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39.前提から確認しますわ
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屋敷に到着し、まずシュミット伯爵家の四人を離れに帰す。心配したお父様は付き添うと言ってくれたけれど、遠慮してもらう。これは私と旦那様の夫婦間の問題だもの。
レオンも部屋に戻す。夫婦喧嘩……になるかどうか不明だけれど、両親の不仲を見せる必要はない。テキパキと采配し、頭を下げて待つフランクを手招きした。神妙な顔で近づく彼に、ぴしゃりと言い渡す。
「外へ出すよう命じたはずよ」
「旦那様がご帰宅され、屋敷内に留めるようにと申されました」
家計の権限や人事権を持つのは女主人でも、一族の当主は旦那様だ。公爵である旦那様の命令には逆らえない。ならば別の方法で追い出すだけね。
「マーサ、レオンを任せます」
お祭りで様々な食べ物を口にした。昼食はいらないけれど、お昼寝の時間だった。私以外の誰も入れないよう伝える。一礼してレオンの部屋に向かう彼女を見送り、顔色の青いイルゼにお茶を頼む。現在、居間は絨毯の部屋になっているため、食堂を指定した。
旦那様の一言で、執務室へ変更になる。見まわした限り、前公爵の姿がない。なら、きっと旦那様の執務室ね。先を歩く旦那様について、執務室へ足を踏み入れた。普段は用がないので、掃除担当の侍女か執事くらいしか入らない。
「やっときたか、無礼な小娘が!」
「あら、女一人罵るのに援軍が必要でしたのね。それで、どちら様かしら」
まだ名乗られていない前公爵が、怒鳴るように声を張り上げる。旦那様はむっとした顔ながら、まずは椅子に腰掛けることを優先した。この扱いで親子仲が想像つくわね。
「アマーリア、発言に気をつけろ」
「失礼ですが、旦那様。私はこの公爵邸の女主人です。そこはご理解いただいていますか?」
前提条件から確認する。
「だからと言って、先代に無礼を働く理由にはならん」
「先代公爵と仰いますが、私は初対面ですわ」
結婚式に、公爵家の親族はいなかった。私の父と上の弟は参加したが、ほとんど参列者もいない。その状況で見落としはないだろう。結婚前の家族同士の顔合わせも行っていない。
「突然屋敷に現れた、不審な老人を外へ出すよう命じるのは、私の役職の権限内ですわ」
驚いた顔で固まったあと、何やら騒ぐ父親を睨む。旦那様もさすがにうるさいと思ったのね。無礼だの、失礼だの。こんな女は返せ、交換だと騒いでいますが、私には正当な理由がありますのよ。
「紹介していなかったか」
「ええ、その上で名乗りもしない方です。かつて閣下と呼ばれる地位にあったとは到底思えませんわ」
ノックの音がして、お茶を運ぶイルゼが入室する。手早く全員分の紅茶を用意して壁際に控えた。さり気なく居座る気ね。
「それは……父上が悪い」
「ええ、可愛いレオンに危害を加えた経歴があり、怯える幼子を守るのに手一杯でした」
危害を加えたの部分で、旦那様は目を見開く。驚いた表情を見る限り、ご存知なかったの? なんて怠慢でしょう。
レオンも部屋に戻す。夫婦喧嘩……になるかどうか不明だけれど、両親の不仲を見せる必要はない。テキパキと采配し、頭を下げて待つフランクを手招きした。神妙な顔で近づく彼に、ぴしゃりと言い渡す。
「外へ出すよう命じたはずよ」
「旦那様がご帰宅され、屋敷内に留めるようにと申されました」
家計の権限や人事権を持つのは女主人でも、一族の当主は旦那様だ。公爵である旦那様の命令には逆らえない。ならば別の方法で追い出すだけね。
「マーサ、レオンを任せます」
お祭りで様々な食べ物を口にした。昼食はいらないけれど、お昼寝の時間だった。私以外の誰も入れないよう伝える。一礼してレオンの部屋に向かう彼女を見送り、顔色の青いイルゼにお茶を頼む。現在、居間は絨毯の部屋になっているため、食堂を指定した。
旦那様の一言で、執務室へ変更になる。見まわした限り、前公爵の姿がない。なら、きっと旦那様の執務室ね。先を歩く旦那様について、執務室へ足を踏み入れた。普段は用がないので、掃除担当の侍女か執事くらいしか入らない。
「やっときたか、無礼な小娘が!」
「あら、女一人罵るのに援軍が必要でしたのね。それで、どちら様かしら」
まだ名乗られていない前公爵が、怒鳴るように声を張り上げる。旦那様はむっとした顔ながら、まずは椅子に腰掛けることを優先した。この扱いで親子仲が想像つくわね。
「アマーリア、発言に気をつけろ」
「失礼ですが、旦那様。私はこの公爵邸の女主人です。そこはご理解いただいていますか?」
前提条件から確認する。
「だからと言って、先代に無礼を働く理由にはならん」
「先代公爵と仰いますが、私は初対面ですわ」
結婚式に、公爵家の親族はいなかった。私の父と上の弟は参加したが、ほとんど参列者もいない。その状況で見落としはないだろう。結婚前の家族同士の顔合わせも行っていない。
「突然屋敷に現れた、不審な老人を外へ出すよう命じるのは、私の役職の権限内ですわ」
驚いた顔で固まったあと、何やら騒ぐ父親を睨む。旦那様もさすがにうるさいと思ったのね。無礼だの、失礼だの。こんな女は返せ、交換だと騒いでいますが、私には正当な理由がありますのよ。
「紹介していなかったか」
「ええ、その上で名乗りもしない方です。かつて閣下と呼ばれる地位にあったとは到底思えませんわ」
ノックの音がして、お茶を運ぶイルゼが入室する。手早く全員分の紅茶を用意して壁際に控えた。さり気なく居座る気ね。
「それは……父上が悪い」
「ええ、可愛いレオンに危害を加えた経歴があり、怯える幼子を守るのに手一杯でした」
危害を加えたの部分で、旦那様は目を見開く。驚いた表情を見る限り、ご存知なかったの? なんて怠慢でしょう。
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