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225.レオンが選ぶ猫は……
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どの子も可愛くて選べないわ。私の意見に、三人も頷いた。特にレオンは釘付けだ。子猫に触りたくて、でも手を繋いでいるから我慢して。うずうずしているのがわかる。
「この子は女の子で、こっちの子は男の子?」
性別を確認するために口に出したら、家主の男性は静かな声で告げた。
「全部女の子ですよ」
「全部?」
きょとんとして、もう一度確認するが……これ、男の子じゃないの? サビ猫を抱き上げて確認したいが、子供達にダメと言った手前、覗き込むのが精一杯だった。家主の男性は微笑んで、そっと子猫を動かす。
母猫はちらりと視線を寄越した。それ以上触るなと警告しているように見える。前足に爪が出ちゃってるわ。唸るまではいかないけれど、緊張しているのは確かね。子猫が生まれて間もないのに、見慣れない人間が押しかけたんだもの。不安だと思うわ。
レオン達に少し離れるよう伝え、一緒に子猫を眺めた。見た感じ、白い黒靴下の子はお転婆さんね。サビの子は弱そうで、三毛はマイペースだ。白い子猫に、サビの子は踏まれて押し除けられている。手を貸したくなるが、我慢しないと。
「どの子を残すか、皆様はご相談しましたの?」
ご家族は言いづらいかも……と思って、侍従に問う。彼は屋敷での私の振る舞いを知っているからか、特に気負った様子なく答えてくれた。
「奥様が先に選ばれて構いませんが、サビの子を残そうと思っていました」
一番弱そうだから、というのが理由らしい。二匹を一緒に引き取るなら、元気な二匹を連れて行ったらどうかと提案された。白い子と三毛の子ね。マイペースな三毛の子は、母親のお乳を咥えたまま寝ていた。
「サビと三毛はどうかしら」
この組み合わせなら、お互いに不干渉でうまくいきそう。そう呟くと、家主の男性が頷いた。
「奥様のご意見もいいですな」
この家に残る子猫は、穀物倉庫の番をするんだもの。元気いっぱいな子がいいと考えた。マイペースな三毛と大人しいサビは、のんびり飼い猫の方が向いていると思うし。
「レオン、どの子が好き?」
「うんとね……このこ」
きょとんとしてしまう。目を見開いて、この子? と指差した。人間相手だったら、失礼なんてものじゃないけど。レオンは満面の笑みで大きく頷く。間違ってないみたい。
「……母猫よ?」
子猫じゃなくて、それは母猫で……。でもレオンにとっては、大切な唯一の猫なのでしょうね。飼うなら母猫がいいと笑う幼子に、何て答えたらいいのかしら。
「このお家の猫なのよ」
「いや、違いますぞ」
家主に否定され、言葉を止めた私に、意外な事実が告げられた。母猫はたまに立ち寄るだけで、この家の猫ではないらしい。周辺の家の飼い猫でもないので、野良猫に分類されていた。
ただ、今回はお腹が大きくなって、子を産むのに最適と居座ったのだ。屋根裏を気に入って子猫を産んだ母猫は、大きなあくびをして目を閉じた。人慣れしているし、引き取って問題なければ……ありかも。
三毛のお母さん、三毛の子とサビの子。予定より数が増えちゃった。どうしようかしら。
「この子は女の子で、こっちの子は男の子?」
性別を確認するために口に出したら、家主の男性は静かな声で告げた。
「全部女の子ですよ」
「全部?」
きょとんとして、もう一度確認するが……これ、男の子じゃないの? サビ猫を抱き上げて確認したいが、子供達にダメと言った手前、覗き込むのが精一杯だった。家主の男性は微笑んで、そっと子猫を動かす。
母猫はちらりと視線を寄越した。それ以上触るなと警告しているように見える。前足に爪が出ちゃってるわ。唸るまではいかないけれど、緊張しているのは確かね。子猫が生まれて間もないのに、見慣れない人間が押しかけたんだもの。不安だと思うわ。
レオン達に少し離れるよう伝え、一緒に子猫を眺めた。見た感じ、白い黒靴下の子はお転婆さんね。サビの子は弱そうで、三毛はマイペースだ。白い子猫に、サビの子は踏まれて押し除けられている。手を貸したくなるが、我慢しないと。
「どの子を残すか、皆様はご相談しましたの?」
ご家族は言いづらいかも……と思って、侍従に問う。彼は屋敷での私の振る舞いを知っているからか、特に気負った様子なく答えてくれた。
「奥様が先に選ばれて構いませんが、サビの子を残そうと思っていました」
一番弱そうだから、というのが理由らしい。二匹を一緒に引き取るなら、元気な二匹を連れて行ったらどうかと提案された。白い子と三毛の子ね。マイペースな三毛の子は、母親のお乳を咥えたまま寝ていた。
「サビと三毛はどうかしら」
この組み合わせなら、お互いに不干渉でうまくいきそう。そう呟くと、家主の男性が頷いた。
「奥様のご意見もいいですな」
この家に残る子猫は、穀物倉庫の番をするんだもの。元気いっぱいな子がいいと考えた。マイペースな三毛と大人しいサビは、のんびり飼い猫の方が向いていると思うし。
「レオン、どの子が好き?」
「うんとね……このこ」
きょとんとしてしまう。目を見開いて、この子? と指差した。人間相手だったら、失礼なんてものじゃないけど。レオンは満面の笑みで大きく頷く。間違ってないみたい。
「……母猫よ?」
子猫じゃなくて、それは母猫で……。でもレオンにとっては、大切な唯一の猫なのでしょうね。飼うなら母猫がいいと笑う幼子に、何て答えたらいいのかしら。
「このお家の猫なのよ」
「いや、違いますぞ」
家主に否定され、言葉を止めた私に、意外な事実が告げられた。母猫はたまに立ち寄るだけで、この家の猫ではないらしい。周辺の家の飼い猫でもないので、野良猫に分類されていた。
ただ、今回はお腹が大きくなって、子を産むのに最適と居座ったのだ。屋根裏を気に入って子猫を産んだ母猫は、大きなあくびをして目を閉じた。人慣れしているし、引き取って問題なければ……ありかも。
三毛のお母さん、三毛の子とサビの子。予定より数が増えちゃった。どうしようかしら。
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