【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
44 / 274

44.もう一回と強請られた

しおりを挟む
 旦那様を見送り、お父様を呼んでお勉強の時間を設けた。昨日はお祭りに行ったけれど、楽しいことをした後はちゃんと義務も果たさないとね。

「おまちゅぃ」

 もう一回行きたい。指を咥えて、ことんと首を傾げる。お強請りの作法としては正しいわ。だって、いいわよと言いたいもの。即答したいのをグッと堪えて、笑顔で返した。

「そうね。今日もお祭りやっているわ。行きたいの?」

「うん」

 呼ばれてやって来た双子が、やり取りに気づいてスカートを握る。抱っこしたレオンにこっそりエールを送った。エルヴィンは困ったように笑うが、行きたいのよね。

「そうね。これからお勉強を終えて、お昼寝までの時間なら……」

 ちらっと視線を向けると、考え込んだフランクが頷く。護衛の手配は間に合いそう。

「お祭りでお昼ご飯を食べましょう」

 あくまでも、お昼を食べるために行く。目的を示し、子供達の反応を窺った。きらきらと目を輝かせ、大きく頷いている。レオンも満面の笑みだった。

 甘いのはわかってるわ、お父様。ベルントやフランクも、そんな顔をしないで。大変なのはこれからなのよ。出かける前から疲れるが、そこは若さで吹き飛ばす!

「さあ、お勉強よ」

 エルヴィンと双子はお父様の指導を受けながら、机に向かった。勉強部屋で、今日のレオンは工作を始める。

 粘土がないかと探したら、あったのよ! 屋台で売られていた粘土は、赤い土を使ったみたい。捏ねて形を作って乾かすと説明されたので、焼き物の土かもしれないわ。

 用途は違っても、練って遊ぶだけなら関係ない。使い方だけ説明し、好きにさせた。捏ねると体温で柔らかくなることだけ伝え、レオンが作るものを待つ。ここで大人が何かを作ったら、レオンは真似しちゃうもの。

「うー」

 唸りながら粘土を割って、小さなボールを作り始めた。いくつも並べるが、そのたびに私を見る。またボールを作り、それを半円形に並べた。

「何を作ったの?」

「……あげゆ……これ」

 指さしたのは私? 違うわね。今日の装いを確認した。もしかして、半貴石の水晶で作ったネックレスかしら。ああ、この世界では首飾りというのよね。

「首飾り?」

 にこっと笑ったので、正解みたい。たくさんの小さな粒は水晶で、半月に並べたのはレオンから見える形を再現したのね。

「すごく素敵だわ。これをつけていきたいくらいよ」

 満足したのか、レオンはあっさりと作品を潰してしまった。保管しようと思ったのに……ショックよ。ぺたんと手のひらで潰し、一箇所に集めた。

「おわり」

 おしまいの合図を上手に自分で口にする。ふふっ、お祭りがよほど楽しみなのね。ユリアーナはちらちらと私達の様子を窺い、ユリアンも同じ文字ばかり練習している。身が入ってない勉強は終わりにしましょうか。

「お勉強はおしまい、出かける準備をしましょうね」

 わっと声が上がり、普段は勉強熱心なエルヴィンも即座に本を閉じた。おやおやとぼやくお父様と目を合わせ、くすくす笑って子供達を連れ出す。

 レオンを抱っこして、すぐさま着替えをさせた。家族はそのまま出かけられるようで、確信犯かしらと苦笑いする。旦那様への伝言は不要と判断し、それぞれ馬車へ乗り込んだ。
しおりを挟む
感想 636

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?

石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。 彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。 夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。 一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。 愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

国境に捨てられたら隣国の若き公爵に拾われました

宵闇 月
恋愛
ゲームの悪役令嬢に転生し、国境に捨てられたら隣国の公爵にお持ち帰りされました。

処理中です...