【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
184 / 274

184.大量のお揃い購入

しおりを挟む
 ヘンリック様の注文した衣装が大量に届き、上級使用人達は大忙しとなった。お茶会用と夜会用を分類して、さらに誰の服か判断して片付ける。ところがお揃い衣装に関しては、一緒に保管した方がいいのでは? と意見が出て混乱した。

 普段使っていない二階の主寝室を、一時的に保管部屋にすることで決着する。お揃いコーデの服は、すべて一緒に運び込まれた。

「たくしゃん!」

 興奮して飛び跳ねるレオンを、エルヴィンに捕まえてもらう。業者の人にぶつかったら、お互いにケガをしてしまうわ。ヘンリック様は嬉しそうだけれど、いったい何着注文したのかしら。途中から数えるのも諦めてしまった。あとでイルゼかフランクに聞いてみましょう。

「あら、忘れていたわ」

 いつもは社交をしないお父様も、即位式の欠席はできない。納品中の店主に、お父様の衣装を追加で発注した。夜会用なのであまり見窄らしい格好もできないわ。あれこれと手配し、一息ついたのはお昼過ぎだった。

「王宮にお伺いするのは、即位して一ヶ月くらい経ってからがいいわね」

「なぜだ?」

「え……っと。あちらも慌ただしいだろうし、落ち着いてからがいいと思ったの」

 心底不思議そうなヘンリック様の問いかけに、私はしどろもどろに理由を伝える。結婚式後や新築のお祝いもそうだけれど、騒ぎが一段落してからの方が助かるはず。マルレーネ様も同じだと考えた。

「式の準備は、文官や儀礼担当の神官が行う。当人達はのんびりしたものだ」

 見てきたように話すヘンリック様は、王族の結婚式にも出ている。自らも準王族として儀式に出ることが多かったので、経験者として話したみたい。儀式は面倒な手順が多いから、専門の知識を持つ神官や文官が必要なのかも。

 一般家庭と比較してはいけなかったのね。

「侍女や侍従も大勢いる。主役である王族が動き回ることはないだろう」

 なるほど、納得した。屋敷の掃除や料理を、それぞれ担当する使用人がこなす。公爵夫人となった私が作業することはない。それと同じね。貧乏伯爵家の時は、自分で全部行ったわ。実は洗濯とか得意なのよ。

「でしたら、少ししたらお伺いを出しましょうか」

 当事者が何も準備をしないなら、多少は時間があると思う。そんな思いで、お伺いを出そうと提案した。忙しければ、今は無理と返事があるはずよ。

「……いや、マルレーネ王妃から手紙が来ているぞ」

 驚いた私に差し出されたのは、確かに王家の封蝋がされた封筒だ。開封された手紙を取り出し、さっと目を通した。遊びにいらっしゃいな、そんな意味合いだった。

「何を着ていこうかしらね」

 購入したばかりで、色も形も不明のドレスを思って天井を眺める。即位式までに、歩く許可が出るといいけれど。ちらりと足を見て、頭の中で予定を確認した。
しおりを挟む
感想 640

あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

皇太女の暇つぶし

Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。 「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」 *よくある婚約破棄ものです *初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。

久遠りも
恋愛
美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。 ※一話完結です。 ゆるゆる設定です。

処理中です...