【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
139 / 274

139.きらきらする宝物発見

しおりを挟む
 午後は予定通り街におり、皆で様々な店舗に立ち寄った。物を購入しなくても、見て回るだけでも楽しい。お昼に合わせて、ケーキが納品された。そのため帽子も戻ってきている。同じ帽子を被り、ケーキ屋に足を運ぶ。

 届けられたケーキと帽子のお礼を伝え、ケーキにアドバイスを一つ。お皿に直接ケーキを置かず、紙の敷物を使ってはどうか。その紙を飾り切りにしたり、色をつけることで豪華さを演出できると教えた。

 前世の記憶だけれど、このくらいはいいわよね。帽子の形が崩れないよう、箱に入れて返してくれたお礼だもの。

「手紙はよろしいのですか?」

 心配するお父様に、ヘンリック様は肩を竦めた。

「構わない。俺は療養中だ。妻子と出かけて、まだ開封もできないくらい忙しい」

 以前は、仕事で忙しくさせられたんだもの。このくらいのお返しはしても構わないと思うわ。私が微笑んで頷けば、ヘンリック様も満足そうだった。

「すっかり娘に毒されてしまって……」

 やれやれと口にしながらも、お父様だって笑ってるじゃない。これは不敬でも何でもないのよ。療養のための休暇中で、手紙を読むのが遅れただけなの。緊急である赤ラインがないから、後回しにしてしまった。よくあることよ、きっと。

「おかしゃま、これ」

 手を繋ぐレオンに引っ張られ、足を止めて視線を向ける。お店に並ぶのは、きらきらと光を弾くガラスの粒だった。それ自体は珍しくないけれど……滅多に見かけない形をしていた。球体ではなく、おはじきのように平べったくて丸い。

「何に使うのかしら」

「俺も知らないな。見てみよう」

 ヘンリック様はレオンと手を繋ぎ、私も連れて入店する。ユリアンは一つ手に取り、外から差し込む光に翳した。金属が入っているみたいに、濁った銀色をしている。隣のガラスは赤、こちらは透き通っていた。

「ボタンみたい!」

 ユリアーナは穴の空いたガラスを手に取り、自分の服に当てる。大きいビーズ、いいえ、ボタンの方が近いわね。親指の爪ほどもあるガラスに、誰もが興味津々だった。店頭にあるのだから、売り物だろう。

 奥で船を漕ぐ老女に尋ねると、娘の作品だと教えてくれた。裏にいると聞いて、騎士が呼びに行く。エルヴィンはさらに小さなガラスを見つけ、手のひらで転がした。

「この小さいのは見事ですね」

「ほお、これは凄いな」

 お父様も感嘆の声をあげる。レオンはつんつんと指先で触れ、首を傾げた。

「どうしたの?」

「あか、あたかくない」

 お高くない? 違うわね、温かくない……だわ。

「そうね、赤い色は温かいの?」

「うん」

 子供らしい感性ね。色と温度、重さなどを絡めて独自の世界を作る。大人になると失われることが多いから、否定したくない。

「こっちは?」

「ちゅめたいの」

 黄色は冷たい。他の色も尋ねようとしたところに、製作者である娘さんが入ってきた。明らかに貴族の御一行様に固まるが、事情を説明して何に使うものか教えてもらう。

「服につける装飾品にしたくて、試しに作ったものです」

 装飾用のボタンやビーズの試作品ね。素敵だわ。特産品になりそう。
しおりを挟む
感想 636

あなたにおすすめの小説

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?

石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。 彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。 夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。 一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。 愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

国境に捨てられたら隣国の若き公爵に拾われました

宵闇 月
恋愛
ゲームの悪役令嬢に転生し、国境に捨てられたら隣国の公爵にお持ち帰りされました。

【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~

瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)  ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。  3歳年下のティーノ様だ。  本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。  行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。  なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。  もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。  そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。  全7話の短編です 完結確約です。

処理中です...