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40.お家では「ただいま」と「おかえり」
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お家は帰ってくる場所で、特別だと聞いた。メリクが開いた扉は赤色、僕が決めた色だ。手を繋いで中に入る。抱っこから下された時はびっくりしたけど、自分の足で入ろうと言われて頷いた。
入り口を入った途端、何かが僕に触れた気がする。薄くてぺたっとした何かを抜けたら、木のお部屋があった。前に僕が住んでいた小屋より大きい。ぐるりと見回す。上から光が入っていて、精霊がいっぱい飛んでいた。
「ここで寝るの?」
「ここは玄関だ」
玄関は帰ってきた時に、ただいまを言って、おかえりを言われる場所。教えてもらった言葉を口にする。
「ただいま?」
「ふふっ、おかえり。イル」
胸がぐわーっとなって、ふわふわする。嬉しいのかな、たぶん。僕が帰ってきたら、メリクがおかえりを……あれ? 今はメリクも帰ってきた。じゃあ、メリクもただいまをしないと。
「メリク、おかえり?」
「ああ、ただいま」
メリクがにっこり笑って、僕は胸の奥が温かくなる。むず痒くて走り回りたい気分だよ。手を繋いで進んだら、広いお部屋があった。ここが居間で普段過ごすお部屋だって。その奥に食事をする部屋があって、作るお部屋もある。
いっぱいお部屋のある家なんだね。きょろきょろしていると、お風呂も見つけた。あとおトイレも。それから……ここはベッドのお部屋だ!
「こっちの部屋は服をしまおうか」
「うん、僕もやる」
「もちろんだ、イルに手伝ってもらうさ」
よかった。僕が手伝っても邪魔じゃないみたい。僕、邪魔は嫌いなの。お部屋には机や椅子があったけど、このお部屋だけは何もない。メリクが黒い穴から服や棒を取り出して、準備を始めた。
部屋に棒を取り付けて、箱を並べる。その中へ僕が服を運んだ。お座りして畳んで、並べるのは楽しい。色が違う服を綺麗に並べたら、わくわくした。用意された引き出しの中に、靴も置いていく。
僕のを入れた箱と、メリクのを入れた箱。それからにゃーは服を着ないけど、首輪があるんだって。にゃーは嫌がったけど、メリクが睨んだら大人しく着けた。赤い色、可愛いと思う。扉の色と同じだから、ちゃんと帰ってこられるよ。
いっぱいしまった箱は、棚と呼ぶんだ。僕が何か知らなくても怒らないから、メリクと話すのは楽しい。手を繋いで歩いた家の中を、今度はにゃーと歩き回った。すごいね、広いし綺麗だよ。砂もないし、葉っぱも落ちてない。
ベッドに登ろうとしたら、届かなくて。じたばたする僕を後ろからにゃーが押した。半分登れた。大きなにゃーは、ひょいっと飛び乗って、上から僕を引っ張る。するんとベッドに登れた。縁に座ると足が届かない。
靴を脱いで寝転がった。ごろごろして、にゃーに抱きつく。いっぱい撫でて、あふっと欠伸をした。眠くなっちゃう。
「イル、寝てていいぞ。ご飯を作ってくるからな」
作るの? お手伝いしたい。眠いのが飛んでっちゃった。お尻で滑って降りた僕に、笑いながらメリクが靴を履かせる。
「僕もつくる」
「サラダを手伝ってほしいんだが、頼めるかな?」
「うん」
お手伝い、いっぱい出来るようになりたいな。サラダもちゃんと覚えるよ。まずは手を洗って、椅子の上によじ登った。
入り口を入った途端、何かが僕に触れた気がする。薄くてぺたっとした何かを抜けたら、木のお部屋があった。前に僕が住んでいた小屋より大きい。ぐるりと見回す。上から光が入っていて、精霊がいっぱい飛んでいた。
「ここで寝るの?」
「ここは玄関だ」
玄関は帰ってきた時に、ただいまを言って、おかえりを言われる場所。教えてもらった言葉を口にする。
「ただいま?」
「ふふっ、おかえり。イル」
胸がぐわーっとなって、ふわふわする。嬉しいのかな、たぶん。僕が帰ってきたら、メリクがおかえりを……あれ? 今はメリクも帰ってきた。じゃあ、メリクもただいまをしないと。
「メリク、おかえり?」
「ああ、ただいま」
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いっぱいお部屋のある家なんだね。きょろきょろしていると、お風呂も見つけた。あとおトイレも。それから……ここはベッドのお部屋だ!
「こっちの部屋は服をしまおうか」
「うん、僕もやる」
「もちろんだ、イルに手伝ってもらうさ」
よかった。僕が手伝っても邪魔じゃないみたい。僕、邪魔は嫌いなの。お部屋には机や椅子があったけど、このお部屋だけは何もない。メリクが黒い穴から服や棒を取り出して、準備を始めた。
部屋に棒を取り付けて、箱を並べる。その中へ僕が服を運んだ。お座りして畳んで、並べるのは楽しい。色が違う服を綺麗に並べたら、わくわくした。用意された引き出しの中に、靴も置いていく。
僕のを入れた箱と、メリクのを入れた箱。それからにゃーは服を着ないけど、首輪があるんだって。にゃーは嫌がったけど、メリクが睨んだら大人しく着けた。赤い色、可愛いと思う。扉の色と同じだから、ちゃんと帰ってこられるよ。
いっぱいしまった箱は、棚と呼ぶんだ。僕が何か知らなくても怒らないから、メリクと話すのは楽しい。手を繋いで歩いた家の中を、今度はにゃーと歩き回った。すごいね、広いし綺麗だよ。砂もないし、葉っぱも落ちてない。
ベッドに登ろうとしたら、届かなくて。じたばたする僕を後ろからにゃーが押した。半分登れた。大きなにゃーは、ひょいっと飛び乗って、上から僕を引っ張る。するんとベッドに登れた。縁に座ると足が届かない。
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作るの? お手伝いしたい。眠いのが飛んでっちゃった。お尻で滑って降りた僕に、笑いながらメリクが靴を履かせる。
「僕もつくる」
「サラダを手伝ってほしいんだが、頼めるかな?」
「うん」
お手伝い、いっぱい出来るようになりたいな。サラダもちゃんと覚えるよ。まずは手を洗って、椅子の上によじ登った。
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