213 / 274
213.王妃殿下のご友人 ***SIDE公爵夫人
しおりを挟む
表に出せない事情があって、しばらく茶会の開催を控えた。一般的には不幸と称されるが、王妃殿下にとっては幸運らしい。長男である第一王子殿下が跡を継ぐことも確定し、何も不安がないのだろう。実際、あの国王陛下が不在でも、国政は問題なく動いた。侯爵家以下はまだ知らない話だ。
外交を王妃殿下が補い、内政をケンプフェルト公爵閣下が支える。国王が飾りだと、上位の貴族ほど知っていた。その王が崩御した報せを受けて、真っ先に感じたのが安堵だなんてね。なんとも皮肉なこと。
ケンプフェルト公爵夫人は、旅行先でケガをされた。その前に何度も陛下が無茶を言うので、遠ざけるための旅行だったようだ。さらに追い討ちをかけるように手紙が届き、夫人は歩けないほどのケガを負う。これは陛下の要請を断る口実だと思ったわ。
けれど違った。ケンプフェルト公爵夫人は骨折し、屋敷を改造したと。入ってくる情報に混乱しながら、王妃殿下の茶会を思い出す。あの時、わざと仲のいい夫婦であると喧伝したけれど、あれは本当だった。仮面夫婦の噂はもう古いのだと、認識を改めた。
今回のお茶会にお招きしたのは、彼女の為人を確かめるため。交友関係を引き締めていた王妃殿下が、友人と称する女性と話してみたかったの。穏やかで常識があって、貴族特有の気取りがなかった。一緒にいて楽で、長く交友したいと感じさせる素晴らしい人よ。生さぬ仲のレオン様を可愛がるお姿も素敵ね。
社交界は人を騙し、裏を読んでばかり。殺伐とした世界で揚げ足取りをされないよう頑張った結果、悪い意味で有名になっていた。あの苦労を、アマーリア様に味わわせたくない。歪まないよう、私がお守りしなくては。
決意した直後、ティール侯爵家の次男がやらかした。何度も騒動を起こし、注意してきたのに。抑えきれないなら、除籍するべきだった。家を守るのが夫人の役割、そのためには我が子すら切り捨てる覚悟が必要だ。もちろん、その前にきちんと教育できていたら、恥をかく事もない。
義務を怠った貴族など、落ちていくだけよ。レオン様を守るランドルフまで巻き込まれ、腹立たしさが募る。ケンプフェルト公爵は駆けつけるも、手前で公爵夫人を振り返った。アマーリア様が主導権を持っているのかしら。
泣かずに堪えるレオン様の表情が、なんとも痛々しい。お優しいアマーリア様は、あの悪童達を許すのか。その程度なら、私が気にかける人ではないかも……こんな場面でも、相手の裏を図ってしまう。自分でも最低だと苦笑いしたが、彼女は予想外の対応をした。
その後の騒動も含めて、私は面倒さより楽しみを覚える。お茶会を壊された腹立たしさもかき消すなんて、初めての経験だった。王妃殿下が彼女を友人に選んだこと、英断だわ。さすがは外交の女神ね。アマーリア様の友人に加えてもらえるよう、私も本領発揮と行こうかしら。
外交を王妃殿下が補い、内政をケンプフェルト公爵閣下が支える。国王が飾りだと、上位の貴族ほど知っていた。その王が崩御した報せを受けて、真っ先に感じたのが安堵だなんてね。なんとも皮肉なこと。
ケンプフェルト公爵夫人は、旅行先でケガをされた。その前に何度も陛下が無茶を言うので、遠ざけるための旅行だったようだ。さらに追い討ちをかけるように手紙が届き、夫人は歩けないほどのケガを負う。これは陛下の要請を断る口実だと思ったわ。
けれど違った。ケンプフェルト公爵夫人は骨折し、屋敷を改造したと。入ってくる情報に混乱しながら、王妃殿下の茶会を思い出す。あの時、わざと仲のいい夫婦であると喧伝したけれど、あれは本当だった。仮面夫婦の噂はもう古いのだと、認識を改めた。
今回のお茶会にお招きしたのは、彼女の為人を確かめるため。交友関係を引き締めていた王妃殿下が、友人と称する女性と話してみたかったの。穏やかで常識があって、貴族特有の気取りがなかった。一緒にいて楽で、長く交友したいと感じさせる素晴らしい人よ。生さぬ仲のレオン様を可愛がるお姿も素敵ね。
社交界は人を騙し、裏を読んでばかり。殺伐とした世界で揚げ足取りをされないよう頑張った結果、悪い意味で有名になっていた。あの苦労を、アマーリア様に味わわせたくない。歪まないよう、私がお守りしなくては。
決意した直後、ティール侯爵家の次男がやらかした。何度も騒動を起こし、注意してきたのに。抑えきれないなら、除籍するべきだった。家を守るのが夫人の役割、そのためには我が子すら切り捨てる覚悟が必要だ。もちろん、その前にきちんと教育できていたら、恥をかく事もない。
義務を怠った貴族など、落ちていくだけよ。レオン様を守るランドルフまで巻き込まれ、腹立たしさが募る。ケンプフェルト公爵は駆けつけるも、手前で公爵夫人を振り返った。アマーリア様が主導権を持っているのかしら。
泣かずに堪えるレオン様の表情が、なんとも痛々しい。お優しいアマーリア様は、あの悪童達を許すのか。その程度なら、私が気にかける人ではないかも……こんな場面でも、相手の裏を図ってしまう。自分でも最低だと苦笑いしたが、彼女は予想外の対応をした。
その後の騒動も含めて、私は面倒さより楽しみを覚える。お茶会を壊された腹立たしさもかき消すなんて、初めての経験だった。王妃殿下が彼女を友人に選んだこと、英断だわ。さすがは外交の女神ね。アマーリア様の友人に加えてもらえるよう、私も本領発揮と行こうかしら。
1,494
お気に入りに追加
4,241
あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

罠に嵌められたのは一体誰?
チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。
誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。
そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。
しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?


【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・
せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?
石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。
彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。
夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。
一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。
愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる