【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
149 / 274

149.レオンからの素敵な贈り物

しおりを挟む
 ベッドの住人になって二日目、早くもダメ人間になりそう。動かないのが苦痛なのだけれど、通り越すと楽になるのね。チリリンとベルを鳴らせば、リリーやベルントが対応してくれる。このまま快適さに慣れたら、動かない奥様になってしまうわ。

 ヘンリック様の情報では、車椅子を製作しているらしい。この世界にもあるのね、と驚いた。今まで見たことがなかったので、松葉杖くらいならお願いできるかと思っていたの。車椅子に合わせ、玄関ホールにスロープも作るのだとか。随分とお金がかかりそう。

「アマーリア、お金の心配はしなくていい。君は体を治すことだけ考えるんだ」

 つい、お金がかかるならやめていいと口にして、ヘンリック様に叱られた。ふふっ、こんなの珍しいわ。王都の屋敷から、以前に注文したドレスが届いたと連絡が入った。入れ替わりに私のケガを連絡したらしい。

 心配させてごめんなさいね。帰ったら謝りたいわ。こちらに来られないのに、ケガの情報だけもらっても……イルゼやフランクが気に病まないといいけれど。優しい二人を思い浮かべ、クッションに寄りかかった。

 ベッドから自由に降りられないものの、寝転がっていると体が鈍る。熱もだいぶ落ち着いて、昨日から楽になった。お医者様にも相談し、昼間は身を起こすようにしている。

「おかぁ、しゃま!」

 ぴょこんと顔が覗いた。可愛い天使がどんぐりの入った袋を差し出す。エルヴィンが煮沸して、双子と一緒に干したと聞いた。中庭で行った作業で、完成したどんぐりのお土産ね。

「くれるの? 何かしらね、レオン」

 知らないフリで袋を揺すってみせる。にこにこしながら、口元を両手で押さえるレオン。喋らないよ、と可愛い仕草で示された。リボンを結んだのはユリアーナね。上手にできているわ。

 摘んで解いて、リボンは脇に置いた。顔を近づけて、くんと匂う動きをする。ちらりと確認したら、レオンは興奮して一回転した。後ろ頭の毛が跳ねている。ゆっくりと中を覗いて、予想通りのどんぐりを手のひらに出した。

「まぁ、すごく立派などんぐりだわ。素敵ね、こんなのが欲しかったのよ」

「ほんちょ? うれち?」

 興奮して言葉が上手に出ないレオンは、紫の瞳を輝かせる。飛び上がってベッドに乗り出し、浮いた足をばたばたと揺らした。振動がベッドにも伝わる。

「ええ、本当に素敵! とっても嬉しいの。全部もらっていい?」

「うん、それ、おかぁしゃまの」

 僕のはここだよ。別の袋を取り出して、自慢げに見せる。それから青いリボンが結ばれた別の袋も出てきた。

「これ、おとちゃまの」

「きっと喜んでくれるわ」

 今のヘンリック様なら念押ししなくても平気よね。笑顔で受け取るだろう夫を予想し、私はじわりと頬が赤くなるのを感じた。なぜかしら、急に熱が上がったのかも。
しおりを挟む
感想 640

あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

皇太女の暇つぶし

Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。 「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」 *よくある婚約破棄ものです *初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです

美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。

久遠りも
恋愛
美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。 ※一話完結です。 ゆるゆる設定です。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

助けた青年は私から全てを奪った隣国の王族でした

Karamimi
恋愛
15歳のフローラは、ドミスティナ王国で平和に暮らしていた。そんなフローラは元公爵令嬢。 約9年半前、フェザー公爵に嵌められ国家反逆罪で家族ともども捕まったフローラ。 必死に無実を訴えるフローラの父親だったが、国王はフローラの父親の言葉を一切聞き入れず、両親と兄を処刑。フローラと2歳年上の姉は、国外追放になった。身一つで放り出された幼い姉妹。特に体の弱かった姉は、寒さと飢えに耐えられず命を落とす。 そんな中1人生き残ったフローラは、運よく近くに住む女性の助けを受け、何とか平民として生活していた。 そんなある日、大けがを負った青年を森の中で見つけたフローラ。家に連れて帰りすぐに医者に診せたおかげで、青年は一命を取り留めたのだが… 「どうして俺を助けた!俺はあの場で死にたかったのに!」 そうフローラを怒鳴りつける青年。そんな青年にフローラは 「あなた様がどんな辛い目に合ったのかは分かりません。でも、せっかく助かったこの命、無駄にしてはいけません!」 そう伝え、大けがをしている青年を献身的に看護するのだった。一緒に生活する中で、いつしか2人の間に、恋心が芽生え始めるのだが… 甘く切ない異世界ラブストーリーです。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

処理中です...