【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
107 / 274

107.褒める時は名前を呼んでね

しおりを挟む
 離れのお父様達が出迎えてくれた。一緒に食堂へ向かい、美味しく食事をいただく。この頃、双子のテーブルマナーが良くなってきたわ。お父様が教えたのかと思ったら、なんとイルゼの指示で侍女が派遣されていたの。

「そんなことになっていたのね」

「勝手をして申し訳ございません」

「いいえ、助かったわ。ありがとう、イルゼ」

 公爵のヘンリック様と同席する、双子のマナーが気になったのね。厳しく躾けなくてもいいけれど、不快感が減るようにと配慮してくれたみたい。お世辞ではなく、とても助かるわ。今後教えるべきことだもの。

 派遣されたのはリリー達と同格のメイドで、元子爵家の三女だという。後で紹介してもらう約束をした。あの双子を手懐けた手腕といい、乳母もできそうよ。優秀な人材は把握しておくに限る。

「確かに、カトラリーの扱いが上手になっている」

「旦那様、褒める時は名前を呼ぶ方が効果的ですわ。誰が誰を褒めたのか、はっきりした方が嬉しさが増しますでしょう?」

「なるほど。気を付けよう。感謝する、アマーリア」

 部下に対しても使えると思います。叱る時は名指ししなくてもいいですし、人目がないところで注意する方がいいでしょう。でも褒める時は人前で、その人の名前を呼ぶ。ヘンリック様の好感度アップに貢献しますよ。

 雑談をしながら、美味しかった魚を食べきる。白身魚なのだけれど、オレンジのフルーツソースが掛かっていたわ。とても美味しいし、柔らかくて食べやすいの。レオンも喜んで食べていた。普段の倍は食べたかしら。

「ぼく、このおしゃかにゃ……お、さ、かにゃ……? お、さ、か、な! すき」

 一言ずつ区切って発音したら言えた! 興奮して報告するレオンが可愛くて、ぎゅっと抱きしめる。こんなに可愛くて、どうしましょう。お魚は、子供に発音しづらいのよ。レオンは特にそうね。

「偉いわ、レオン。今のは完璧だったの。お母様も嬉しくなるわ」

「ほんと?」

「ええ、レオンに嘘なんてつかないから安心してね」

 頬を擦り寄せると、レオンは手にしていたパンをお皿に置いた。胸元に掛けているナプキンを引っ張り、丁寧に手を拭く。待っていると、笑顔で抱きついた。

「ありがとう、レオン」

「うん」

 手が汚れているから、拭いて抱きついた。簡単なことだけれど、こんな幼い子が気を遣うなんて。優しい子だわ。ちゅっと頬にキスをしたら、双子が「お姉様がよくしてくれたっけ」と笑った。

 目を丸くしたヘンリック様は、じっと凝視している。固まっている感じで、私が首を傾げても動かなかった。

「ヘンリック様?」

「あ、いや……なんでも、ない」

 何か気になるのかしら。ときどき、王宮へ仕事に行く話をして、その夜は別れた。お父様やエルヴィンは驚いて絶句し、双子は興奮して大喜び。レオンは釣られて、一緒に絨毯の部屋を走り回っていたわ。

 お風呂上がりのレオンに絵本を読み聞かせ、眠ってしまった幼子の頬を撫でる。黒髪に縁取られた白い肌は、少し日焼けしていた。

「大好きよ、レオン」

 額にキスをして、隣に横たわった。ヘンリック様におやすみなさいの挨拶を言い忘れたことに思い至り、身を起こしかける。……契約妻が夜の寝室へ行くと勘違いされそうだわ。明日、朝の挨拶をきちんとすればいいわよね。力を抜いて、柔らかなベッドに身を沈めた。
しおりを挟む
感想 640

あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

皇太女の暇つぶし

Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。 「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」 *よくある婚約破棄ものです *初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

【完結】ずっとやっていれば良いわ。※暗い復讐、注意。

BBやっこ
恋愛
幼い頃は、誰かに守られたかった。 後妻の連れ子。家も食事も教育も与えられたけど。 新しい兄は最悪だった。 事あるごとにちょっかいをかけ、物を壊し嫌がらせ。 それくらい社交界でよくあるとは、家であって良い事なのか? 本当に嫌。だけどもう我慢しなくて良い

出て行ってほしいと旦那様から言われたのでその通りにしたら、今になって後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
コルト第一王子と婚約者の関係にあったエミリア。しかし彼女はある日、コルトが自分の家出を望んでいる事を知ってしまう。エミリアはそれを叶える形で、静かに屋敷を去って家出をしてしまう…。コルトは最初こそその状況に喜ぶのだったが、エミリアの事を可愛がっていた国王の逆鱗に触れるところとなり、急いでエミリアを呼び戻すべく行動するのであったが…。

処理中です...