【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
92 / 274

92.赤ちゃんでもいいの

しおりを挟む
 参加したのは公爵家が三つ、ケンプフェルト家、バルシュミューデ家、リースフェルト家だ。第二王子殿下は、同年齢の令息がいるバルシュミューデ公爵の席に着いた。だが、すぐにリースフェルト公爵のテーブルへ移ったらしい。

 リースフェルト公爵家には八歳になる令嬢がいる。くるんとカールした髪が愛らしい金茶の髪の彼女が、お気に召したようだ。お澄ましして隣に座る第二王子殿下だが、普段はやんちゃで手が付けられないのよとマルレーネ様は笑った。

「第二王子殿下の初恋でしょうか」

「淡い初恋は実らないと聞くけれど……」

 ふふふと大人の余裕で、マルレーネ様と笑い合う。ヘンリック様は二つのテーブルへ挨拶のために向かった。私も一緒にと申し出ようとしたけれど、マルレーネ様をお一人で残してしまう。それはさすがに失礼だと判断した。

 正式な紹介はお茶会より夜会の方がいいと教えてもらい、マルレーネ様にお礼を伝える。目を丸くして驚くので首を傾げると、理由を教えてくれた。上位の貴族は礼を口にする機会が少ないのだと。そういえば、フランクにも言われたわね。

「私は逆の考えを持っております。上に立つ者ほどお礼を口にするべきと思いますわ。民の納める税で暮らし、彼らの献身で生活しているんですもの」

 言ってから、失礼に当たるのでは? と焦る。ところが、マルレーネ様は私の考え方を受け入れた。それどころか褒められてしまう。

「素晴らしいわ、その考えは私も大切にいたしましょう。誰だってお礼や褒め言葉は嬉しいはずよ。積極的に使っていくようにするわね」

 まさかの大絶賛に、固まってしまった。ちらりと周囲を窺えば、注意がこちらに向いている。

「おかしゃま、これ……ほちぃ」

 指さされたお菓子を、侍女に指示する。屋敷内なら私が取り分けるけれど、今回は正式な社交の場だから。勝手な振る舞いは公爵家の名に泥を塗る。綺麗な金縁の絵皿に取り分けたお菓子を受け取り、レオンの前に置いた。

 じっと見つめるレオンが、ぱくっと口を開ける。

「あーっ!」

 しまった。この対策を忘れていたわ。いつも私が食べさせるから、レオンにとって食事は口を開けて待つ行為になっている。動揺した私に、助け舟を出したのはヘンリック様だった。

「レオン、俺が食べさせてやろう」

「おとちゃまが? うん」

 椅子の上で器用に向きを変え、レオンはヘンリック様に向き直る。切り分けた焼き菓子がレオンの口に入った。

「赤ちゃんみたいだ」

 飛んできた子供の声に、傷ついてしまうのでは? そう心配した私をよそに、レオンはまったく気にしていない。図太いというか、逞しいと表現するべきか。きょとんとした様子で、声を上げたリースフェルト公爵令息を見つめた。

 こてりと首を傾けて考え、今度は反対に首を傾げる。私を振り返り、至極真面目に尋ねた。

「ぼく、おかしい?」

「いいえ。成長はそれぞれよ。まだ三歳になったばかりだもの。レオンはこれでいいの」

「うん。ぼく、いいの」

 笑顔でそう言い放ち、また口を開けた。ヘンリック様の手が動かないので、ぺちぺちと叩いて促す。リースフェルト公爵家を睨んでいたヘンリック様がはっとして、レオンに二口目を運んだ。

「……陛下もこのくらい子煩悩ならよかったのに」

 マルレーネ様は小さく息を吐き、羨ましいわと付け加えた。
しおりを挟む
感想 636

あなたにおすすめの小説

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~

和泉鷹央
恋愛
 忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。  彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。  本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。    この頃からだ。  姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。  あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。  それまではとても物わかりのよい子だったのに。  半年後――。  オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。  サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。  オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……  最後はハッピーエンドです。  別の投稿サイトでも掲載しています。

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

処理中です...