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109.おてまぎの返事

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 レオンは家族全員の分を描くと勢い込んだ。私、ヘンリック様、お父様、エルヴィン、双子達。ここで終わりかと思ったら、フランクやベルント、イルゼにリリーやマーサへも波及した。

「たくさん描いたわね」

「うん」

 一緒に過ごす人を家族と認識したのかしら。まだ主人と使用人の関係を教えるのは、早い時期よね。いっぱい褒めて、一つずつ丸めた。封筒に入れるとしたら折らないといけないでしょう? だから丸めてリボンで結ぶ。裏の左端は見えるので、そこに宛名を書いた。

 フランクの用意してくれたリボンは、二色。今までリボンを使う人がいなかったから、あまり用意がなかった。誰かに贈り物をする際も、お店の方が綺麗に梱包してくれるものね。今後のために数色買い足してくれるよう頼む。

 レオンはご機嫌で、届けに行くと言い出した。もうすぐヘンリック様が帰宅するので、食事の時に渡すのはどうかと提案する。

「おてまぎ、すぐくる?」

 返事の早さを気にしているようね。早いと明日、遅いとその次の日よ、と教えた。今回のお届け先は、そのくらいで返ってくるはずだった。レオンはわくわくしているようで、もっと早く手紙のやり取りをさせてもよかったかな、と思う。

 あまり子供扱いしすぎない方がいいのかも。レオンは言葉が少し未熟だけれど、すごく賢い。エルヴィンは努力して繰り返し学ぶタイプで、双子はあまり勉強が好きではなかった。その三人と比べる形で申し訳ないけれど、明らかに物覚えがいいの。

 仕事の書類や相手のお名前、顔を一瞬で覚えると聞いたから、ヘンリック様に似たのね。帰宅の連絡を待って、ヘンリック様にお渡しする。笑顔でありがとうと受け取ってもらい、レオンも満足そうだった。家族にも、持ち帰って返事をくれるよう伝える。

 翌日、さっそくお返事があった。寝ているレオンに届いたのは、イルゼとフランクから。リリーとマーサが追加で積み重ねた。ベルントはヘンリック様のお世話が終わると、すぐに持ってくる。ここで、ようやくレオンの目が覚めた。

「おてまぎ! きた!」

「ええ、たくさん届いたわ」

 どうぞと渡す。個性が光るわね。絵でもらったから絵で返したのは、イルゼを含む女性陣。フランクは丁寧に文字で長文のお礼を記し、お洒落な返信をくれたのがベルントだ。彼は文字を絵のように崩して表現した。すごく上手だわ。

「これ! ねこたん」

「……そうね」

 微笑んで肯定したが、リリーの絵は猫か犬か……はたまた違う動物か。判断が難しいわね。私よりは上手だと思うけれど……マーサとイルゼは特徴を掴んだ上手な絵だった。

 ヘンリック様やお父様達は、どんなお返しをくれるのかしら。楽しみね、レオン。
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