【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
66 / 274

66.擽り合って笑う

しおりを挟む
 食べ終えたら、レオンははしゃいで走り回る。絨毯から下りてはダメと教えた。靴下は履いているけれど、靴じゃないと外を走れないのよ。繰り返し伝える。理由を尋ねる幼子に、お洗濯がどれほど大変か伝えた。目を丸くした後、靴下を指先で摘まんで眺める。

「奥様、そういったお話は……」

 控えてください。とリリーが忠告するが、これは大切なことなの。人に何かをしてもらう地位にいる限り、相手の努力を理解しない子は嫌われるわ。当たり前の世の中でも、感謝が邪魔になることはないの。

「いっぱぃ、あぃがと……する」

 いつもより慎重に話すレオンは「する」と発音できていた。たくさん話すこと、話しかけられることが良い方向へ働いている証拠ね。

「だから汚してはダメよ」

 うちの三人は、その辺は理解している。私がずっと洗濯をして干した服を畳んできたから。徐々にほつれたり、糸が切れたりして、補修する姿も見てきた。苦労する姉を間近で知っている三人は、うんうんと頷いていた。真似してレオンも首を縦に振る。

 やっぱり、幼い子には友達や兄弟姉妹が必要なんだわ。私が産む予定はないけれど、代わりにエルヴィンや双子が補ってくれる。レオンにとって最適の環境にしなくては!

「さあ、絨毯から下りないで遊ぶ方法を考えて」

「追いかけっこは狭いですね」

 さっそくエルヴィンが検討し始める。絵を描いたり何かを作ったりは、屋外なので却下された。何をするか迷うエルヴィンの足の裏を、ユリアンが擽った。

「うわっ!」

 驚いたのと擽ったくて足を丸めたエルヴィンが、後ろに転がった。目を輝かせたレオンが真似しようとして失敗する。後ろに寝転がっただけになっちゃったわ。きょとんとして、もう一度試す所作からは失敗した理由を理解していないことが伝わった。

「レオン、こうよ」

 くるっと足を丸めて体育座り、そこから後ろに転がるの。手足を広げたら失敗しちゃうわ。やって見せたら、マーサとリリーが同時に叫んだ。

「奥様! なんてことを」

 え? ダメだった? スカートは捲れないよう、しっかり膝で押さえていたのに。

「公爵夫人としては問題です」

「……問題なのね? 気を付けるわ」

 でんぐり返しは禁止、ちゃんと覚えておこう。もしかしたら、屋外だからダメなのかも。室内なら平気よねと尋ねたら、ダメですと再び叱られてしまった。

「おかしゃま……めっ?」

「ええ、めっ! ですって」

 レオンの言い方が可愛くて、くすくす笑いだしたら周囲にも笑顔が広がった。騎士もこっそり顔を背けているから、笑っちゃったのね。

 レオンは真似して転がり始め、ユリアンが加わり……大人ぶって知らん顔をしたユリアーナが巻き込まれる。ケンカを始めた双子を止めようとエルヴィンが入り、結局全員で擽り合って大笑いした。

「お昼寝するわよ」

 呼びかけてもしばらく来ないくらい、四人で擽り合って遠慮なく遊ぶ。いい傾向だわ。
しおりを挟む
感想 636

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?

石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。 彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。 夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。 一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。 愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

処理中です...