【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
136 / 274

136.好き嫌いが始まったわね

しおりを挟む
 朝食は家族全員で頂いた。その後、エルヴィン達は勉強がある。双子は不満そうだけれど、街に下りるのは午後からだと伝えた。きちんとお勉強したら連れていくと約束し、レオンとヘンリック様を振り返る。

 ヘンリック様のお膝に座るレオンが、手にしたスプーンでスープを示した。

「あかいの、たべゆ」

 緑のお野菜を避けたのね? 悪い子だわ。私が気づいていないと思ったのかしら。ヘンリック様が確認するように私に視線を向けた。さっきも赤いお野菜を食べたから、同じでいいかと問うているのね。笑顔で首を横に振った。

「レオン、こっちはどうだ」

「やっ」

 ぷいっとそっぽを向いて……私と目が合った。自分でもマズイと思ったのか、ぽかんと開けた口を手で覆う。そのまま顔も覆ってしまった。

「悪い子だと悲しいわ、レオンはいい子だから食べられるわよね?」

 そっと緑の野菜が載ったスプーンを差し出す。ちらっと隙間から確認し、しばらく動かなかった。葛藤していたようで、諦めることにしたみたい。小さな手が下ろされ、口が開く。でも今までより小さく……嫌だと示しながら。

 好き嫌いが出てきたのは、レオンが成長している証だ。我が侭は構わないけれど、全部叶えるわけにいかないのよ。スプーンでつつくと、仕方なさそうに口に入れた。実際食べると美味しいのか、口元が綻ぶ。

 色が嫌なのかしら。それとも別の理由? 細かくしてスープにとろみを付けたら気づかなかったりして。つい料理方法まで思考が飛び、慌てて引き戻す。まずは食べさせることに集中しましょう。レオンはその後は文句を言うでもなく、素直に出された物を食べた。

「……アマーリアが出すと食べるのか」

 ヘンリック様がしょんぼりと肩を落としている。自分が出しても食べなかった緑の野菜を、私のスプーンからは食べたのがショックだったのね。

「私は無理にでも食べさせてきましたから、諦めたんでしょうね」

 慰めて、ヘンリック様にも野菜を差し出した。ぱくりと食べて「おいしいのに」と呟いている。ふふっ、やっぱり大きな子供だわ。思い通りにいかなくて拗ねている感じがする。

「午前中は温泉です。急がなくちゃね」

 急かして準備を終えた私達は、ログハウスの裏側へ向かった。ベルントと数人の騎士、それから管理人夫妻だ。リリーやマーサにも同行してもらった。

 街へ行くより近い距離、色付いた葉を拾いながら歩くレオンは、両手がいっぱいだった。預かると言って、マーサが葉っぱを籠に入れる。どんぐりを拾い、しゃがみ込んで石も選び始めた。

「レオン、早くお風呂に入りましょう。寒くなっちゃうわ」

「うん!」

 拾った石を捨てて、元気に走ってくる。荷物をリリーに預け、広げた両手でレオンを受け止めた。抱き上げたら、小さな手がもじもじと動いている。石や葉に触れたので、手が汚れたのね。気にしていた。

「お風呂に入る前に手を洗うから平気よ」

「うん……でも、おごれたうよ?」

 意味を理解できず、少し考える。今の流れだと「汚れちゃう」だろう。

「汚れたら洗えばいいのよ」

「あい!」

 元気に返事をする。よかったわ、予測は合ってたみたい。すごいですねと感心する声がして、リリーがそうでしょうと応じる。後ろの騎士達から尊敬の目で見られてしまった。
しおりを挟む
感想 640

あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

皇太女の暇つぶし

Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。 「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」 *よくある婚約破棄ものです *初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。

久遠りも
恋愛
美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。 ※一話完結です。 ゆるゆる設定です。

国境に捨てられたら隣国の若き公爵に拾われました

宵闇 月
恋愛
ゲームの悪役令嬢に転生し、国境に捨てられたら隣国の公爵にお持ち帰りされました。

処理中です...