湯船……大きさだけしか違わないのかな。覗いた僕の顔がお湯に映った。

「僕、可愛い?」

 リボンがなくても可愛い? 尋ねた途端、メリクはすごく優しい顔になった。僕を抱っこして、座ったお膝の上に乗せる。

「ああ、すごく可愛い。それにいい子だ。俺の大切なお姫様だぞ」

「おひめさま」

「寝る前にお姫様が出てくるお話を読もうか」

「ありがとう」

 嬉しいな。僕はあまり字を知らないし、言葉も知らない。だから本を読んでもらうと、いっぱい覚えられるんだ。分からない時は聞く。メリクはすぐ教えてくれる。だから本を読んでもらうのは大好き。

「よし、まずは髪を洗おう」

 いつもメリクは髪から洗う。泡をいっぱい作って、僕の頭に掛けた。濡れた髪を丁寧に混ぜて、最後にお湯で流すの。最初はお湯が怖くて目を閉じてたけど、不思議なんだよ。お湯はね、顔に来ないの。全部後ろに行っちゃうんだ。

 お腹の反対側は背中、そこを流れていくお湯に泡が入ってる。今日も同じように洗ってもらい、背中やお腹も泡で綺麗にした。体や髪が綺麗になれば、お湯に入っていいんだよ。

「さあ、いくぞ」

 抱っこしたメリクが、僕をお湯に入れる。じわじわと温かい。体の全部がぽかぽかした。

「お風呂は好きか?」

「うん、好き」

 メリクも好き。どうしてにゃーは嫌いなんだろう? お屋敷にいた頃の僕は入ったことなくて、きっと怖がったと思う。にゃーも同じなのかも。一度入ったら好きになるよ。

「猫は自分で毛皮を綺麗にするから、風呂は要らないんだ」

 メリクは僕にきちんと説明する。嫌がるから誘ったらダメなんだね。わかった。頷いた僕に、ほっとした顔のメリクが呟いた。

「うっかり裸を見られるところだった」

 うん? よく知らない言葉が入ってる。意味を聞こうと思ったけど、ぼうっとしてきた。ふらふらする。

「おっと、悪かった。一緒に出よう。冷たい水とジュースを飲もうな」

「……うん」

 大急ぎでお風呂を出たメリクが、僕をタオルで包む。にゃーが何か鳴いて、メリクは「わかってる!」と返した。すぐに冷たいお水をもらって、少ししたらふらふらが消えたの。だからジュースも貰ったよ。

 さっきの黄色いジュースじゃなくて、今度は緑色だった。どれも甘くて美味しいね。
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