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23.果実水で色を覚えたよ
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「この街もいいが、よそも興味があるな」
うーんと唸るメリクが大きな絵の描かれた紙を見ながら、首を傾ける。怖いや痛いは感じなかった。でも楽しそうでもない。困ってる感じが近いかも。お尻で滑ってベッドから下りた。置いてある靴を履いて、紐は出来ないからメリクにやってもらおう。
音をさせて歩く僕は、何かに足を引っ張られて転んだ。慌てて手を前に出すけど、痛いかも。そう思ったら「おっと」と声が聞こえて、メリクに抱っこされていた。今の、凄いね。どうやったんだろう。
「可愛いイルから目を離せないな。踏むと転ぶから靴紐を結ぼうか」
「うん」
椅子の上に座らせてもらい、床に膝を突いたメリクが紐を結ぶ。くるくるしてきゅっと引っ張るんだけど、僕が真似しても同じにならないの。バラバラになっちゃうんだよ。
「これ、なぁに?」
さっき見ていた大きな紙を指差した。
「地図だよ。イルの足元にいっぱい土があるだろう? それの形を描いたものだ」
「つちのかたち」
繰り返しながら、じっと見る。ギザギザと変な形をしているね。外側は水や空の色だ。そこを示して首を傾げた。
「ここ、そら?」
「海だ。遊びに行った昨日の湖……えっと、水溜まりの大きなやつだな」
大きな水のもっと大きい? 大きいがいっぱいで分からない。見えるところが全部水なのかも!
「見に行こうか」
「うみ?」
「ああ、大きくて塩っぱいんだぞ」
塩っぱいは甘いと一緒に覚えた。味がする水なんだね。甘い水もあるのかな。わくわくしながら見上げると、メリクがくすくすと笑った。
「甘い水を飲んでみるか?」
「あるの?!」
抱っこされて、お部屋を出る前に着替える。お部屋用とお外用は違うんだって。お外用はたくさん飾りがついていた。違いも教えてもらったの。寝る時に飾りが痛いのは、お外用。転がっても痛くない服が、お部屋用だった。
これなら僕にも違いが分かるよ。着替えた服はピンク色だった。色のお名前も教えてもらったんだ。前にお外で咲いていた花の色なのは分かるけど。僕やメリクと同じで、色にもお名前があった。
外でお店が並んだ道を歩くメリクは、時々僕の頭を撫でる。優しくて温かくて気持ちいい。ふと鼻をひくつかせた。甘い匂いがする。
「ここだ」
メリクは甘い匂いのするお店に足を止めた。お店には、横に大きい女の人がいる。沢山ある瓶は、色がいっぱいだった。ピンクと空の色、お日様色と……あとは分からない。
「紫、緑、白、青、ピンク、赤、黄色だ。どれがいいと聞くまでもないな。全部もらおう」
「毎度あり! 随分可愛い子だね、あんたさんの子かい?」
「いや、未来の嫁さんだ」
「そりゃーいい! 大切にしてもらいなよ」
がははと大きな声で笑うお店の人が、手早く瓶を用意して上を紐で縛り始めた。そこへ三角の道具で色のお水を入れる。じっと見ていたら、最後に蓋を閉めた。
「これでいい。持ってくかい?」
「いや、そこの宿に届けてくれ。フクロウの看板だ。追加で赤をカップに入れてくれ」
「あいよ」
お花でよく見た色は、赤というみたい。コップに入れて、蓋をしたら何かを突き刺した。渡されたのでお礼を言う。
「ありがとう」
「どういたしまして。声まで可愛いね」
可愛いって僕のこと? メリクがそうだろうと自慢するから、やっぱり僕のことだった。撫でられて、小さく手を振ってみる。
赤い水はすごく甘かった。突き刺した棒を咥えて吸うの。赤い水が口に入って、ぶわって広がるんだ。甘くて美味しい。口の中の甘いのが嬉しくて、メリクにも飲んでもらった。
うーんと唸るメリクが大きな絵の描かれた紙を見ながら、首を傾ける。怖いや痛いは感じなかった。でも楽しそうでもない。困ってる感じが近いかも。お尻で滑ってベッドから下りた。置いてある靴を履いて、紐は出来ないからメリクにやってもらおう。
音をさせて歩く僕は、何かに足を引っ張られて転んだ。慌てて手を前に出すけど、痛いかも。そう思ったら「おっと」と声が聞こえて、メリクに抱っこされていた。今の、凄いね。どうやったんだろう。
「可愛いイルから目を離せないな。踏むと転ぶから靴紐を結ぼうか」
「うん」
椅子の上に座らせてもらい、床に膝を突いたメリクが紐を結ぶ。くるくるしてきゅっと引っ張るんだけど、僕が真似しても同じにならないの。バラバラになっちゃうんだよ。
「これ、なぁに?」
さっき見ていた大きな紙を指差した。
「地図だよ。イルの足元にいっぱい土があるだろう? それの形を描いたものだ」
「つちのかたち」
繰り返しながら、じっと見る。ギザギザと変な形をしているね。外側は水や空の色だ。そこを示して首を傾げた。
「ここ、そら?」
「海だ。遊びに行った昨日の湖……えっと、水溜まりの大きなやつだな」
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「見に行こうか」
「うみ?」
「ああ、大きくて塩っぱいんだぞ」
塩っぱいは甘いと一緒に覚えた。味がする水なんだね。甘い水もあるのかな。わくわくしながら見上げると、メリクがくすくすと笑った。
「甘い水を飲んでみるか?」
「あるの?!」
抱っこされて、お部屋を出る前に着替える。お部屋用とお外用は違うんだって。お外用はたくさん飾りがついていた。違いも教えてもらったの。寝る時に飾りが痛いのは、お外用。転がっても痛くない服が、お部屋用だった。
これなら僕にも違いが分かるよ。着替えた服はピンク色だった。色のお名前も教えてもらったんだ。前にお外で咲いていた花の色なのは分かるけど。僕やメリクと同じで、色にもお名前があった。
外でお店が並んだ道を歩くメリクは、時々僕の頭を撫でる。優しくて温かくて気持ちいい。ふと鼻をひくつかせた。甘い匂いがする。
「ここだ」
メリクは甘い匂いのするお店に足を止めた。お店には、横に大きい女の人がいる。沢山ある瓶は、色がいっぱいだった。ピンクと空の色、お日様色と……あとは分からない。
「紫、緑、白、青、ピンク、赤、黄色だ。どれがいいと聞くまでもないな。全部もらおう」
「毎度あり! 随分可愛い子だね、あんたさんの子かい?」
「いや、未来の嫁さんだ」
「そりゃーいい! 大切にしてもらいなよ」
がははと大きな声で笑うお店の人が、手早く瓶を用意して上を紐で縛り始めた。そこへ三角の道具で色のお水を入れる。じっと見ていたら、最後に蓋を閉めた。
「これでいい。持ってくかい?」
「いや、そこの宿に届けてくれ。フクロウの看板だ。追加で赤をカップに入れてくれ」
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「ありがとう」
「どういたしまして。声まで可愛いね」
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赤い水はすごく甘かった。突き刺した棒を咥えて吸うの。赤い水が口に入って、ぶわって広がるんだ。甘くて美味しい。口の中の甘いのが嬉しくて、メリクにも飲んでもらった。
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