【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
69 / 274

69.寝る子は育つと言うけれど

しおりを挟む
 席について、お父様やエルヴィン、双子の着席を見守る。前回のヘンリック様の指示を守り、今回も距離が近かった。こうなってくると、大き過ぎる机は交換した方がいいかもしれない。この辺はフランクと相談かしら。女主人の采配に含まれるか、確認しておきましょう。

「待たせてしまったか」

 急いできた様子のヘンリック様に、笑顔で着座を促す。

「大丈夫ですわ。ヘンリック様がお仕事から帰ったばかりなのは、皆が知っておりますもの。お座りになって」

 すぐ近くに用意された席に座り、すぐに料理が運ばれてくる。もう恒例になりつつある大皿が並び、そこでようやくヘンリック様が異変に気付いた。

「レオンの首が……その、折れているようだが」

「ふふっ、眠っております」

 赤ちゃんもそうだけれど、幼い頃って本当に体が柔らかい。猫のようにくにゃっとして、首が思わぬ方角に倒れるのよね。先ほど直したけれど、また傾いてきていた。

 レオンを抱き直し、眠っている顔を見せる。凝視したヘンリック様は、手を口の近くに寄せて、ほっとした顔になった。呼吸の確認されちゃったわ。でもわかるわ、最初の頃は焦ったもの。

 すっかり手慣れてきたけれど、育児は毎回違う。子供の個性もあるし、状況も変化した。だから毎回、初めての子育て気分でわくわくして、ドキドキする。

 それぞれの報告を兼ねた雑談を聞きながら、料理を選んで取り分けてもらった。抱っこしたレオンの安全を考え、スープはやめる。サラダもメインも垂れるソースやドレッシングが少ない場所を指定した。

「食べづらくないか?」

「起こしてしまいますので、このままで。お気遣いありがとうございます」

 断ったつもりはないけれど、状況を話したらヘンリック様の表情が曇った。余計な一言だったと悔やむ様子に、お礼を付け加える。ヘンリック様は驚いたように目を見開き、優しい笑みを浮かべた。

 こうして見るとお顔が綺麗。高位貴族は外見が整っているから、目の保養だわ。こういう美形って、外から見ているのが一番綺麗で楽しいのよね。前世の芸能人を推す感じに近いかも。

 料理を手早く口に運び、レオンの様子を窺う。起こして食べさせないと夜中にお腹が空きそうだ。でもこんなに気持ちよさそうに眠っているのに、邪魔をするのも可哀想。少し考えて、ベルントを呼んだ。

「ベルント、料理長に伝えてくれるかしら。冷めても食べられる料理を用意してほしいの。レオンが食べる分よ。きっと夜中にお腹が空くわ」

「承知しました。手配いたします」

 これで一安心ね。家族の報告に続いて、ヘンリック様が口を開く。仕事の量を減らすため、各部署に新しい責任者を置いたんですって。前世の中間管理職よね? 頷きながら最後まで聞いて、ちょっとだけ気をつける点を話した。

 上と下から苦情や要望を受けて大変だろうから、給料を多めに支給すると喜ばれること。長く元気に働いてもらうため、権限を与えたら上の人間が邪魔をしないことも。あと、何かあったかしら。
しおりを挟む
感想 636

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?

石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。 彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。 夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。 一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。 愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

国境に捨てられたら隣国の若き公爵に拾われました

宵闇 月
恋愛
ゲームの悪役令嬢に転生し、国境に捨てられたら隣国の公爵にお持ち帰りされました。

処理中です...