55 / 274
55.漠然とした不安があるみたい
しおりを挟む
お昼までお勉強というお絵描きをして、レオンははふっと大きな欠伸をした。お昼寝まで時間があるけれど、先に寝かせちゃおうかしら。
まだ時間に縛られない生活の許されるレオンは、日当たりのいい絨毯の上に寝転ぶ。うとうとする姿を見守っていると、ぱっと目を開いた。むくりと起き上がり、周囲を見回す。
「どうしたの?」
「……いないくない?」
痛くないと尋ねられたの? ひとまず「いいえ」と答えて、もう一度言葉を頭の中で確認する。いなくならない? と聞いたのね。
「ここにいるわ」
「……て、ぎゅっとして」
言われるまま手を握る。何か不安になっているみたい。眠い子供って温かいわね。しっかり手を握り、頬に押し当てた。にこりと笑って、レオンはまた目を閉じる。やっぱり寝ちゃうのかな。
隣に寝転び、レオンの顔を正面から見つめる。紫の瞳が見えないと、人形みたいだわ。長いまつ毛が頬に落ちて、不思議と大人びて見えた。一般的には目を閉じると幼く見えるんだけど。将来は丸い頬がしゅっとして、赤い唇は少し色が薄くなるのよね。
あら、絶世の美少年じゃないの。傾国になっちゃいそう。ふふっと笑う私に、レオンの寝息が聞こえてきた。後ろから忍び寄ったリリーが、上掛けをレオンに掛ける。
「奥様、ベッドに移動しましょうか」
「そうね……いえ、このままでいいわ」
抱き上げたら起こしてしまいそう。ぽかぽかする日差しの柔らかな午後、お腹がいっぱいだと眠気を誘われるわ。レオンと繋いだ手が、ふと気になった。
ここ最近は落ち着いていたのに、どうして不安になったのかしら。一人でお昼寝したこともあるのに、急に起きてまで手を繋ごうとするなんて。考えてみたものの、特に理由も思いつかない。
可愛い寝顔をしっかり堪能し、私も少しだけ休んだ。午後からお散歩したいと言っていたし、体力を回復しておかないとね。
「おか、しゃま! おきてぇ」
ぺちぺちと頬を叩かれ、目を開ける。驚く距離にレオンの顔があって、ぼやけて見えた。
「レオン? もう起きたのね」
「うん。おにわ、いく」
散歩に行こうと誘うレオンは、まだ手を繋いでいた。しっかり握っていたのが嬉しいようで、その手をゆらゆら左右に揺らす。起きたら、リリーにスカートを直された。結構しっかり寝てしまったようで、肩が痛いわ。
屋敷の敷地から出ないし、着替えるほどではない。彼女達にそう告げて、一緒に庭へ出た。並んで靴を履くと、また手を繋ぎたがる。快く受け入れ、庭の花を眺めながら木陰まで移動した。
疲れたようで足取りが重くなったレオンを抱き上げ、少し先の林まで行く。手前で戻る私の首にレオンが手を回した。ぎゅっと抱きつく姿は、年齢以上に幼く感じる。
変ね、赤ちゃん返りに似た行動の原因は何かしら。考えながらぽんぽんと背中を叩く。きっと漠然とした不安だろうから、聞いても原因がわからないでしょう。
「レオン、お母様はずっとレオンが好きよ。一緒にいるわ」
「……じゅっと?」
「ええ、ずっと」
不安を和らげるのが先決よね。ゆっくりした口調で言い聞かせながら、歩調も緩めた。レオンは私の髪を一房握り、小さく頷く。伝わったみたいね。
まだ時間に縛られない生活の許されるレオンは、日当たりのいい絨毯の上に寝転ぶ。うとうとする姿を見守っていると、ぱっと目を開いた。むくりと起き上がり、周囲を見回す。
「どうしたの?」
「……いないくない?」
痛くないと尋ねられたの? ひとまず「いいえ」と答えて、もう一度言葉を頭の中で確認する。いなくならない? と聞いたのね。
「ここにいるわ」
「……て、ぎゅっとして」
言われるまま手を握る。何か不安になっているみたい。眠い子供って温かいわね。しっかり手を握り、頬に押し当てた。にこりと笑って、レオンはまた目を閉じる。やっぱり寝ちゃうのかな。
隣に寝転び、レオンの顔を正面から見つめる。紫の瞳が見えないと、人形みたいだわ。長いまつ毛が頬に落ちて、不思議と大人びて見えた。一般的には目を閉じると幼く見えるんだけど。将来は丸い頬がしゅっとして、赤い唇は少し色が薄くなるのよね。
あら、絶世の美少年じゃないの。傾国になっちゃいそう。ふふっと笑う私に、レオンの寝息が聞こえてきた。後ろから忍び寄ったリリーが、上掛けをレオンに掛ける。
「奥様、ベッドに移動しましょうか」
「そうね……いえ、このままでいいわ」
抱き上げたら起こしてしまいそう。ぽかぽかする日差しの柔らかな午後、お腹がいっぱいだと眠気を誘われるわ。レオンと繋いだ手が、ふと気になった。
ここ最近は落ち着いていたのに、どうして不安になったのかしら。一人でお昼寝したこともあるのに、急に起きてまで手を繋ごうとするなんて。考えてみたものの、特に理由も思いつかない。
可愛い寝顔をしっかり堪能し、私も少しだけ休んだ。午後からお散歩したいと言っていたし、体力を回復しておかないとね。
「おか、しゃま! おきてぇ」
ぺちぺちと頬を叩かれ、目を開ける。驚く距離にレオンの顔があって、ぼやけて見えた。
「レオン? もう起きたのね」
「うん。おにわ、いく」
散歩に行こうと誘うレオンは、まだ手を繋いでいた。しっかり握っていたのが嬉しいようで、その手をゆらゆら左右に揺らす。起きたら、リリーにスカートを直された。結構しっかり寝てしまったようで、肩が痛いわ。
屋敷の敷地から出ないし、着替えるほどではない。彼女達にそう告げて、一緒に庭へ出た。並んで靴を履くと、また手を繋ぎたがる。快く受け入れ、庭の花を眺めながら木陰まで移動した。
疲れたようで足取りが重くなったレオンを抱き上げ、少し先の林まで行く。手前で戻る私の首にレオンが手を回した。ぎゅっと抱きつく姿は、年齢以上に幼く感じる。
変ね、赤ちゃん返りに似た行動の原因は何かしら。考えながらぽんぽんと背中を叩く。きっと漠然とした不安だろうから、聞いても原因がわからないでしょう。
「レオン、お母様はずっとレオンが好きよ。一緒にいるわ」
「……じゅっと?」
「ええ、ずっと」
不安を和らげるのが先決よね。ゆっくりした口調で言い聞かせながら、歩調も緩めた。レオンは私の髪を一房握り、小さく頷く。伝わったみたいね。
2,171
お気に入りに追加
4,242
あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

罠に嵌められたのは一体誰?
チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。
誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。
そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。
しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・

美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。
久遠りも
恋愛
美しい容姿の義妹は、私の婚約者を奪おうとしました。だったら、貴方には絶望してもらいましょう。
※一話完結です。
ゆるゆる設定です。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

皇太女の暇つぶし
Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。
「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」
*よくある婚約破棄ものです
*初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる