195 / 274
195.予想の斜め上の昼食
しおりを挟む
カウチソファーでのんびり過ごし、お昼は温室で頂くことにした。午前中は暖かいのだけれど、お昼を過ぎると風が冷たいんですって。その点、温室なら気温に左右されにくいわ。
お心遣いに感謝して移動する。小さな紳士は、私の手を引いて歩いた。先程までルイーゼ様と夢中になって遊んでいたのに、すぐに飛んできてくれたのよ。抱きついてたくさんの感謝を示したわ。嬉しそうに頬を赤く染めて、レオンは得意げに歩く。
レオンの様子に感化されたのか、ルイーゼ様もマルレーネ様と手を繋ぎたがる。頷いてしっかり指を絡めたマルレーネ様は、穏やかな表情でとても嬉しそうだった。二組の親子が並んで温室に到着すると、すでに先客がいた。
ヘンリック様は立ち上がって一礼し、私達に駆け寄った。得意げに胸を張るレオンを褒め、私の疲れや痛みを気遣う。一緒に並んで椅子に座った。こちらでは見かけないタイプの椅子ね。背もたれがなくて、スツールのような。でも四角い箱には装飾が施され、美しい刺繍入りのクッションが敷かれていた。
「綺麗ですね」
座りやすいわ。背もたれがあっても、貴族は食事の際に寄りかからないのがマナーだった。背もたれは不要なのよね。すでにきちっと座っているのは、王子様二人。向かい側で王妃マルレーネ様と並んだ。ルイーゼ様は澄ました顔で、クッションを重ねて座る。
「レオンはお膝でいいかしら?」
「ううん、ぼくも、しゅわる」
私とヘンリック様の間にクッションを重ね、レオンを乗せた。本人は楽しそうだけれど、崩れそうで怖いわ。
「こちらをお使いください」
王宮の侍女が用意したのは、別の椅子だった。上にクッションを重ねるのではなく、下に下駄を履かせた感じ。ああ、この表現は伝わらないかしら。足を継ぎ足してあるの。お陰で、見た目は同じデザインの椅子に見えるのよ。高さが違うだけ。
レオンは素直に座り直した。向かいで不満を表明していたルイーゼ様だけれど、レオンが受け入れたと知るや大人しくなる。高くなった分、視線が近づいて嬉しいわ。
王家の四人とケンプフェルト公爵家の三人。丸いテーブルに用意されたのは、大きなお皿に盛った料理だった。骨付き肉……また汚しそうなお料理ね。
「手で持って食べてみたかったのよ」
マルレーネ様はふふっと笑い、用意された紙ナプキンで骨を掴んだ。前の世界で言う、チューリップに近い状態の鶏肉だ。同じように私達も手に持った。初めての作法に困惑気味なのは、カールハインツ様だ。
こういうものと受け入れたのはローレンツ様やルイーゼ様。レオンは皆がしているから問題ないと思ったのか、両手で肉を掴んで齧り付く。口の周りが汚れるけれど、これは楽しい。前世のバーベキューとか、流行るかもしれないわ。
ただ、お客様を呼んでの昼食会には向かない。家族や親族だけなら……いけるかも。ドレスの袖が七分くらいで助かったわ。フリル部分に付かないように気をつけなくちゃ。そんな私の心配をよそに、マルレーネ様はドレスを平然と汚した。
これが王侯貴族……私もこれに慣れないといけないのよね。無理そうだわ。まず洗濯の手間とドレスの金額が脳裏に浮かぶもの。貧乏性は仕方ない。でも今日は気にしないのがマナーだわ。勢いよく齧り付いた。
お心遣いに感謝して移動する。小さな紳士は、私の手を引いて歩いた。先程までルイーゼ様と夢中になって遊んでいたのに、すぐに飛んできてくれたのよ。抱きついてたくさんの感謝を示したわ。嬉しそうに頬を赤く染めて、レオンは得意げに歩く。
レオンの様子に感化されたのか、ルイーゼ様もマルレーネ様と手を繋ぎたがる。頷いてしっかり指を絡めたマルレーネ様は、穏やかな表情でとても嬉しそうだった。二組の親子が並んで温室に到着すると、すでに先客がいた。
ヘンリック様は立ち上がって一礼し、私達に駆け寄った。得意げに胸を張るレオンを褒め、私の疲れや痛みを気遣う。一緒に並んで椅子に座った。こちらでは見かけないタイプの椅子ね。背もたれがなくて、スツールのような。でも四角い箱には装飾が施され、美しい刺繍入りのクッションが敷かれていた。
「綺麗ですね」
座りやすいわ。背もたれがあっても、貴族は食事の際に寄りかからないのがマナーだった。背もたれは不要なのよね。すでにきちっと座っているのは、王子様二人。向かい側で王妃マルレーネ様と並んだ。ルイーゼ様は澄ました顔で、クッションを重ねて座る。
「レオンはお膝でいいかしら?」
「ううん、ぼくも、しゅわる」
私とヘンリック様の間にクッションを重ね、レオンを乗せた。本人は楽しそうだけれど、崩れそうで怖いわ。
「こちらをお使いください」
王宮の侍女が用意したのは、別の椅子だった。上にクッションを重ねるのではなく、下に下駄を履かせた感じ。ああ、この表現は伝わらないかしら。足を継ぎ足してあるの。お陰で、見た目は同じデザインの椅子に見えるのよ。高さが違うだけ。
レオンは素直に座り直した。向かいで不満を表明していたルイーゼ様だけれど、レオンが受け入れたと知るや大人しくなる。高くなった分、視線が近づいて嬉しいわ。
王家の四人とケンプフェルト公爵家の三人。丸いテーブルに用意されたのは、大きなお皿に盛った料理だった。骨付き肉……また汚しそうなお料理ね。
「手で持って食べてみたかったのよ」
マルレーネ様はふふっと笑い、用意された紙ナプキンで骨を掴んだ。前の世界で言う、チューリップに近い状態の鶏肉だ。同じように私達も手に持った。初めての作法に困惑気味なのは、カールハインツ様だ。
こういうものと受け入れたのはローレンツ様やルイーゼ様。レオンは皆がしているから問題ないと思ったのか、両手で肉を掴んで齧り付く。口の周りが汚れるけれど、これは楽しい。前世のバーベキューとか、流行るかもしれないわ。
ただ、お客様を呼んでの昼食会には向かない。家族や親族だけなら……いけるかも。ドレスの袖が七分くらいで助かったわ。フリル部分に付かないように気をつけなくちゃ。そんな私の心配をよそに、マルレーネ様はドレスを平然と汚した。
これが王侯貴族……私もこれに慣れないといけないのよね。無理そうだわ。まず洗濯の手間とドレスの金額が脳裏に浮かぶもの。貧乏性は仕方ない。でも今日は気にしないのがマナーだわ。勢いよく齧り付いた。
1,414
お気に入りに追加
4,249
あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ
青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。
今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。
婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。
その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。
実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。



結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

皇太女の暇つぶし
Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。
「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」
*よくある婚約破棄ものです
*初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる