【完結】陰陽師は神様のお気に入り

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
4 / 131
第1章 陰陽師は神様のお気に入り

04.***約定***

しおりを挟む
『真桜……と言ったか?』

 言霊が持つ強烈な響きに、真桜が一瞬息を呑む。しかし慌てて頷いた。

『我と約定を交わせ』

「約定……」

 神との約定、重い言葉に繰り返すのが精一杯だった。

『待て、これは『人間』だぞ!?』

 華守流の仲裁に、アカリは嫣然と微笑んでばっさり切り捨てる。

『人間? 厳密には違うであろう』

「……っ」

 反論できずに唇を噛み締める華守流の肩を叩いた華炎が一礼して、アカリへ敬意を示す。しかし言葉はひどく辛辣だった。

『血筋はどうであれ、これは『人間』の範疇に入る。もう少し気を使ってもらえると有り難い』

 ふむ……考え込む様子を見せたアカリが首を傾げる。さらりと流れた黒髪を風が掬い上げ、複雑そうな顔をしている真桜の呟きも拾い上げた。

「さっきから……これ、これって…」

 華守流とアカリに続いて、華炎まで…。

 そんなニュアンスの憮然とした声に、華炎が苦笑いする。

『我の約定は大したものではない。この身が地上にある間、真桜と共に暮らしたい』

「一緒に?」

 そんな些細なものでいいのか? 疑問を込めた真桜の問い掛けに、アカリはおごそかに頷いた。

『代わりに…お前を護ってやろう』

 物理的な意味も、精神的な意味も含めての目守まもると告げる彼は魅惑的に微笑む。

 じっと見つめる行為は無粋で、神族であるアカリにとって不快な筈だった。だが、この者から感じる視線は心地よい。それが地上での生活を共に望む理由でもあった。

 どうせ高天原から逃げてきたのだから、地上では好きに過ごしたい。

 気に入った人間に加護を与え、代償に隣にあることを望むのは破格の待遇だった。アカリにとって不利とは言わないが、真桜の利点が大き過ぎる。

 眉を顰めていた華守流が『……信じられん』と小さく呟いた。

『返答はいかに?』

 神が人間に返答を求める。そこまで譲歩しているアカリに対して、華炎も華守流も反対は出来なかった。

 ちらりと視線を向けて「いいよな?」と問いかける真桜へ重々しく頷く。

「よろしくお願いします」

 にっこり笑顔で頭を下げた真桜の態度に、アカリは口元を押さえて笑い出した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

夫は平然と、不倫を公言致しました。

松茸
恋愛
最愛の人はもういない。 厳しい父の命令で、公爵令嬢の私に次の夫があてがわれた。 しかし彼は不倫を公言して……

処理中です...