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47.呼び方を相談してみた
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あふっと大きな欠伸をしたレオンに気付き、帰る準備を始めた。昼食を終えて、お祭り会場は売り尽くしを始めている。商人達は在庫を持ち帰るより、多少安くしても売り切りたいのね。
安売り、バーゲン、セール……これらの言葉に弱い私だけれど、今回は我慢した。レオンをベッドで休ませてあげたいわ。
「もう帰るの?」
残念だとユリアンが唇を尖らせるので、きちんと「おしまい」を言い聞かせた。楽しいことはいつまでも続いてほしいが、終わる時も来る。理解して我慢できるのが、大人だった。まだ早い年齢だけれど、この一言は効くと思うの。
「あら、ユリアンはお兄ちゃんになったのに我慢できないのね」
「私は我慢できるわ」
双子のユリアーナが味方についた。こうなると、ユリアンは弱い。まだ心残りだらけでも、ぐっと堪えて平気なフリをした。
「来年もお祭りはあるわ。それに……収穫祭もあるでしょう?」
お楽しみは先にある。聞き分けのいいエルヴィンは、苦笑いしながら双子を馬車に押し込んだ。
「いい思い出になっただろう。ありがとう……アマーリア様」
「あっ……」
お父様は人目を気にして、敬称付きで話しかけた。すっかり忘れていたわ。フランクに相談して、呼び方を考えようと思っていたのに! ぎこちなく微笑んで、馬車に引き上げる。この時点でレオンはうとうとし始めていた。
「ん、んぅ……も、と!」
もっとお祭りを楽しむと駄々を捏ねながらも、ほとんど寝ている。ワンピースの胸元に顔を押し付け、やだと横に振った。馬車の揺れに合わせて、ぽんぽんと背中を叩く。徐々に動きが止まり、愛らしい寝息が聞こえてきた。首筋で擽ったいけれど、縦に抱っこした状態なので我慢だ。
「奥様、交代いたしましょうか」
「起きてしまうわ」
向かいに腰掛けた執事ベルントに、大丈夫と告げる。ふと気になって、彼に尋ねた。
「私は公爵夫人よね、でも実父が伯爵の場合……なんて呼んでもらうのが正しいかしら」
「そうですね。外部に対しては公爵夫人とお呼びいただくのが普通かと存じます。お屋敷の中であれば、お任せいたします」
「え? そうなの」
「ご家族の問題に、使用人は口出し致しません。ご不安でしたら、家令や侍女長にご相談ください」
意外だったわ。でも、家の中なら愛称で呼ぶ人もいると思うし。納得しながら、屋敷の門をくぐる。今回は何もなく帰宅できてよかった。
馬車が停まった途端、レオンはびくりと体を揺らした。ゆっくり私を見上げて、ほにゃんと笑み崩れる。そのまま、もう一度眠ってしまった。
「……っ、このまま運んでしまいましょう」
抱き上げて運び、ベッドに下ろそうとして……がっちり掴まれたワンピースに気づく。小さな指を擽ったり、優しく隙間から解こうとしたり。苦戦した結果、全敗で諦めた。
「奥様、このままお休みになる方がよろしいかと」
リリーの進言に頷き、私もベッドに横たわった。上質なワンピースが皺になってしまうわね。そう呟いたら、リリーはふふっと笑った。
「奥様達がお仕事を作ってくださらないと、使用人が減らされてしまいます」
だから皺を伸ばす心配はするな? 大きなお家には、貧乏貴族家にないルールがあるみたい。横になると、不思議に眠くなった。原因は、抱きしめたレオンの温もりかしら。
安売り、バーゲン、セール……これらの言葉に弱い私だけれど、今回は我慢した。レオンをベッドで休ませてあげたいわ。
「もう帰るの?」
残念だとユリアンが唇を尖らせるので、きちんと「おしまい」を言い聞かせた。楽しいことはいつまでも続いてほしいが、終わる時も来る。理解して我慢できるのが、大人だった。まだ早い年齢だけれど、この一言は効くと思うの。
「あら、ユリアンはお兄ちゃんになったのに我慢できないのね」
「私は我慢できるわ」
双子のユリアーナが味方についた。こうなると、ユリアンは弱い。まだ心残りだらけでも、ぐっと堪えて平気なフリをした。
「来年もお祭りはあるわ。それに……収穫祭もあるでしょう?」
お楽しみは先にある。聞き分けのいいエルヴィンは、苦笑いしながら双子を馬車に押し込んだ。
「いい思い出になっただろう。ありがとう……アマーリア様」
「あっ……」
お父様は人目を気にして、敬称付きで話しかけた。すっかり忘れていたわ。フランクに相談して、呼び方を考えようと思っていたのに! ぎこちなく微笑んで、馬車に引き上げる。この時点でレオンはうとうとし始めていた。
「ん、んぅ……も、と!」
もっとお祭りを楽しむと駄々を捏ねながらも、ほとんど寝ている。ワンピースの胸元に顔を押し付け、やだと横に振った。馬車の揺れに合わせて、ぽんぽんと背中を叩く。徐々に動きが止まり、愛らしい寝息が聞こえてきた。首筋で擽ったいけれど、縦に抱っこした状態なので我慢だ。
「奥様、交代いたしましょうか」
「起きてしまうわ」
向かいに腰掛けた執事ベルントに、大丈夫と告げる。ふと気になって、彼に尋ねた。
「私は公爵夫人よね、でも実父が伯爵の場合……なんて呼んでもらうのが正しいかしら」
「そうですね。外部に対しては公爵夫人とお呼びいただくのが普通かと存じます。お屋敷の中であれば、お任せいたします」
「え? そうなの」
「ご家族の問題に、使用人は口出し致しません。ご不安でしたら、家令や侍女長にご相談ください」
意外だったわ。でも、家の中なら愛称で呼ぶ人もいると思うし。納得しながら、屋敷の門をくぐる。今回は何もなく帰宅できてよかった。
馬車が停まった途端、レオンはびくりと体を揺らした。ゆっくり私を見上げて、ほにゃんと笑み崩れる。そのまま、もう一度眠ってしまった。
「……っ、このまま運んでしまいましょう」
抱き上げて運び、ベッドに下ろそうとして……がっちり掴まれたワンピースに気づく。小さな指を擽ったり、優しく隙間から解こうとしたり。苦戦した結果、全敗で諦めた。
「奥様、このままお休みになる方がよろしいかと」
リリーの進言に頷き、私もベッドに横たわった。上質なワンピースが皺になってしまうわね。そう呟いたら、リリーはふふっと笑った。
「奥様達がお仕事を作ってくださらないと、使用人が減らされてしまいます」
だから皺を伸ばす心配はするな? 大きなお家には、貧乏貴族家にないルールがあるみたい。横になると、不思議に眠くなった。原因は、抱きしめたレオンの温もりかしら。
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