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19.怖がらせて悪かった
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びっくりしてスプーンを握ったまま、体を小さくする。頭の上に置かれた手は、やや乱暴だけど僕を撫でた。
「ん? 怖かったか、わりぃなぁ……酔っ払いで手も声も大きいもんでよ」
何を言ってるか、あまり分からない。でも悪いは謝る時のごめんなさいと同じ。だから僕は首を横に振った。謝らなくていいよ。だって撫でてくれたもん。
「この子は人慣れしてなくてな。びっくりしたんだろう」
メリクの言葉で、男の人は大声で笑った。その声が大きくてびっくりしたけど、もう怖くない。僕を撫でた手はごつごつしてて、柔らかくないけど痛くなかった。にっこり笑う僕に、何かを差し出す。
受け取ったのは、細長い棒みたい。顔のそばへ持っていって、くんくんと匂ってみた。いい匂いがする。
「飴だ。うまいぞ」
「ありがとう」
飴は知らないけど、嬉しい時はありがとうを言う。口にしたら、大きな男の人はまた頭を撫でて座ってた席に戻った。もらった棒を眺める僕に、メリクが教えてくれた。飴は甘くて美味しいお菓子なんだって。お菓子って何だろう?
言われるままぺろっと舐めた。僕が握ってるところは紙が巻いてあって、舐めたところに紙はない。舌の先がじわじわっとして嬉しくなった。これが美味しい? 甘い?
食べたことない味に大喜びする僕だけど、まずはご飯が先と説明された。飴は持って帰って宿で食べるみたい。甘いのを先に食べると、ご飯が入らない? どうしてだろう。甘いとお腹の大きさが変わっちゃうのかな。
並んだご飯を苦しくなるまで食べる。中から押されてる感じがするよ。入るだけ食べたら、残りはメリクが食べた。お座りして待っている僕に、今度は女の人が寄ってくる。
長い髪の綺麗な人。話しかけられて、ぎゅっと抱っこされた。同じ年頃の娘がいたのよ、と目から水が出たの。胸の奥が痛いような痒いような、変な感じになった。寂しいのかも。撫でたら嬉しくなれるかな。
僕はこれしか知らないから、手を伸ばして女の人を撫でてみた。さらに水が溢れちゃった。少ししたら、顔が濡れてるのに笑って手を振る。お店の人と話をして、出て行った。僕もいっぱい手を振ったよ。
「いい子だ」
優しい声のメリクに抱っこされ、女の人の目から出た水で濡れた顔を拭いてもらう。メリクは金属と引き換えに、小さな袋を受け取った。何か匂いがする。すんすんと匂う僕に「これはにゃーのご飯だ」と笑った。
「にゃーの?」
「そうだ。きっとお腹空かせて待ってるぞ」
いつもは一緒に食べるのに、僕達だけ食べちゃった。そうだね、お腹空いてると思う。すごくお腹が空くと痛くなって、最後に眠くなるんだよ。なんだか怖いよね。
「アイツの仕置きだけじゃ足りないな」
ぼそっとメリクが何か言ったけど、僕は意味がわからない。ただ伝わってくるのは、怒ってる感じだけ。迷って、メリクの頬に頬をくっつけた。今の僕は臭くないから、怒られないよね。メリクは痛いことしないから。
「ああ、ごめん。イルはいい子だよ。心配させたね」
ううん。首を横に振った。メリクが痛かったり苦しくなければいいの。仕置きって何だろう、食べられる物ならいいな。
「ん? 怖かったか、わりぃなぁ……酔っ払いで手も声も大きいもんでよ」
何を言ってるか、あまり分からない。でも悪いは謝る時のごめんなさいと同じ。だから僕は首を横に振った。謝らなくていいよ。だって撫でてくれたもん。
「この子は人慣れしてなくてな。びっくりしたんだろう」
メリクの言葉で、男の人は大声で笑った。その声が大きくてびっくりしたけど、もう怖くない。僕を撫でた手はごつごつしてて、柔らかくないけど痛くなかった。にっこり笑う僕に、何かを差し出す。
受け取ったのは、細長い棒みたい。顔のそばへ持っていって、くんくんと匂ってみた。いい匂いがする。
「飴だ。うまいぞ」
「ありがとう」
飴は知らないけど、嬉しい時はありがとうを言う。口にしたら、大きな男の人はまた頭を撫でて座ってた席に戻った。もらった棒を眺める僕に、メリクが教えてくれた。飴は甘くて美味しいお菓子なんだって。お菓子って何だろう?
言われるままぺろっと舐めた。僕が握ってるところは紙が巻いてあって、舐めたところに紙はない。舌の先がじわじわっとして嬉しくなった。これが美味しい? 甘い?
食べたことない味に大喜びする僕だけど、まずはご飯が先と説明された。飴は持って帰って宿で食べるみたい。甘いのを先に食べると、ご飯が入らない? どうしてだろう。甘いとお腹の大きさが変わっちゃうのかな。
並んだご飯を苦しくなるまで食べる。中から押されてる感じがするよ。入るだけ食べたら、残りはメリクが食べた。お座りして待っている僕に、今度は女の人が寄ってくる。
長い髪の綺麗な人。話しかけられて、ぎゅっと抱っこされた。同じ年頃の娘がいたのよ、と目から水が出たの。胸の奥が痛いような痒いような、変な感じになった。寂しいのかも。撫でたら嬉しくなれるかな。
僕はこれしか知らないから、手を伸ばして女の人を撫でてみた。さらに水が溢れちゃった。少ししたら、顔が濡れてるのに笑って手を振る。お店の人と話をして、出て行った。僕もいっぱい手を振ったよ。
「いい子だ」
優しい声のメリクに抱っこされ、女の人の目から出た水で濡れた顔を拭いてもらう。メリクは金属と引き換えに、小さな袋を受け取った。何か匂いがする。すんすんと匂う僕に「これはにゃーのご飯だ」と笑った。
「にゃーの?」
「そうだ。きっとお腹空かせて待ってるぞ」
いつもは一緒に食べるのに、僕達だけ食べちゃった。そうだね、お腹空いてると思う。すごくお腹が空くと痛くなって、最後に眠くなるんだよ。なんだか怖いよね。
「アイツの仕置きだけじゃ足りないな」
ぼそっとメリクが何か言ったけど、僕は意味がわからない。ただ伝わってくるのは、怒ってる感じだけ。迷って、メリクの頬に頬をくっつけた。今の僕は臭くないから、怒られないよね。メリクは痛いことしないから。
「ああ、ごめん。イルはいい子だよ。心配させたね」
ううん。首を横に振った。メリクが痛かったり苦しくなければいいの。仕置きって何だろう、食べられる物ならいいな。
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