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22.イルは大切な宝物だ

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「内緒だぞ」

 くすっと笑ったメリクが、僕の上に光の粉を振った。きらきらして、しゅんと消える。

「ほら、綺麗になっただろ」

 言われて服を見たら、汚れがなくなってた。今の光が消したのかな。頷くメリクにもう一回とお願いした。口の周りを洗うにゃーに光の粉がかかる。綺麗になった?

 うにゃー、不満そうな声を出すから綺麗じゃない? 自分で綺麗にしたかったのかも。撫でたらご機嫌になったにゃーは、僕のお膝にぴたりと張り付いて眠ったの。可愛いね。にゃーは子どもの大きさだから、可愛いでもいいんだよね。

「これは秘密なんだ。知られたら、悪い人に追いかけられるぞ」

「おいかけて、たたく?」

「かもな」

 怖いね、悪い人は近づかないでほしい。メリクは僕を守るから平気と言ったけど、叩かれると痛いんだよ。我慢できなくて泣いちゃうこともあるの。だから、慣れてる僕が叩かれてあげるね。痛いのは嫌いだけど、メリクが痛いよりいいから。

「悲しいことを考えるな。イルは大切な宝物だ。絶対に守るさ。二度と叩かせたりしない」

 僕は宝物? じゃあ、忘れていったりしないでね。ずっと一緒がいいんだ。メリクがいると周りが優しくて、美味しくて、温かいんだもん。

 ご飯を食べて眠くなった僕は、メリクに寄りかかって眠った。触ってると安心できるの。時々水の音がして、夜色の髪を風が撫でる。寒くなくて、痛くなくて、メリクもにゃーもいるから。ゆっくり眠った。

 目を開けると、まだお外は明るい。水を見に行きたいので、メリクと一緒に覗き込んだ。魚かな、何か光る長細いのがいる。

「魚みたいだ。捕まえてやろうか?」

「ううん、だめなの」

 お魚は家族といるんだよ。だって中にいっぱいいるもん。

「そうか、イルは優しいな」

 頭を撫でるメリクは、僕と同じ色の髪をしている。それに目の色もそっくりだった。前にお屋敷の人が言ってたよ。家族は同じ色だって。

「ん? よく気づいたな。同じ色だから、俺とイルは家族になれる」

「僕でいい?」

 嫌じゃない? 僕は悪い子なんだって聞いた。家族と同じ色じゃないから、ダメな子なの。それでも同じ色なら、メリクは平気なのかな。僕を嫌いにならない?

「絶対に嫌いにならない。約束してもいいぞ」

 約束は大事で、必ず守らないといけないの。そんな大切な約束をしてくれるなら。僕も約束しよう。

「メリクと僕、やくそく」

「ああ、イルも約束してくれるんだな。とっても嬉しい」

 たくさん話せない僕をメリクは笑ったりしない。新しいことをたくさん教えてくれるし、僕に笑った顔を向ける。

「うん、だいすき」

 だからこの言葉を使っていいんだよね。笑って伝えたら、メリクも大好きと返した。

 大きな水に足を入れたり、冷たくてびっくりしたり、また木の陰で休んだりした。お日様の色が濃くなるまで色々したけど、これが遊ぶなの? 楽しいから、また遊ぼうね。

 メリクに抱っこされて、にゃーも一緒に。お部屋に帰ったのは眠っててよく覚えてない。目が覚めたらメリクにぎゅっとされて、ベッドの中だった。
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