2 / 131
第1章 陰陽師は神様のお気に入り
02.***接近***
しおりを挟む
絶世の……と表現するに相応しい美人が近付く。
しかし
『止まれ』
命じる声に美人が顔を顰めた。胡乱げな眼差しを向けた先で、矛を構えた長身の華炎と、三日月形の青龍刀を構える式神、華守流が陰陽師を庇うように立つ。
『……幽霊ではない?』
半分透き通った月光の精霊のような姿に、華炎が正体を見極めようと緑の目を細めた。
『幽霊ごときと同列にされるとは…』
舌打ちした美人が剣呑な眼差しを向け、右手で薙ぎ払った。
風の刃は華炎と華守流をすり抜け、背後に守られる陰陽師の薄絹を切り裂く。
『真桜!』
叫んだ華守流が飛び掛ろうとするのを、真桜の手が留めた。
「待ってくれ。これはオレが悪い」
被っていた布が消えたことで、陰陽師――真桜――の容貌が月光に晒される。鬼の子と呼ばれる赤みかかった茶の髪、この国では見られぬ青紫の瞳、異国の血を引く彼の顔は端整だ。
「顔を隠して接するのは無礼だよな、ゴメン」
詫びた真桜が頭を下げ、華守流と華炎は顔を見合わせて溜め息を吐いた。
美人が傲慢な態度で頷く。真桜の謝罪は的を射ていたらしい。
「オレは真桜。この国では別の名もあるけど……」
あっさり本名を晒した真桜に呆れて、華守流が頭を抱えてしゃがみ込んだ。どこの陰陽師が得体の知れないモノへ、本名を名乗る?
「……知識不足で悪いんだけど、どちらのカミサマ??」
真桜の指摘に、ほぉ……と感心したような眼差しが注がれる。艶やかな黒髪を短く整えた彼が、蒼い瞳を愉快そうに歪めた。
『何故、神だと思った?』
「勘、かな」
『鋭い勘に敬意を表し応えてやろう。我は『オオヒルメノムチ』の眷属だ』
オオヒルメノムチ――アマテラス、すなわち最高位の女神の眷属となれば神格は高い。
驚いて目を瞠る真桜に近付き、途中で華守流と華炎を一睨みして遠ざけた。
「あの……」
何か無礼を咎められるのかと青ざめた真桜の顎に手を触れ、ふわりと宙に浮いたまま神の眷属は微笑んだ。
『我が名はアカリ…お前には喚ぶ事を許そう』
「あ……ありがとうございます」
とりあえず礼を言ったものの、近すぎる美貌に真桜の頬が赤く染まる。その反応が気に入ったのか、アカリと名乗った神は微笑んで接吻けた。
しかし
『止まれ』
命じる声に美人が顔を顰めた。胡乱げな眼差しを向けた先で、矛を構えた長身の華炎と、三日月形の青龍刀を構える式神、華守流が陰陽師を庇うように立つ。
『……幽霊ではない?』
半分透き通った月光の精霊のような姿に、華炎が正体を見極めようと緑の目を細めた。
『幽霊ごときと同列にされるとは…』
舌打ちした美人が剣呑な眼差しを向け、右手で薙ぎ払った。
風の刃は華炎と華守流をすり抜け、背後に守られる陰陽師の薄絹を切り裂く。
『真桜!』
叫んだ華守流が飛び掛ろうとするのを、真桜の手が留めた。
「待ってくれ。これはオレが悪い」
被っていた布が消えたことで、陰陽師――真桜――の容貌が月光に晒される。鬼の子と呼ばれる赤みかかった茶の髪、この国では見られぬ青紫の瞳、異国の血を引く彼の顔は端整だ。
「顔を隠して接するのは無礼だよな、ゴメン」
詫びた真桜が頭を下げ、華守流と華炎は顔を見合わせて溜め息を吐いた。
美人が傲慢な態度で頷く。真桜の謝罪は的を射ていたらしい。
「オレは真桜。この国では別の名もあるけど……」
あっさり本名を晒した真桜に呆れて、華守流が頭を抱えてしゃがみ込んだ。どこの陰陽師が得体の知れないモノへ、本名を名乗る?
「……知識不足で悪いんだけど、どちらのカミサマ??」
真桜の指摘に、ほぉ……と感心したような眼差しが注がれる。艶やかな黒髪を短く整えた彼が、蒼い瞳を愉快そうに歪めた。
『何故、神だと思った?』
「勘、かな」
『鋭い勘に敬意を表し応えてやろう。我は『オオヒルメノムチ』の眷属だ』
オオヒルメノムチ――アマテラス、すなわち最高位の女神の眷属となれば神格は高い。
驚いて目を瞠る真桜に近付き、途中で華守流と華炎を一睨みして遠ざけた。
「あの……」
何か無礼を咎められるのかと青ざめた真桜の顎に手を触れ、ふわりと宙に浮いたまま神の眷属は微笑んだ。
『我が名はアカリ…お前には喚ぶ事を許そう』
「あ……ありがとうございます」
とりあえず礼を言ったものの、近すぎる美貌に真桜の頬が赤く染まる。その反応が気に入ったのか、アカリと名乗った神は微笑んで接吻けた。
0
お気に入りに追加
159
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる