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11.服も靴もご飯も、いっぱいあった

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 金色が付いた服に着替えた僕は、メリクと手を繋ぐ。抱っこもいいけど、手を繋ぐのも好き。だって特別な感じがするもん。少し歩いて、大きすぎるお店の隣の売り場へ移動した。ここは道全体がお店になっていて、両側にいろんな物を売っている。

 今いたところは僕も着られる小さな服のお店。向かいは大きな人の服が並んでて、隣は靴がいっぱいだった。靴は僕の顔より大きいのもあれば、もっと小さいのもある。僕の足が入らないくらい小さいのもあった。誰が履くんだろう。

「この子に靴を見繕ってくれ」

 ざらりと形が丸い金属を渡したメリクに頭を下げ、お店の人はいっぱい運んできた。赤や黄色はお花の色、夜の空の黒色やお屋敷で干していたシーツの白もある。飾りがついた靴をいくつも履いてみた。よくわからない。首を傾げる僕に、メリクは優しく尋ねた。

「痛い靴はあるか? 履いて立った時に、ここやここが痛い靴だ」

 前と後ろをとんとんと指で示され、靴を履いて立ってみる。くるくる歩いたけど平気。そうしたらこの靴は買うことになった。他の靴も全部試して、半分くらいを受け取る。両手がいっぱいになったメリクは、金色の粒を交換したお店の人に服や靴を渡した。

「どうするの?」

「預かってもらう。宿へ送ってくれるからな」

 宿はにゃーが留守番しているお部屋で、そこへ運んでくれるんだって。持って歩かないのは、僕を抱っこするからだと聞いた。両手が空になったメリクに抱っこされ、今度は奥の方へ進む。食べ物の匂いがした。何かを焼いた匂い? くんくんと鼻を動かす。

 両側にあるお店はそれぞれ違う匂いがする。その向こうにあるお店もご飯を作ってるのかな。きょろきょろする僕に、あちこちから声がかかる。美味しいよ、お肉はどうだい? 初めてでドキドキした。僕に声をかけてくれる人は、お屋敷でいなかったから。

「食べたいものが見つかったか?」

「わかんない」

 ご飯を作ってるのは分かる。でも何がどの味なのか、全然わからなかった。全部いい匂いがするんだもん。じっと見つめたのは、黒い板の上で何かを焼いてるお店だった。じゅーと音がする塊は、すごくいい匂いがした。

「よし、これにしよう」

 僕の視線の先にある塊を買うメリクは、その後も僕が見つめたご飯を次々と選んだ。多過ぎないかな。食べられないと思う。心配する僕をよそに、メリクは笑った。

「安心していい。俺も一緒に食べるからな。お留守番のにゃーもいるぞ」

 そっか、僕だけじゃなくてメリクもにゃーも食べるから。いっぱいあっても平気なんだね。安心した僕にお店のおじさんが棒に刺さった魚を差し出した。受け取ってもいいの? 分からなくてメリクを見る。彼が頷くから手を出して受け取り「ありがとう」とお礼を言った。

 お礼って嬉しい時に使うんだよね。お店のおじさんは「いいってことよ、たくさん買ってもらったから」と笑う。声が大きい人だった。手を振って別れたのも初めてだよ。

「帰ってご飯にしよう」

 お魚は帰るまでに僕とメリクが齧ったら、どんどん小さくなって無くなっちゃった。にゃーもお魚が好きだから、次は残さないとね。
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